ホーム > 光あふれるイルミネーションの表現

センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

光あふれるイルミネーションの表現

写真家・川合麻紀先生

この時期、あちこちでイルミネーションの点灯のニュースが聞こえてきます。ぜひ写真を撮りに出かけてみましょう。イルミネーションのスポットには人々が集まり、笑顔があふれ、撮っていても幸せな気持ちになります。
また、冬になると撮るものは少なくはなりますが、冬ならではの美しい景色に出会えます。白一色ではない冬の色彩を引き出す写真の楽しみ方も提案します。春を待つ間、冬の風景撮影を楽しんでみませんか?

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

光でつくり出す幻想風景

光でつくり出す幻想風景

EOS 7D Mark II・EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景(多重露光)

目で見たときの光と、写真にしたときの光。同じ光でも、その印象はかなり違います。単純に撮った写真では見た目のインパクトが少々薄れ、光が少なく寂しく見えるような気がします。私は光があふれるような夜景が好きなので、実際の風景を忠実に再現するのではなく、私のイメージの中の景色を「光でつくる」ことを意識して撮影しています。
この写真は、多重露光により2枚のカットを重ねることで、光の量を増やした写真です。夜の遊園地はもともとたくさんの光できらびやかですが、より華やかな印象の写真になりました。

カメラの機能で簡単にできる「多重露光」

EOSシリーズには、複数の写真を重ね合わせた写真が撮れる機種があります(今回使ったEOS 7D Mark IIは2〜9枚の多重露光が可能)。ライブビュー撮影のときは、重ね具合を確認しながら撮影できるので、より簡単に多重露光が楽しめます。

カメラの機能で簡単にできる「多重露光」

多重露光の1枚目は、長時間露光(20秒)により動きながら回転する乗り物で光跡をつくりました。

カメラの機能で簡単にできる「多重露光」

2枚目は、少し構図を変え絞りはF4.5にしました。
その後、レンズをマニュアルフォーカス(MF)にしてピントリングを手で回すことで
「ピンボケ」をつくり、点光源を点ではなく丸い玉ボケにします。
これらの2枚を重ねることで光も重なり、光あふれる温かいイメージをつくり出しています。

>詳しい方法はこちら!「多重露光撮影の方法 (EOS 7D Mark II) 」

こんなふうにも撮ってみよう

イルミネーションの撮り方バリエーション

クリスマスのドリーミーなムードを多重露光で表現

クリスマスのドリーミーなムードを多重露光で表現

EOS 7D Mark II・EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS・ISO100・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景(多重露光)

観覧車に飾られたイルミネーションのクリスマスツリー。この情景をまるで夢のような光あふれるイメージにしようと思いました。そのまま撮影してもきれいですが、どうしても鉄骨のごつごつ感が出て、ファンタジックな絵柄になりにくいので多重露光にしてみました。

点光源を玉ボケにするには、ピントを合わせた位置と背景(もしくは前景)が、かなり離れている必要があります。つまり、カメラに対して平面上に被写体が並んでいる場合は、玉ボケを入れることができません。そんなわけで3枚の写真を多重露光で重ねてみました。

多重露光した1枚目は、普通に撮影したカット。長時間露光をして観覧車の光を円板状にしてみました。2枚目は、同じ構図のまま、少しだけピンボケ(アウトフォーカス)をつくったもの。そして3枚目は、少しだけズームを望遠に動かして、大きくピンボケをつくったものです。

玉ボケや光の光跡が美しいカットを重ねることで、クリスマスカードのような写真に仕上げました。写真表現で大切なことは「想像力」です。多重合成の最終形をイメージしながらいろいろ試してみましょう。想像の世界で遊び、楽しむことが、イルミネーション撮影の面白さです。

フィルターを使ってイルミネーションの印象を演出

フィルターを使ってイルミネーションの印象を演出

EOS 6D・EF24-70mm F4L IS USM・絞り優先AE(F4・1/15秒)・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景・スノークロスフィルター 撮影地:東京ドイツ村 ウィンターイルミネーション2013

イルミネーションの撮影が好きなのは、そこに多くの人が集まるからです。みなさんとても幸せで楽しそうで、笑い声がシャボン玉のようにキラキラと輝いているように見えます。そんな雰囲気を写真で表現したいと思いながら撮っています。

光を増やすために簡単な方法はフィルターを使う方法です。点光源から4本の光跡が出るものを「クロスフィルター」、雪の結晶を思わせる6本の光跡が出るタイプを「スノークロスフィルター」といいます。イルミネーションのきらきら感を高めることができます。

クロスフィルターと並んで夜景撮影でおすすめなのが「ソフトフィルター」です。光を柔らかく拡散して、温かみのある印象を強めることができます。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

画面に光の動きをつくり、視線を中央に集める表現

画面に光の動きをつくり、視線を中央に集める表現

EOS 50D・EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS・シャッター速度優先AE(F22・4秒)・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景
撮影地:東京ドームシティ ウィンターイルミネーション2008

文字やモチーフをかたどったイルミネーションがたくさんある場所で、光の世界の中心に人がいる感じにしたいと思い「露光間ズーム」をしてみました。
露光間ズームとは、長時間シャッターを開けている間に、ズームレンズのズームリングを回すことで、点光源を線状にぶらして動感を表現する方法です。光のラインが外から中心に向かうので、画面中央部に目を誘導する効果もあります。

ズームリングの回転のさせ方により仕上がりが変わりますが、この写真では、シャッタースピードを4秒に設定し、2秒ほど広角側で露光させたあと、残りの2秒で望遠側へズーミングしました。こういった撮影では三脚は欠かせません。

「光の雨の中を歩く人」というイメージを切りとる

「光の雨の中を歩く人」というイメージを切りとる

EOS 5D Mark II・EF70-300mm F4.5-5.6 DO IS USM・絞り優先AE(F4.5・1/10秒)・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景 撮影地:東京ドームシティ ウィンターイルミネーション2009

雨で地面が濡れていると、周囲の光が地面に反射して美しい情景をつくり出します。これは晴れの日の写真ではできないこと。「光の雨の中を歩く人」というイメージをつくるために流し撮りしてみました。いろいろ撮影しているうちに、傘を差した女の子が画面に入ってきました。流し撮りにすることで、地面の光や長靴などがぶれて「動き」が表現できました。
撮影時には気がつかなかったのですが、傘にハート型の透明部分があって、そこからかわいいお顔がのぞいているではありませんか。ちょっとうれしくなりました。

ポイントまとめ

  • イルミネーションの「光」で風景を描き出すように撮る
  • 多重露光、玉ボケ、流し撮りなどのテクニックで光を演出
  • フィルターワークによって光の輝き感をつくり出す

夜の撮影では、絞りシャッタースピードISO感度の組み合わせによる露出の関係が理解できているかどうかなど、写真の基礎知識が重要です。また、自分の機材を自在に扱える基礎テクニックも。いい条件が重なって何となく撮れることもありますが、イメージしたとおりの表現で撮りたいときには、知識やテクニックがものを言います。
今回は、私が好きなタイプのイルミネーションをご紹介しました。私は光あふれる感じが好きなので、黒の面積を減らす工夫をしています。一方、意図的に黒の面積を増やして雰囲気づくりした夜景スナップもすてきです。どんな写真が好きか、撮影前にいろいろイメージして撮影に臨みたいですね。

この記事は気に入りましたか?

ありがとうございました。

バックナンバーはこちら