質問して上達!RAW現像入門 vol.03 ~思いどおりに作品を仕上げよう~

講師紹介

「作品をイメージどおりに仕上げるには、どうすればいいの?」RAWデータの現像と画像調整についての質問・疑問・お悩みを実例で解決! キヤノンのRAW現像ソフト「Digital Photo Professional(DPP)を使い、実際に作品を仕上げるプロセスを公開しながらお答えしていきます。

夕暮れの富士山と雲の表情の重厚感を再現するには?

刻々と変化する夕空だからこそ“適正露出”を心がけて撮ろう。

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海辺から厚い雲に覆われていた冬空の風景。夕焼けに染まり悠然と浮かび上がる富士山。雪が舞い散りそうな真冬日や薄曇りの日の撮影では、シャッターを押してみると思ったとおりの色が出ず、コントラストの低い画像になってしまうことがあります。また、それを回避しようとして、画像調整で「コントラスト」を極端に付けてしまうと、せっかく美しく薄いピンクに染まった空や富士山の印象が変わってしまいます。

撮影時の注意点としては、明るく撮りすぎてしまうと色が出にくいです。逆に、暗く撮りすぎてしまうと暗部がつぶれてしまったり、厚い雲のハーフシャドー(濃いグレー)の部分にノイズが出てしまいます。黒がつぶれないギリギリのちょっと明るめの露光量で撮影しておくのがポイントです。
人がイメージして記憶した色のことを「記憶色」といいます。思い出に残る情景や色は、鮮やかになりすぎてしまう傾向があります。画像調整をするときには注意が必要です。
現場で見た目に近い画像に仕上げるには、撮影時にモニターの画像をよく確認しておくことが重要です。カメラ背面の液晶モニターは、完全に色を再現できるわけではありませんが、画像調整の指針にはなるでしょう。
最終画像を仕上げたとき極端な調整にしないためにも、画像調整をするときの見本として、露光量を抑え気味にした「RAW調整用の写真」と、見た目のイメージに近い写真の両方を撮っておくといいですよ。

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EOS 70D・EF24-70mm F4L IS USM・1/40・F8.0・ISO200・ホワイトバランス「オート」・ピクチャースタイル「スタンダード」

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plan 鉛のように重たそうな雲に覆われた真冬の空。そんなイメージの写真にしたいのですが、無調整だと「ぬるく」見えます。
plan コントラストが低いため富士山がぼやけて見えます。ぐっと引き締めながらトーンを調整します。
plan オレンジになってしまいました。肉眼で見た本来の薄いピンク色
になるように調整していきます。

画像調整 3つのステップで“理想の作品”に仕上げていこう。

step01 冬空らしい厚く重そうな雲の表情を出したい
〈明るさ調整〉で全体のトーンをイメージに近づける。

沈んだ太陽が空を染めあげ、富士山を浮かび上がらせています。光が拡散しているときの露光量の調整はとても難しいですね。段階露光(露出補正で適正の前後含む3枚を撮りましょう)でハイライトが飛んでいない画像で調整しましょう。シャドー部が潰れ過ぎないように少し明るめに撮った画像を選び、〈明るさ調整〉で全体の重たい雰囲気が出るように調整します。富士山、雲のディテールを濃くしていく調整です。

〈明るさ調整〉+0.17 〈明るさ調整〉 ?0.17
step02 富士山の表情を引き締め、存在感を出したい
〈コントラスト〉〈ハイライト〉〈シャドー〉を調整

撮影時に極端なコントラストで撮ってしまうと、ハーフシャドー部(グレーの部分)にノイズが出てしまったり、太陽光で微妙に染まった色味が、違う色になってしまったりします。RAW調整を前提とした全体にぼやけた「ぬるい」トーンですが、DPPを操作してを引き締めていきます。調整前の画像(左)との違いは微妙ですが、シャドー部が引き締まり、クッキリした印象に変化していることを確認してみてください。

〈コントラスト〉0〈ハイライト〉0〈シャドー〉0 〈コントラスト〉+1〈ハイライト〉-1〈シャドー〉-1
step03 夕日に染まる空を見たままの淡いピンク色に仕上げたい
〈色あい〉を左(?側)に動かしてマゼンタを強める

次に全体の色を合わせ、本来の薄いピンク色の空に仕上げていきます。調整するのはDPPの〈色あい〉です。〈色あい〉を左にスライドさせることで「マゼンタ」の色が強まります(右にスライドさせるとグリーンが強まります)。左右にスライドさせて効果を見てみてください。ピンク色の再現は、極端に鮮やかな色にしすぎないように注意しましょう。今回はマゼンタが強くなりすぎないように〈色あい〉?2で決定しました。

<色あい> +4 <色あい> -4 イメージ

完成

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心に刻み込まれた「心象風景」を再現しようとして、見た目以上に色やトーンを誇張させすぎてしまうことがありますが、見たときの感動を再現するために、撮影段階で追い込んでおくことがとても重要です。淡い色味はJPEGなどでは再現が難しいものですが、RAWデータを調整することで思いどおりに仕上げることができます。

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「RAW現像質問箱」は、皆さまからお寄せいただいた質問に、写真家・出水惠利子先生がプロの視点からお答えするQ&Aコーナーです。「RAW現像」についての疑問・お悩みなど、どんどん送ってくださいね!

毎回困っているのは、RAWからJPEGにしたとき、画質がすごく悪くなることです。いくら調整しても直りません。

Q

さぞかしお困りのご様子ですね。残念ながら状況がよくわかりませんが、カメラやモニターの基本的な設定は合っているでしょうか? よく話に聞くのは、モニターの色が合っていないのに、画像をいじってしまって、画像データを劣化させてしまったあとでJPEGに変換しているケースです。
まずは、DPPからプラグインソフト「Easy-PhotoPrint」(EPP)などで、撮ったまま「ストレートプリント」をしてください。その画像で正しいということでしたら、そのまま「一括変換」ボタンでサイズ変更はせず、350dpiでTIFFもしくはJPEGに変換してみてください。そのうえで画像が劣化する原因がどこにあるのか確認してみましょう。
「Easy-PhotoPrint 」については、こちらをご参照ください

空の青さがなかなかうまく出ません。ピクチャースタイル(風景)・ホワイトバランス調整(太陽光)・コントラスト調整などするのですが、青空を撮るとどうしても白っぽくなることが多いのですが?

Q

撮影段階での露出が重要ですね。詳しい状況がわからないので断定はできませんが、時間帯と太陽の位置がどこかによって、答えが変わってきます。まず、順光(太陽を背にして)撮影している場合、基本的には「色」が出ます。ただし「立体感」は出ません。また、撮影被写体に比べて空が1段以上明るい場合、白っぽくなりやすいです。
撮影時にこうした現象を回避するさまざまな方法があります。そのひとつが「ハーフNDフィルター」「グラデーションNDフィルター」をレンズに装着して露光量の差を近づけて撮影する方法です。また、「PLフィルター」は順光のときに活用するといいでしょう。フィルターについては、各フィルター専門の説明書をご覧ください。
また、撮影時には「ヒストグラム」を確認しましょう。データが右側に付きすぎているなら露出オーバーです。
RAWでDPP処理が前提の場合は、いいと思ったデータよりややアンダー(暗い)な写真を撮っておきましょう。段階露光で露出を模索するのもいいでしょう。
「ヒストグラム」については、こちらをご参照ください。

「JPEGで撮影する場合はホワイトバランスの設定が重要だが、RAWで撮影する場合はDPPでRAW現像時に色温度を変えられるので関係ない」と教えられましたが、そのとおりでしょうか?

Q

ホワイトバランスが変更できるのはRAWモードで撮るメリットのひとつですが、オートホワイトバランスで撮った画像をDPPで調整する場合と、撮影時に設定した任意のホワイトバランスに設定した場合とでは、若干の差が出ます。また、写真を撮っている時間よりパソコンの前で処理する時間が多いのであれば、そもそも撮影時の設定が間違っていたということなのかもしれません。写真を存分に楽しむためにも、撮影に集中してお撮りになるとよいですね。

RAWで何も加工補正等を行わずJPEGに現像したものと、同じシーンで最初からJPEGで撮影したものとでは、画質その他はまったく同じなのでしょうか?

Q

同じではありません。JPEGはカメラ機種の特有の色作りで完成されます。例えば、EOS KissシリーズでのJPEGとEOS-1D XのJPEGの絵柄が違うように「色の再現性」が異なります。撮影時の「ピクチャースタイル」の設定にもよりますが、JPEGは圧縮率が高く、微妙な階調で表現されている同じような色味は、同一色とみなされやすいので、せっかくの微妙な階調が切り捨てられる可能性が高くなります。階調が簡略化されたぶん、JPEGの方が鮮やかできれいに見えることがありますが、RAWはJPEGに比べて階調表現が豊かだということは覚えておいてくださいね。

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講師 出水 恵理子 先生

1971年、東京都生まれ。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。
広告を中心にフリーランスで活動中。海やテトラポッドの作品をライフワークとしている。EOS学園講師としても活躍中。