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センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

ススキで表現する秋の空気感

写真家・川合麻紀先生

今回は秋のイメージから、色づく水面とススキを取り上げてみます。景勝地での紅葉の風景は誰が見てもすてきですので、まずはそれをきっちり撮影しましょう。その後、ディテール(全体の中の細かい部分)の魅力を発見できれば、写真のバリエーションが広がります。

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

光の輝きを意識したススキの表現

光の輝きを意識したススキの表現

EOS 7D Mark II・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F4・1/180秒)・+2 1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:日陰・ピクチャースタイル:風景

夕日の時間になってきましたが、夕日撮影に適した風景がなかったので、少し歩いてみたら、夕日よりも木立やススキが目につきました。そこで夕日は背景に入ってもらうことにして、ススキを輝かせてみようと思いました。ススキを撮るなら逆光がベストです。
ススキのちょっと後ろに木立があり、その合間から漏れる光で丸ボケ(玉ボケ)をつくれるかどうか微妙な距離。それでも光の印象が強かったので撮ってみました。イメージ的に暖かい光にしたかったので、ホワイトバランスは〈日陰〉に設定。露出補正は0だとススキがシルエットになりました。もっと光の印象を強めたかったので、露出補正はプラス2.5で撮影しました。

こんなふうにも撮ってみよう

ススキの撮り方バリエーション

「奥行き感」を表現してススキの
秋風景に深みを出す

「奥行き感」を表現してススキの秋風景に深みを出す

EOS M・EF-S55-250mm F4-5.6 IS・絞り優先AE(F5・1/2000秒)・+1/3補正・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

目の前に広がるススキの秋風景。逆光で光るススキの印象と、奥行き感を表現したいと思いました。奥行き感を表現するには、距離の違うものが画面の中に混在するように構図をつくります。手前にススキ、遠くにススキの丘、さらに遠くに山という、距離が異なる3つの部分を混在させました。奥行き感を出すことで、写真に深みのある味わいを加えることができました。

試行錯誤もよし。表現や発想の幅を広げよう

たまたまそこに行ったから何となく撮ることがあると思います。とくに明確なねらいがないときは、写真的表現を試すチャンスと考えましょう。上のススキの写真と同じ場所、同じ機材を使って、バリエーションを考えて撮った例をご覧ください。
ピントを手前のススキではなく奥に合わせました。逆光の印象を強めたかったので、空をカットした構図に直しました(写真1)。次に、ズーミングして部分を切りとったのが次の写真です(写真2)。ちょっとした違いでも、写真の印象はかなり変わります。もっと印象を変えたければ、マクロレンズで穂の部分だけを撮ったり、広角で空を見上げながら撮ったりと、いろいろな絵柄が想像できます。その発想を現場で積極に試して表現力の幅を広げていきましょう。

写真1:空をカットして逆光の印象を強調

写真1:空をカットして逆光の印象を強調

写真2:ズーミングして前ボケ越しに遠方をのぞくイメージ

写真2:ズーミングして前ボケ越しに遠方をのぞくイメージ

鉄道風景+ススキ野原で
秋らしい季節感を表現

鉄道風景+ススキ野原で秋らしい季節感を表現

EOS 7D Mark II・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F5.6・1/350秒)・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

この日は汽車を撮るために出かけました。この場所を見ているうちに秋らしい季節感を出そうと思い、ススキの穂で画面を埋めてみることにしました。汽車は小さく、それも画面の右にちょこっと入れる構図をつくってみました。
汽車がススキの穂の隙間に入る時間はほんのわずか。イメージどおりの露出で撮れるようにあらかじめ露出を決め、マニュアルモードで撮影しています。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

イルミネーションの点光源を
生かして幻想的に!

イルミネーションの点光源を生かして幻想的に!

EOS M・EF-S55-250mm F4-5.6 IS・プログラムAE(F5・1/125秒)・-1補正・ISO3200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

ススキの名所といえば、関東なら箱根の仙石原、関西なら河内長野の岩湧山が有名どころですね。いずれも大自然の中のイメージですが、ススキは都市や近郊でも容易に見つけられる植物です。都会やテーマパークなどにあったら、こういう撮り方もありかなと思います。夜のイルミネーションを背景にして、ススキにピントを合わせることで、点光源を丸ボケ(玉ボケ)にしてみました。従来のイメージを脱した幻想的なススキの写真ができました。

普段は好まれないゴーストやフレアを
表現として活用

普段は好まれないゴーストやフレアを表現として活用

EOS 7D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・絞り優先AE(F16・1/350秒)・ISO400・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

冒頭の写真では、ススキの穂を逆光で輝かせて撮る方法を紹介しました。今度はもっと光があふれるイメージにしたかったので、意図的にフレアゴーストを入れてみようと考えました。逆光になるように構図をつくると、たまたま虹色の光のラインが現れたのでそのまま撮影しました。この虹はPLフィルターによるゴーストのようです。本来、ゴーストやフレアは好まれませんが、私は写真の表現としてよく利用します。

ポイントまとめ

  • 逆光に輝くススキの穂で、澄みわたる秋の空気感を表現
  • ゴーストやフレアを利用してさらに光の輝きを強調する
  • イルミネーションの点光源で幻想的に見せても面白い

ススキはできれば逆光で撮りたいですね。ススキの穂に光をまとわせると、ふわふわしてきれいです。太陽の位置を考えて撮影時間を決めてもいいと思います。ススキに限らず自然風景を撮るときは、太陽の位置や動きがわかっていると、思いどおりの色や雰囲気で撮れることが多いですよ。そのために何度も同じ場所に通って、光の変化のパターンをよく知ることも重要です。

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ありがとうございました。

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