ホーム > センスアップ! 写真のキメ手は表現力 > 雨風景をセンスよく表現

雨風景をセンスよく表現

川合麻紀(写真家・EOS学園講師) プロフィール

写真家・川合麻紀先生

みなさんこんにちは! 写真家・川合麻紀です。「センスアップ! 写真のキメ手は表現力」は、いまが旬のモチーフを題材に、表現力アップを目指していくレッスンページです。第3回は雨の季節の被写体、「アジサイ」と「雨風景」へのアプローチです。天気が悪いとなんとなく出かけたくなくなりますよね。でも、雨ならではのシーンや、結果的にむしろ雨だからすてきと思えるものなど魅力的な被写体がたくさんあります。人が撮らないときに撮るほうがオリジナリティーのある写真もできあがりやすいですので、ちょっと頑張ってみませんか?カメラは精密機器なので、しっかり雨対策をして出かけましょう。
では、始めましょう!

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

雨でも楽しい!そんな気分を表現

雨でも楽しい!そんな気分を表現

EOS M3・EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM(焦点距離:35.2mm ※フルサイズ換算)・プログラムAE(F5.6・1/30秒)・+1 2/3補正・ISO6400・WB:白色蛍光灯(WB補正:B9, G9)・ピクチャースタイル:オート

一緒にいた友達のかわいい足元、落ちていた葉っぱをポイントに、ピンクの傘や上にあった木々の葉っぱの写り込みで画面構成してみました。もし、お友達や家族と撮影に行くなら、かわいい色の傘や長靴などで出かけるといいかもしれませんね。雨の日だって楽しいお出かけ、そんな気分の写真にしたいです。
そのままの色ではグレーっぽくなりやすいので、ホワイトバランスを白色蛍光灯にし、さらにホワイトバランス補正でブルーとグリーンを加え、極端に色を乗せています。

「ホワイトバランス補正」でイメージどおりの「色」をつくる!

メニュー画面で「WB補正」を選ぶ→各色(B, G, A, M)の座標軸で調整する

ホワイトバランスを選んで撮影したとき、「もう少しだけ青いほうがいい」とか「もうちょっとだけマゼンタを足したい」というように、少しだけ色が違ったらいいなと思うことはありませんか? そんなときに使うのがホワイトバランス(WB)補正です。
まずは、自分の使いたいWBを選び(たとえばWB:オート)、その後、「WB補正」で微調整します。
WB補正の画面を呼び出しすと、B(ブルー)A(アンバー)G(グリーン)M(マゼンタ)の座標が出てきます。難しそうに見えるかもしれませんが、じつはカンタン。「味つけ」を加えたい色の座標を動かし、色を加えたり減らしたりすることができます。様子を見ながら少しずつ調整して仕上げるようにしましょう。

※WB補正は、一度設定すると、解除するまで同じ設定が続きます。別の撮影の時には中央に戻す必要があります。

こんなふうにも撮ってみよう

雨風景のバリエーション

傘の丸い形のパターンと格子模様のラインで「形」の面白さを表現

たくさんの傘を咲いている「花」のようにねらってみた!

EOS M3・EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM(焦点距離:27.2mm ※フルサイズ換算)・プログラムAE(F5・1/250秒)・+1 1/3補正・ISO800・WB:白熱電球(WB補正:B9, G9)・ピクチャースタイル:オート

「雨だから外で撮るのはちょっとなぁ」ということで室内に逃げました。外を見ると建物の脇にたくさんの人が並んでいて、その傘がまるで咲いている花のようだなと思ったので、撮ってみることにしました。
写真の表現方法はさまざまありますが、この写真の場合は「形」がポイントです。傘の丸い形の集合しているさまがパターンに見えるので、それと建物の格子模様のラインを組み合わせ、形の面白さをねらってみました。
画面上部は見たままの景色、下部は室内にある石の手すりに建物の窓が反射しているところです。映り込む建物が面白く感じたので、そのラインを意識して構図をつくりました。

濡れた路面のミラー効果で、雨の日をフォトジェニックに!

濡れた路面のミラー効果で、雨の日をフォトジェニックに!

EOS M3・EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM(焦点距離:17.6mm ※フルサイズ換算)・プログラムAE(F4・1/60秒)・+3補正・ISO1250・WB:白色蛍光灯(WB補正:B9, G9)・ピクチャースタイル:オート

「雨の日はフォトジェニック」というポイントの一つは、地面が濡れてミラーのように反射することだと思います。普段ならただの地面、きれいではない場所でも、雨に濡れて反射することで、風景や色が映り込むと途端にすてきな被写体に変わります。
この写真では、歩いている人のタイミングを計りながら、濡れた地面にカメラをギリギリまで近づけて構図をつくりました。こういうローアングル撮影では「バリアングル液晶」のあるカメラのほうがラクに撮影できます

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

「多重露出」で幻想的なイメージを演出した

「多重露出」で幻想的なイメージを演出した

EOS 5D Mark III・EF70-200mm F4L IS USM・EXTENDER EF1.4×III(焦点距離:270mm)・絞り優先AE(F5.6・1/30秒)・+1/2補正・ISO400・WB:オート・ピクチャースタイル:風景・多重露光

雨の日でしっとりと幻想的な雰囲気だったので、そのイメージを強調するために「多重露出(多重露光)」をしてみました。1枚目はピントを合わせて撮影し、2枚目はピントを外して(ピンボケにして)撮影したものを重ねています。
多重露出は重ね方によって雰囲気が変わります。今回は「比較(明)」という合成方法です。カメラ内で重ねるときには「ライブビュー機能」を使うと、2カット目の撮影のときに、初めの1枚の絵柄がうっすら見えますので、重ねたイメージをつかみやすいでしょう。
多重露出の機能のないカメラもありますが、キヤノンのソフトウェア「DPP 4(Digital Photo Professional 4)」で写真を重ねることができます。素材としてピントを合わせたカットと外したカットを撮っておけば、パソコン上で多重露出のイメージをつくることが可能です。もちろん、ピントを合わせたまったく違う絵柄を重ねてみたりしてもいいですよ。

雨しずくに注目して小さな自然の美しさを表現

雨しずくに注目して小さな自然の美しさを表現

EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM(焦点距離:100mm)・絞り優先AE(F8・1/90秒)・+1 1/2補正・ISO800・WB:オート・ピクチャースタイル:風景

「雨ならではの表現」といえば雨自体を写す方法があります。降っている雨を撮ってもいいですし、雨しずくを撮ってもすてきです。しずくには、背景にあるものが上下反対に映り、小さな自然の美しさ、かわいらしさが表現できます。
こうした場面では、しずくの背景にどんなものがあるのかが重要です。この写真では、しずくが垂れている花自体が写っています。しずくの中に写っているものをしっかり見せたい場合には、いつもの絞りよりもちょっと絞ったほうがうまくいくことが多いです。このときもF8に絞って撮影しています。

ポイントまとめ

  • 濡れた路面や水たまりの映り込みを探してみよう
  • 色とりどりの「傘のある風景」に注目しよう
  • 雨雫を主役に「雨の日」を表現する表現も楽しい

雨ならではのシーンがあると意識すれば、いろいろな可能性が見えてきます。濡れているということは、いろいろなものが映り込むということ。現実と映り込みの組み合わせで面白い絵がつくれます。 今回は昼のシーンでしたが、暗くなればイルミネーションが反射して光が増え、華やかになります。また、ストロボを併用すれば雨が丸くぼけて写ったりと、面白いことがいっぱいあるはず。雨の日に写真を撮ったことがない方は、ぜひ挑戦してみてくださいね!

この記事は気に入りましたか?

ありがとうございました。

バックナンバーはこちら