
講師:種清豊(写真家・EOS学園講師) プロフィール
すぐに楽しく遊べるとっておきの撮影ネタを紹介する「タネキヨのヨキネタ」。第6回では「鏡を使ったトリック写真」にチャレンジします。身近にある鏡を使って現れる本物と映り込みの不思議な世界。果たして「現実空間」と「異空間」の世界をうまく演出できるでしょうか!?
1982年、大阪府生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経て独立。主に日本各地に残る明治、大正、昭和初期のクラシックな素材を求めて撮影中。また、人物撮影や、デジタルカメラ専門誌、カメラ専門誌での執筆活動も行っている。
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かじったリンゴ、鏡、カメラ、
きれいなリンゴの位置がポイント。
鏡に映っているはずのモノを
隠すことでトリックになる。
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赤いバラを手に持った鏡に映して
フシギ感を演出
手の平サイズの鏡を手に持ってもらい、手前に置いたバラが写り込む位置を探りながら撮影しました。手で持ってもらうときに、鏡を起こしたり倒したりを繰り返すことで、バラが大きく入る位置を探します。また、「前ボケ」を入れることで、現実から少しふわっとした不思議な空間へいざなうような雰囲気を演出しています。鏡の中のバラの背景と、現実風景の背景を同系色にすることで、赤いバラが引き立ちます。撮影してみるとよくわかりますが、屋外では写りこませたくないものもたくさん写り込んできてしまします。「主役はシンプルに」することで、不思議感が演出できるのかもしれません。
背景を同系色にそろえて
鏡像と実像の差を少なくシンプルに
公園にある大きな時計を小さな鏡に
閉じ込めてみると……
地面に置いた鏡のフチいっぱいに、公園の時計がすっぽり収まるように、撮影位置を調整しています。意外と簡単に見える写真ですが、最適なカメラ位置を探るのに苦労しました。また鏡が直径10cm程度と小さいおかげで、石畳とのサイズ感に不思議な違和感が出ました。
鏡への映り込みは写真の中ではあまり大きく見せず、背景など現実の景色を広く見せることで、「非現実的な映り込み」が演出できるようです。多重露光を使うなどして異なる時間を示した時計を組み合わせてみると、もっと面白い表現になるかもしれません。
非現実感を出すには
「小さめの鏡」を使うと効果的
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今回のすべての作品について言えることですが、映り込みの様子を確認する際は、必ずカメラの位置から確認するようにしてください。見る位置のわずかな違いにこだわることが今回の遊びのポイント。
とくに室内での撮影では三脚があると厳密に位置を決定することができて便利です。
※注 ガラス製の鏡の取り扱いにはくれぐれもご注意ください。割れにくく安全性の高いアクリルミラーでも代用可能です。
このトリック、見破れましたか? じつは単純。かじったリンゴが鏡に写っているだけなのです。
右手前のきれいなリンゴは鏡に映らないように、リンゴ自体で映り込みを隠しています。これが第1のポイント(下の写真を参照)。かじったりんごの実物は、向かって左側のフレーム外に配置して写真に写らないようにします。これが第2のポイント。
撮影位置を左右に動かしたり、立てかける鏡の角度を変えることで、リンゴのトリックが完成する最適な「映り込み位置」を探ります。同時に、カメラが映り込まない位置を探してください。位置調整がうまくいけば、どなたにでもこんなトリック写真が撮れますよ。