
講師:種清豊(写真家・EOS学園講師) プロフィール
すぐに楽しく遊べる、とっておきの撮影ネタを紹介する「タネキヨのヨキネタ」。最終回の遊びテーマは、ゆらゆらと揺らいでいる不思議イメージから広がる写真遊びです。雲が浮かぶ空にナゾのゆらゆらが発生……これっていったい何!? その正体は、このあと解説!
1982年、大阪府生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経て独立。主に日本各地に残る明治、大正、昭和初期のクラシックな素材を求めて撮影中。また、人物撮影や、デジタルカメラ専門誌、カメラ専門誌での執筆活動も行っている。
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もとは空を反映する無風状態の池に出ていた波紋の写真です。
本来はあり得ない場所に「ゆらぎ」をつくる意外性が決め手
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なめらかにゆらぐ曲線美
水面のゆらぎのほかにも、身近なところにある「ゆらぎ」はないだろうか?そう考えてみたところ、煙が形づくる不思議な「ゆらぎ」に注目してみました。
海外では「スモークアート」と呼ばれるジャンルがあり、数多くの煙の作品が撮影されているようです。それをヒントに線香やロウソクの煙で「ゆらぎ」をつくり撮影にチャレンジしてみました。
写真を見てのとおり3本の線香の煙が立ち上っています。画像合成はせず、一度のシャッターで撮影しました。二度と同じ形を目にすることがない、偶然できあがった不思議な「ゆらぎ」を楽しむことができました。
作例では機材やセットを組んで撮影していますが、手軽に色つき煙写真を楽しむ方法として、赤や青などのセロハンで色をつけた光(LEDライトなど)を当てるだけでも、面白い「ゆらぎ」が撮影できます。背景を暗くすると煙の色と形が際立ちます。
くねくねと曲がりくねったうずを描くような姿は、水の波紋のように規則性のある「ゆらぎ」とはまた違った美しさがあります。一瞬を写しとめる写真らしい表現といえるでしょう。
煙の造形的な「ゆらぎ」をねらうにはシャッターチャンスが重要
左右対称(シンメトリー)が描き出す不思議イメージ
何気ない日常の光景にも「ゆらぎ」が見つかりました。コーヒーに注いだミルクが描く不規則なゆらぎ模様です。この写真は、一つとして同じものが現れない「ゆらぎ」写真を左右対称(シンメトリー)に加工したものです。シンメトリーな造形が見せる均整のとれた不思議な美しさを感じませんか?
撮影するにはちょっとコツがいります。まずコーヒーの真上から撮影すること。そしてコーヒーの表面が反射しない光の状態で撮ること。シャッター速度も大切で、遅すぎるとあっという間にミルクが拡散してしまいます。この写真では、ストロボを使用して1/50秒で撮影しました。
何度も撮影した結果、ミルクを注いでから2〜5秒のタイミングで、もっともミルクが美しい「ゆらぎ」の造形になることがわかりました。
何気ないところで見つけた「ゆらぎ」、身近な「ゆらぎ」を見つけて撮影すると面白い作品につながるかもしれません。
もとの写真はこちら。ごく普通のコーヒー&ミルク。
きれいな模様になるのは、ミルクを注いで2〜5秒のタイミング
「ロールシャッハ・テスト」をご存じですか? 紙の真ん中にインクを落とし、半分に折って広げると、インクが左右対称(シンメトリー)の図柄になります。この偶然できたイメージが何に見えるかによって、その人の思考や心理状態を探る心理テスト。人間は左右対称の図形を見ると、そこに何らかの象徴的な意味を読みとってしまうのだとか。皆さんもいろんなモノを撮って左右対称にして遊んでみては?
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空に現れた謎の「ゆらぎ」。これは水面の写り込みと小さな波紋が写っている写真を「逆さま」にしたものです。下の種明かし写真を見てしまえば、なんてことのない池の写真ですが、逆さまにすることで、空が揺らいでいるような不思議な写真に見えませんか?
撮影のポイントとしては、まず無風であること。水面が鏡面のように静かになっているとベストです。水面の写り込みが実像に近くなり、写真を逆さまにしたときのリアリティーが出てきます。また、単純な空一面の写り込みより、対岸の景色(実像)も適度に入っていると、逆さまにしたときその部分が写り込みのようにも見えて、目の錯覚を起こしやすくなります。