センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
強烈な夏のイメージを残しながらも、少しずつ季節が変わっていく今日このごろ。今回のテーマは「光と影」、そして初秋の花である「ヒガンバナ」を取り上げてみました。光と影は、写真を撮る上での大テーマでもありますし、季節を問わず、いつでも意識すれば撮れる被写体なので、ぜひトライしてみてください。ヒガンバナは、形的にちょっと難しい花でもありますが、その反面、フォトジェニックでもあります。では、始めましょう。
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS 5D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM・絞り優先AE(F16・1/60)・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
光と影のバリエーション
EOS Kiss X2・EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM・絞り優先AE(F8・1/750秒)・+1補正・ISO200・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景
海の景色を撮る私。海と空の青色を表現したいので、順光になる場所から撮影していますが、まだ朝の時間帯だったので比較的長く自分の影が砂浜に落ちました。
自分の影は、風景を撮るには邪魔です。どこまで影をカットして構図を作ろうかとしばらく眺めていました。空を飛ぶ鳥の影もできることに気がついたので、それを撮ろうと思いました。影の形がわかりやすくなるようなポーズを考え、鳥の影がくるタイミングでシャッターを切りました。ある意味、セルフポートレートかもしれません。
EOS-1D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F8・1/250秒)・+1 1/2補正・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
さらなるセンスアップを目指して
EOS M3・EF-M22mm F2 STM・絞り優先AE(F8・1/250秒)・-1補正・ISO200・ピクチャースタイル:オート・ピクチャースタイル:モノクロ(RAW現像時:コントラスト+2・シャドー-5・フィルター:赤)
夕方の散歩道に、ネコがいました。実際にはもっと明るく、ネコの様子も目で見える状態です。ネコのつくり出す影は実際のネコの形とは違って、ちょっと大きく耳はとがっていて、影だけが今にも動き出しそうでした。
影の形の印象だけを強めて撮りたかったので、ピクチャースタイルは「モノクロ」に設定。色をなくすと、形がより際立ってきます。
RAW現像時に、「コントラスト」を+2、「シャドー」を-5、「フィルター効果」は赤にして、さらに極端にコントラストを上げて表現してみました。
同じシーンのカラー写真と比較してみましょう。形の面白さが強調されるのは、
光の陰影だけのモノクロ写真だとわかりますね。
EOS M3・EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM・プログラムAE(F5・1/320秒)・-1/3補正・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:モノクロ(RAW現像時:コントラスト+4・シャドー-5・フィルター:赤)
影のフォルム(形)を強調したいときには、色の情報がない「モノクロ」のほうが光の陰影を感じやすくなります。モノクロで撮りたいときは、ピクチャースタイルを「モノクロ」に設定しましょう。ピクチャースタイルの優れたところは、設定をカスタマイズできることです。ピクチャースタイル「モノクロ」を選択した状態で〈INFO.〉ボタンを押すと、詳細設定で「シャープネス」や「コントラスト」「フィルター効果」を選ぶことができます。
フィルター効果には、黄・オレンジ・赤・緑があります。
光と影のコントラストは、黄→オレンジ→赤の順に強くなります。緑はモノクロ写真の一部を濃く表現します。好みの仕上がりになるように設定してみましょう。
ピクチャースタイル「モノクロ」の詳細設定画面で「フィルター効果」を選択。
「フィルター効果」の中から好みのフィルターを選択。
光に照らされた被写体もすてきですが、それがつくり出す影をよく意識すると、「主役」になれる力を持っています。とくに通勤通学の時間や、ワンちゃんのお散歩の時間などは、朝・夕ですので影が伸びやすい時間帯です。たとえばワンちゃんのお散歩のとき、自分と犬の影をねらってもいいし、お子さんと散歩しながら手をつないでいる影を撮っても雰囲気のある写真になると思います。場合によっては、実像は入れず、影だけで構図をつくっても面白いですよ。
暑さで無意識に日陰を歩く私。海に出る道には、木々がつくっている影がありました。その影のつくる形や陰影は、それだけで美しいなぁと感じます。
一番いいなと感じた部分の面積を増やすのが「構図のコツ」です。そこで影を多めに、実際の木と上下で遠くの景色をはさむ感じにしてみました。暗い場所からチラッと見える青色は、これから目の前に開ける景色を期待させます。
実際に太陽は写っていなくても、日陰があることで強い太陽をイメージさせ、夏の印象が強くなったと思います。