T.M
キヤノンイメージゲートウェイ編集部
野鳥と野鳥が暮らす自然環境をテーマに全国を飛び回る写真家・戸塚学さん。EOS 90Dによる撮り下ろし作品と撮影テクニックをうかがいました。
トウネン(石川県羽咋市)
EOS 90D・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F8 ・1/640秒・ISO500
トウネンの群れが進む浜に寝転び、こちらに来るのを待ちました。ねらいは、波を照らす瞬間の夕陽とトウネンをからませること。
シギの中でも小さなトウネンは採餌しながら小走りに動くので、ゾーンAFだとピントを外す可能性があります。測距点を1点にしてトウネンから外さないように集中しながら高速連写しました。
EOS 90Dは秒間10コマ撮れるので「コマ落ち」のストレスなく撮影できます。バリアングルモニターは無理な姿勢をせずにローアングルで撮影ができますが、動きが激しい被写体には向きません。とくに超望遠では不可能。
しかし、野鳥が岩の上で休息している場面など動きがなければ、まずワイド側で被写体をフレームに入れてから、ズーミングして構図を決めるといいでしょう。
エリグロアジサシ(沖縄県宮古市)
EOS 90D・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F8・1/2000秒・ISO400
暗いバックに純白のエリグロアジサシの飛翔シーンを写し止めるにはどうしたらいいか? 露出オートでは不可能なので、マニュアルにしました。
できれば翼の形が美しい姿を撮りたいので、シャッタースピード優先AEを選び、動きを止められる1/2000秒に設定。あとはここを通過する個体を待つだけです。
測距点は1点ではとらえにくいので、被写体を面でとらえるゾーンAFに設定することで、向かってきたエリグロアジサシを難なく撮影できました。あとはフレームから外さないように連写です。
「EOS iTR AF」は被写体の色と形を覚えてピントを合わせてくれます。こういうシーンでは助かりました。
リュウキュウアカショウビン(沖縄県宮古市)
EOS 90D・EF400mm F2.8L IS III USM・EXTENDER EF2×III・F5.6・1/320秒・+2補正・ ISO12800
水場で水浴びに集まる鳥たちを待っていると、1羽のリュウキュウアカショウビンがやってきました。明るく見えるかもしれませんが、夕方の森はかなり暗い。空の明るさを拾ってしまうと、オート撮影では真っ黒になってしまう場面です。
そこで露出補正を+2にすると、美しい緋色の体と燃えるような赤いくちばしを再現できました。
カワセミの仲間は落ち着くと動かないことが多いので、まずは400mmで撮影したあと、1.4倍の EXTENDER EF1.4×III を付けて撮影。その後、2倍の EXTENDER EF2×III にアップにして撮影。
このとき測距点をスポット1点AFにしたことで、しっかりと目にピントを合わせることができました。
リュウキュウアオバズク(沖縄宮古市)
EOS 90D・EF400mm F2.8L IS III USM・F2.8・1/160秒・ISO12800
夜の鳥、フクロウの仲間を撮影するには、以前はライトとストロボが必要でした。現在はLEDライトの光だけでも撮影ができますが、暗い場合AFでのピント合わせは困難。直接にライトを当てるしか方法がありませんでした。
しかし EOS 90D は、AF測距の低輝度限界が-5EVを達成し、暗所でもピント合わせが可能。リュウキュウアオバズクに直接ではなく、近くの木の枝にライトを当てた反射光でピントを合わせることができました。今後は、より生き物にプレッシャーをかけない撮影が可能になるでしょう。
EF400mm F2.8L IS III USM という最新の明るいレンズを使用し、ISO12800にすることで、1/160秒でも手持ち撮影ができました。
「EOS 90Dのこと、プロフェッショナルに聞きたい!」。そんな皆さんからの「質問」に写真家が回答するコーナーです。最初の質問、どうぞ!
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戸塚学先生
野鳥撮影の定番、望遠ズーム
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM は
いかがですか?
戸塚先生の回答:
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM と EXTENDER EF1.4×III のセットをおすすめします。
野鳥に近づくのは難しいので、望遠側が400mmあるとAPS-Cサイズではフルサイズに比べて焦点距離が1.6倍になるため、より大きく撮影できます。
また、EXTENDER EF1.4×III を装着しても、中央1点のみAFが使えるので、「ここ一番」で使うことができますよ。
ヌマガラスさん
EOS 90D のAFの動体捕捉性能は、EOS 7D Mark IIと比較するといかがですか?
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戸塚学先生
違いはありますが、ゾーンAFの追従は良好です。
戸塚先生の回答:
私の場合、EOS 7D Mark IIの1点AFは使わず、領域拡大AFの任意選択上下左右に慣れていたので、ちょっと戸惑いましたね。
ただ、EOS 90D のゾーンAFやラージゾーンAFでの追従はいいように感じます。
AFの特性をこまめに変更することで、より使いやすくなりますが、一般の方にはチューニングが難しいかもしれません。
ザカさん
飛んでいる鳥を撮影するとき、AFのフレームは何を選択していますか? オールにしているとピンボケが多いので、1点で撮ることが多いのですが……?
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戸塚学先生
ゾーンAF、ラージゾーンAFを使い分けましょう。
戸塚先生の回答:
飛翔する鳥の場合、基本はゾーンAFかラージゾーンAFです。その理由は、1点AFで飛翔する野鳥をとらえてファインダー内で追い続けるのは難しいため。
ゾーンAFは1羽で動きが読みやすい猛禽類など、大きめな被写体がいいでしょう。ラージゾーンAFはランダムな動きをする場合や、群れでの飛翔をねらうのに適しています。
野鳥撮影は観察が第一。珍しい鳥がいると情報を聞いて出かけても、その鳥がどのような姿をしているのかも知らずに撮影しようというのは本末転倒です。
できれば自分がよく通う場所で、身近な鳥をじっくり観察、撮影してみてください。その積み重ねにより、初めて出かけた場所でもまわりの人とは違う写真が撮れるようになるはずです。
動きがあるものを撮るには、正確で速いAFが必要です。やみくもにシャッターを押しても思い通りに撮れないこともあるでしょう。そんなときは、鳥の動きを見てカメラの設定を変更すると撮れることがあります。
諦める前に、カメラの機能をフルに使いこなしましょう!