質問して上達!RAW現像入門 vol.05 ~思いどおりに作品を仕上げよう~

講師紹介

「作品をイメージどおりに仕上げるには、どうすればいいの?」RAWデータの現像と画像調整についての質問・疑問・お悩みを実例で解決! キヤノンのRAW現像ソフト「Digital Photo Professional(DPP)を使い、実際に作品を仕上げるプロセスを公開しながらお答えしていきます。

赤ちゃんのピンクの“肌色”を表現するには?

“肌の柔らかさ”が表現される光の角度を見極めよう!

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友人がやっと授かった赤ちゃんを撮影させてもらいました。生後8カ月、ちょっと人見知りのハルト君は、大きなカメラを向けても泣かない強い男の子でした。冬空の優しい光が射し込む部屋で撮影。まだ柔らかい髪が、逆光でふんわり。ママには笑顔を見せてくれるけど、カメラを向けると表情が固まってしまいます。1時間半ほどして、やっと慣れてくれました。
赤ちゃんの目にストロボを当てるのは危険です。少々光が不足していましたが、定常光(レフ板やストロボを使用しない通常の光)のみで撮影しました。

赤ちゃんは予想のつかない動きをします。ブレないようにISO感度はやや高めの設定(ISO1600)を選択しました。しかし、高感度を活用して雰囲気重視で明るめに撮影してしまうと、赤ちゃんの肌の質感がザラついたり、明るいのはいいのですが肌の質感が損なわれてしまうことがあります。肌の質感をねらいどおりに表現するため、露出設定にはとくに気を配りました。
また、今回は全体的に「白色」の部分が多いので、ヒストグラムのデータ量が極端に少なくなってしまいます。コントラストがついてハイライトが飛んでしまわないように、ピクチャースタイルは「忠実設定」にしました。忠実設定は、被写体の持つ色そのものを忠実に再現するためのピクチャースタイルです。赤ちゃんの撮影は、赤ちゃんのご機嫌と体力に合わせることが大切です。カメラポジションは赤ちゃんの目線の低さまで下がって、寝転がりながら撮影してみましょう。無理のない自然な雰囲気で撮影できます。

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EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L USM・1/125・F3.5・ISO1600・ホワイトバランス「オート」・ピクチャースタイル「忠実設定」

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plan ディテールを再現するため、やや露出アンダーで撮ったので、明るさを調節してイメージ
アップします。
plan 全体に「色かぶり」をなくし、健康そうな赤ちゃんのピンクの肌色と、 服の白さを整えます。
plan 肌の質感と、目の周辺のエッジを立たせて、クッキリとした表情を引き立てたいです。

画像調整 3つのステップで“理想の作品”に仕上げていこう。

step01 全体のイメージを明るくしたい
〈オートライティングオプティマイザ〉と〈明るさ調整〉で、
全体を爽やかに。

赤ちゃんの柔らかい髪の毛を表現するためにやや逆光で撮り、全体的に露出オーバー(明るすぎる)にならないようにアンダー気味に撮影しました。そこで、〈オートライティングオプティマイザ〉を「標準」にします。〈オートライティングオプティマイザ〉は明るさやコントラストを自然な印象に補正してくれる機能です。さらに〈明るさ調整〉のスライダーを+0.33 にして、全体の雰囲気をまとめていきます。

調整なし〈オートライティングオプティマイザ〉〈明るさ〉+0.33イメージ
step02 全体の色かぶりを抑えて雰囲気をまとめたい
〈ピクチャースタイル〉を切り替え全体のイメージを調整。

室内の撮影だったせいか、肌が黄色っぽくなってしまっています。そこで、白い服の部分で〈ホワイトバランス〉を合わせます。スポイトツールを使い、編集前後の2分割画面を活用して見比べながら調整します(スポイトツールを使った調整については、本企画の第4回を参照してください)。
〈ピクチャースタイル〉は「忠実設定」で撮影しましたが、「ポートレート」に変更することで、健康的なピンクの肌色を再現することができました。

〈ピクチャースタイル〉忠実設定 〈ピクチャースタイル〉ポートレート
step03 つぶらな瞳をクッキリさせて表情の豊かさを表現したい
〈アンシャープマスク〉で肌の質感を強調する。

撮影時は肌を柔らかく表現するために、被写界深度を浅くして、絞り値 F3.5で撮影しました。こちらを見つめる目のエッジを効かせて表情を豊かにするため、シャープネスを上げます。柔軟なシャープネス調整が可能な〈アンシャープマスク〉を活用しましょう。強調しすぎると肌がザラつきますので注意しましょう。「細かさ」5、「しきい値(エッジのぼかし or 強調)」3、「強さ」6に設定して調整完了です。

〈アンシャープマスク〉 調整前 〈アンシャープマスク〉 調整後

完成

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赤ちゃんの肌は、きめが細かく柔らかです。明るいピンクの肌に仕上げるにはRAWモードで撮影すると思いどおりに仕上がります。

質問を送ってステップアップ! RAW現像質問箱

「RAW現像質問箱」は、皆さまからお寄せいただいた質問に、写真家・出水惠利子先生がプロの視点からお答えするQ&Aコーナーです。

「Digital Photo Professional(DPP3)」と「DPP4」の仕上がりには違いがあるのでしょうか?

Q

「DPP3」と「DPP4」は、基本設計が異なるソフトウェアですので、モニタに表示された状態は完全に同じではありません。モニタに表示される画像が微妙にでも異なれば、画像調整プランもそれに応じて変化します。
RAW画像調整を前提にするのであれば、より細かい調整が可能になり、リアルタイムでヒストグラムの変化を確認することができる「DPP4」が有益です。ただ、「DPP3」と「DPP4」には互換性がありません。まったく別のソフトとして活用してください。
機能の違いはさまざまですが、一例を挙げるとすれば「DPP4」では、JPEG画像に対しても「オートライティングオプティマイザ」を活用することができます。
「DPP4」についてはこちら(ソフトウェア Digital Photo Professional 4)

ピクチャースタイル「ニュートラル」と「忠実設定」の違いがわかりません。

Q

適度なコントラストやシャープネスをかけた表現を求めるのがピクチャースタイル「スタンダード」です。「忠実」は被写体の色を重視するときに活用します。コントラストは低くシャープネスはかかっていません。爽やかなハイキーな写真や人肌など、色や雰囲気を重視したいときに活用されるといいでしょう。
また、「ニュートラル」はさらに色味が薄くコントラストが低いのが特徴です。シャープネスもかかっていません。そのため画像調整によって「画づくり」していくことを前提に活用します。
一般的には「ニュートラル」を活用されるのは、きちんとキャリブレーションされたモニタで調整を行う場合に限ると言ってもいいでしょう。
「ピクチャースタイル」についてはこちら(Picture Style)

RAW画像を「DPP」で調整して上書き保存した場合、元のデータは失われてしまうのでしょうか?

Q

RAW画像を「DPP」で調整しているとき、「上書き保存」をすると調整画像に「レシピ」が付加されて保存されます(Mac OSの場合は「保存」)。元画像が劣化したり、失われてしまったりすることはありません。
また、調整の上部にある「リターン」を示す曲がった矢印のアイコンをクリックすることで、いつでも調整前の画像に戻ることができます。
いったん調整した画像と元画像を比較したい場合は、「別名保存」することをお薦めします。
余談ですが、RAWファイルの調整を行うと、サムネイルに「*(アスタリスク)」マークが付きます。これはファイルが「未保存」であることを意味します。
「保存」についてはこちら(DPP3で編集した画像を保存する方法)

「DPP」では花火の写真、ホタルの写真、星景写真など、被写体の輝度が高い場合、RAW画面ではすっきりしていても、JPEGに変換するとコントラスト、解像度とも劣化してしまうようです。どうすればいいでしょうか?

Q

よくあるお悩みですね。JPEGで撮影すると、カメラが持つアルゴリズムによって画づくりされます。その画像はコントラストが高く、すぐにプリントしやすいのが利点ですが、単色、ハイライト、シャドーは簡略化されやすいです。
そのため、輝度差が多い被写体を写すときは、画像が簡略化されにくく、しかも調整しやすいRAWを活用することとなります。
このことを踏まえると、RAW現像後に変換するファイル形式は、画像の圧縮率が低い「TIFF」での保存が適切です。TIFFはデータが重いと言って嫌う方が多いですが、これぞと思う作品はTIFFで保存しましょう。

明るさ、コントラスト、色温度変更などを試みますが、最終的には「あまりにデータが乱れてしまったので、元に戻す」という結果になってしまいます。

Q

ほとんどの方が、調整ツールを「活用しなくてはいけない」と思っておられるのでしょう。きちんと撮影していれば、「画像をいじる必要なし」です。「ピクチャースタイル」を設定していることで調整は済んでいるのです。
ただし、高感度、長秒時間露光、逆光、ワイドレンズを活用している場合は調整タグの「NR/ALO」でノイズ処理、「Lens」でレンズ収差補正をしてから調整に入るといいでしょう。
まずは画像調整前に、何も調整しないでストレートプリントをしてください。調整が必要なのは、極端に単色やハイライトやシャドーが多い画像です。

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講師 出水 恵理子 先生

1971年、東京都生まれ。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。
広告を中心にフリーランスで活動中。海やテトラポッドの作品をライフワークとしている。EOS学園講師としても活躍中。