Adobeが教える!「売れる写真」を作る8つのポイント

Adobeが教える! 「売れる写真」を作る8つのポイント

吉本龍生さん

吉本龍生(よしもと・りゅうせい)

Adobe Stock コンテンツ開拓マネージャー

Adobe Stock(アドビストック)」は、アドビが提供するストックフォトサービス。1億点以上の写真、イラスト、動画など高品質な素材を扱っています。世界中の写真家と接点があり、プロ、アマ問わず誰もが作品を投稿して販売できます(ビギナー向け解説記事はこちら)。

でも正直、投稿した写真がすぐに売れてホクホク……とはいかないようです。求められているのはワールドワイドのマーケットで「売れる写真」。では、どんな写真が売れるのでしょうか?

今回は、Adobe Stockのコンテンツ開拓マネージャー・吉本龍生さんに、「売れる写真の条件」をレクチャーしてもらいました。売れるためにクリアすべきポイントが明解です!

売れる写真に備わっている
「特徴」とは?

皆さん、こんにちは。私はアドビシステムズ株式会社でAdobe Stockのマーケティングを担当しています。皆さんの写真をストックフォトで販売してもらうための基本的な情報をお届けします。

ストックフォトで販売する以上は、デザイナーやクリエイターなどに必要とされる写真であることが重要。ストックフォトで「売る」ことを念頭にした作品づくりが求められます。ただ、それほど難しいことではありません。ちょっとしたコツといいますか、ポイントを理解して作品づくりをしてもらえたら、売れる写真のヒットメーカーになれる可能性が大きく広がると思います。

写真を投稿するときにぜひチェックしてほしいポイントは、次の4つです。売れる作品にほぼ共通している特徴といってもいいでしょう。

  • コントラストは強め
  • コピースペースがある気の利いた構図
  • 最小限の色数ですっきり
  • 光の演出(エフェクト)が効いている

では、順番に解説していきましょう。

コントラストは強め

コントラストは強め

まずはコントラストです。明暗の差が大きく、くっきり色鮮やかな写真は多くの人の目を引きます。とくに海外ではコントラストが強めの写真が好まれる傾向があります。国内ではコントラストが弱めの写真の需要があるので、一概には言えません。


ただ、日本でもウェブコンテンツや広告などの用途としては、コントラストが強いものが好まれています。売りたいエリアや媒体の特徴をはっきりと打ち出した作品づくりを心掛けましょう。

コピースペースがある気の利いた構図

コピースペースがある気の利いた構図

普通に写真を撮っていると、まず意識しないのがこのポイント。広告のキャッチコピーやウェブコンテンツのタイトルなど、写真に文字を入れやすい構図を考えてみましょう。特に印刷物などでは、写真に文字を重ねてデザインすることが多いので、メインの被写体が画面の中心から少しズレて配置された写真が好まれます。


写真に空白ができる構図でもあるので、ちょっと勇気がいるかもしれませんね。画面の3分の2 (2/3) 程度のスペースを取るように、カメラを大胆に振ってみましょう。

最小限の色数ですっきり

最小限の色数ですっきり

次に、色彩の整理です。1枚の写真のなかでキーカラーを3色程度に抑えるようにしてみましょう。全体的にすっきりして清潔感のある絵柄になるはずです。複数の色が無秩序に入っている写真は、パッと見の印象がうるさくなります。


「差し色」として効果的であれば、多くの色があってもすてきに仕上がりますが、少ない色数でシンプルな写真にはビジュアル的なインパクトがあります。

光の演出(エフェクト)が効いている

光の演出(エフェクト)が効いている

最後に、ちょっとした光の演出効果、エフェクトです。撮りっぱなしではなく、少しだけ手を加えてみてください。Adobe LightroomやAdobe Photoshopなどの画像編集アプリケーションなどを使って、画面の傾きを修正(水平にする)、センサーダストの除去や肌の質感の調整をします。


また、「逆光」を使った光の演出を加えることで、ドラマチックな写真になります。これはここ数年よく使われるテクニックです。ただ、やりすぎには注意してください。

売れる作品づくりの
ノウハウとは?

売れる作品づくりのノウハウとは?

次に、売れる作品づくりのノウハウを紹介します。まず基本的に、ご自身の得意分野を強みとして生かしましょう。キーワード検索をしていただき、検索結果に自分の撮れる写真よりもいいものがない場合は、チャンスととらえてください。

さらにマーケットを知ることが、売れる作品を作る何よりの近道です。どのような媒体で、どのような写真が、どのような目的で求められているのか。ここに照準を合わせた作品づくりが重要です。具体的な作品づくりのポイントは次の4つです。

  • 写真の方向性(タイプ)を決める
  • 写真が使われるターゲットを定める
  • 投稿タイミングを見極める
  • 最後は自分らしさ(結論)

写真の方向性(タイプ)を決める

写真の方向性(タイプ)を決める

まずは作品の方向性です。それほど難しいことではなく、どのような用途に向けて作品を作りたいのか、自分で決めるのです。
ここでは大きく「イメージ系」と「情報系」という2つのタイプに分類して考えます。抽象的な話になってしまいそうなので、ここで2枚のひまわりの写真をご覧ください。


左はイメージ系の写真の例です。こちらの写真には、あるコンセプトが設定されています。ひまわりから想起される「夏」というイメージです。ひまわりそのものではありません。


右は情報系の写真の例です。こちらの写真のテーマは「ひまわり自体」であり、ひまわりから想起される「夏」のイメージではありません。ひまわりそのものを情報としてきちんと伝える写真です。


イメージ系の写真が得意であれば、広告の世界が向いているでしょう。
情報系の写真が得意なのであれば、出版物に使われることを念頭において制作するのがいいでしょう。

写真が使われるターゲットを定める

写真が使われるターゲットを定める

どのようなタイプの作品を撮りたいかを決めたら、さらに具体的にイメージを絞り込みましょう。


広告向けの写真であれば、不動産や金融業界の広告に大きな需要があります。常日頃から雑誌広告やチラシ、電車の中吊り、ウェブのバナーなど、さまざまな「広告物」をしっかり観察して、どのようなイメージが求められているのかつかみましょう。


有名タレントを起用した広告であっても、背景などにストックフォトが使われていることがあります。「この広告はどんな素材で作られているのだろう?」と考えるように習慣づけてください。広告写真を因数分解するような感覚で分析するのです。そうすれば素材としての写真はどうあるべきかが見えてきます。

投稿タイミングを見極める

投稿タイミングを見極める

優れた素材であれば、いつでも売れるとは限りません。売れる写真を考える場合、投稿のタイミングは重要です。


季節的な需要がある写真は、そのシーズンが始まる約3カ月前からお客さまのリサーチが始まります。そのタイミングに合わせて、季節先取りで作品を投稿していくとよいでしょう。


自信作がすぐに売れないからといって、ガッカリしないでください。じつはこのタイミングの問題かもしれないのです。売るタイミングを逃さないよう、撮影計画を立てて作品づくりに取り組んでください。

最後は自分らしさ(結論)

最後は自分らしさ(結論)

ここまでつらつらとお話ししてきましたが、売れる売れないを決定づけるのは、最終的には「個性」です。売れ筋を意識しすぎて、せっかくの個性を台無しにしないようにしてください。


自分が一番好きなもの、興味があるもの、得意なものを被写体に選んで、写真の力でその魅力を引き出してあげてください。まずはお客さまに「いいな!」と感じてもらえる写真を撮ること。それが「勝てる写真」の第一歩であり、最大のポイントでもあるのです。

審査をパスして
採用される基準とは?

投稿された作品は、経験豊富なアドビのスタッフによる公正な審査により、採用の可否が判断されます。ここで間違えないでほしいのが、作品の優劣や出来不出来を評価するわけではないこと。フォトコンテストの審査ではないのです。あくまでストックフォトとしての基準を満たすかどうか。その一点のみを審査しています。


審査は次の8つの項目から判断しています。

  • ・技術的な問題
  • ・ピンぼけの画像
  • ・アーチファクトの問題
  • ・露出の問題
  • ・すでに提供済みの画像との類似
  • ・美しさまたは商業的なアピール
  • ・スペックに準拠していない画像
  • ・知的財産に関連する不採用

上の4つについては写真テクニックの基本的な内容です。たとえば、写真にセンサーダストなどのゴミが付着していると商品として販売できません。

審査でNGとなるポイントで多いのは、「美しさまたは商業的なアピール」「権利関連」「類似」です。あまり馴染みがない項目だと思いますが、ストックフォトで売れる写真を作るためには、これらをクリアする必要があります。

美しさ&商業的アピール

美しさ&商業的アピール

「美しさ」というのは抽象的な概念ではありますが、ブレや歪み、ノイズがあるものなど作品の価値を損ねる要素は排除しておく必要があります。「商業的アピール」とは、Adobe Stockにすでにたくさんあるものや、どう使用していいのかわからないもの、ライティングがいまひとつなものも、NGとなりやすいのでご注意ください。

類似

類似

圧倒的に多い不採用理由として「類似」があります。過去に出した画像と類似しているものだけではなく、似たような写真を大量に投稿しても基本的に受け付けられません。


作品のバリエーションとして、メインの写真のほか「寄り」と「引き」の計3枚程度の投稿でかまいません。あまりに似たものが多いと、お客さまが迷ってしまい選べないだけではなく、結局買われません。

権利のクリア

権利のクリア

さらに、権利問題です。こちらの写真を例にとってお話ししましょう。
この写真を審査する際にチェックしているのは、この3つのポイントです。


権利問題の3つのチェックポイント

①モデルの肖像権は問題ない?

人物が特定できる写真の場合、リリースペーパー(肖像権使用許諾書)がありますか? 許諾書がない写真はNGです(個人が特定できない場合は不要なケースもあります)。


②小物&衣装などの権利は問題ない?

ブランドやメーカーが判別できるロゴや商標が見えていませんか? キャラクター商品を小物として使っていませんか? 他者の権利を侵害する恐れがあるため、事前の許諾が必要となります。


③撮影場所の許諾は問題ない?

撮影可能な場所で撮ったものですか? 私有地や商業施設等の場合は、必ず管理者から許諾を得る必要があります。

売れる写真づくりのコツ、つかんでいただけましたか? 写真の腕前に自信のある皆さんなら、ストックフォト特有の約束事さえ守っていただければ、たくさんの作品を売るチャンスがあると思います。Adobe Stockで皆さんの作品に出会えることを楽しみにしています。