センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
みなさん、こんにちは!
写真家・川合麻紀です。
「センスアップ! 写真のキメ手は表現力」は、旬のモチーフを題材に、表現力アップを目指していくレッスンページです。
今回の題材は、この世界を美しく演出してくれる「太陽」です。太陽自体を主役にしたり、太陽は写ってなくても朝日や夕日の色を生かしたり、影を生かしたりと、ねらい方はさまざまです。朝日、夕日の時間帯はもちろん、昼間も太陽を意識して撮影してみましょう。
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・EXTENDER EF2×III・絞り優先AE(F9.5・1/1500秒)・+1補正・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
太陽の撮り方バリエーション
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F8・1/1000秒)・+1補正・ISO1600・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
日の出に合わせ、オジロワシやオオワシを撮るため船に乗りました。陽が昇るときなど光の変化が激しい時間は、ドラマチックな写真になります。「目覚め」「朝の始まり」といったイメージです。
太陽がとても明るく、反面、流氷は暗い状況。逆光になるオジロワシはつぶれてしまいそう。全体の光の差が激しい状態でした。全体をすべてちょうどよく表現するのは難しいので、今回は+1補正により、ぎりぎりオジロワシが見える程度、流氷もつぶれない明るさで撮ることにしました。幸いにも逆光で羽が少し光ったため、流氷から少し形が浮き上がりました。
1枚目の写真とは違い、距離が少し近めの被写体なので、太陽は背景にぼけて大きめに写ります。今回は太陽とオジロワシの組み合わせでしたが、太陽と花、太陽と葉っぱなどで試してみても面白いと思います。
EOS 5D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM・絞り優先AE(F16・1/180秒)・-1 1/2補正・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景
風景を見せながらの太陽入りカットです。太陽が低い時間帯は斜めの光になるため、立体感が強くなり、手前の岩はゴツゴツとした質感で写ります。太陽の写真というより、広角レンズを使ってワイドな風景としてねらったので、奥行き感が出ていると思います。
太陽を画面に入れると問題になるのがフレアやゴーストです。風景の写真を専門とする方々にはあまり好まれませんが、スナップやポートレート写真を撮っている方々は、フレアやゴーストを「表現」として楽しまれているようです。私も絵柄によって嫌だと感じるときと、むしろ好ましいと感じるときがあります。
もしゴーストやフレアが発生した場合、ズーミングを少し変えてみたり、あるいはカメラ自体の角度を少し変えてみたりすると消えることがあります。また、画面外の太陽からのフレアなら、レンズフードだけでなく手などで光を遮ってみてもいいでしょう。
さらなるセンスアップを目指して
EOS 5D Mark III・EF16-35mm F2.8L II USM・絞り優先AE(F19・30秒)・+1補正・ISO800・ホワイトバランス:オート・ホワイトバランス補正(A9, M9)・ピクチャースタイル:風景・NDフィルター使用
夕日を撮りに行ったのですが、雲の動きの速さが面白いと感じて撮影した一枚です。かなり強めのNDフィルターを使い、雲の動きを30秒の長時間露光によって表現。水面は滑らかになり、そのギャップで空の表情がより際立ちました。長時間露光で雲を動かしたことで、太陽自体は見えなくなりましたが、私が好きなトーン(色調)を生かした夕景のイメージにできました。
下の写真は、シャッター速度1/60秒で撮影したものです。シャッター速度の違いにより、かなり見た目も印象も違うことがわかります。
EOS 6D・EF24-70mm F4L IS USM・絞り優先AE(F16・1/60秒)・ISO200・ホワイトバランス:オート・ホワイトバランス補正(A9, M9)・ピクチャースタイル:オート
EOS 5D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM・絞り優先AE(F16・1/500秒)・+1補正・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
厳冬期の風景を青空と太陽で爽やかに表現してみました。ズームレンズの広角側で広がりのある景色に。その空に太陽の光芒を配しています。絞りをF8以上に絞れば、宝石のように輝く光芒となります。
太陽が写り込んでいるということは、逆光ということ。樹氷の手前左にしっかりと影が伸び立体感が出て、一つ一つの形をしっかりと見せることができました。
このときは靄の状態がどんどん変化し、太陽が見え隠れするので、刻々と違う雰囲気の写真になりました。撮っていてとても楽しかったことを思い出します。
太陽を撮るとなると、朝日・夕日の時間が一番美しくドラマチックな写真になります。太陽自体を撮るなら、完全なお天気がいいわけでもなく、場合によっては薄雲があったりしたほうが、画面の中で太陽が明るくなり過ぎず、きれいに見えるでしょう。完全な快晴時など、太陽が明るすぎるようなら、太陽が出るちょっと前、沈んだ後をねらうほうがいいことも。臨機応変に考えましょう。
太陽だけを画面いっぱいに捉えるよりは、地上の被写体と組み合わせて、その大きさや美しさを際立たせる撮り方のほうが私は好きです。
※太陽の撮影の仕方によっては、CMOSセンサーへのダメージや目への影響の可能性もありますのでご注意ください。
立ち枯れの木にはオオワシが2羽とまっています。そのオオワシたちを燃えるような夕日に閉じ込めてみました。背景が明るい丸型で囲まれるため、目線がその中心に行きやすく、オオワシのシルエットがくっきりと浮かび上がりました。構図自体も、主役を画面の中心付近に配置し、落ち着いて静かな、それでいて強い印象を表現しています。
今回は太陽を大きくしたかったので、望遠ズームレンズにエクステンダーを装着して撮りました。約890mm相当の超望遠です。
この大きさですとフレーミングした太陽は、あっという間に動いていきます。枯れ木と太陽を重ねて撮り続けるために、右側に移動しながら沈んでいく太陽の動きに合わせて、左へ左へとカメラポジションを変えています。結構忙しい撮影でした。