センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
強烈な夏のイメージを残しながらも、少しずつ季節が変わっていく今日このごろ。今回のテーマは「光と影」、そして初秋の花である「ヒガンバナ」を取り上げてみました。光と影は、写真を撮る上での大テーマでもありますし、季節を問わず、いつでも意識すれば撮れる被写体なので、ぜひトライしてみてください。ヒガンバナは、形的にちょっと難しい花でもありますが、その反面、フォトジェニックでもあります。では、始めましょう。
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F5.6・1/90秒)・ISO400・ホワイトバランス:オート(補正:A2)・ピクチャースタイル:スタンダード
ヒガンバナの撮り方バリエーション
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F4.5・1/90秒)・-1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:オート(補正:A2)・ピクチャースタイル:オート
一番上の写真と同じ日の撮影ですが、このときは曇っていました。私はもともと光の陰影を画面に取り入れる表現が好きなので、濃淡の出にくい曇りの条件でもねらいどおりに撮れる場所を探しました。
木々の下で少し暗めになった場所と、背景の抜けているところが画面に混在するように構図をつくりました。近くと遠くにある花を望遠レンズで切りとることで、陰影に加えて奥行き感を出すことができました。遠くに人が歩いていますが、大きくぼかしていますので、それほど気ならないと思います。
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F5.6・1/15秒)・+2補正・ISO400・ホワイトバランス:オート(補正:A2)・ピクチャースタイル:風景
この写真も曇りのときに、光の濃淡を構図の中に混在させたパターンです。この写真の場合は、全体的に淡い印象で表現したかったので、とくに暗い場所にある花が明るくなるように露出補正しています。これにより、もともと明るい場所にある花はより明るくなり、さらに色が淡くなりました。
本来のヒガンバナの色ではありませんが、この写真ではイメージ表現としてのヒガンバナになりました。
さらなるセンスアップを目指して
EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F22・1/6秒)・-1 1/2補正・ホワイトバランス:オート(補正:A2)・ピクチャースタイル:オート
冒頭の写真も、この写真と同様に赤だけで構図をつくりましたが、ちょっと印象が違うと思いませんか? 冒頭の写真との大きな違いは「アングル」です。立った状態で少し見下ろすようなアングルにして、画面全体を見せるようにしています。歩きながら花を眺めるアングルで撮れば、より自然な印象で表現できます。
冒頭の写真では一輪の花を「主役」に画面を構成しましたが、こちらは全体が主役です。しかし、花だけで全体を埋め尽くすのではなく、黒い木の幹を入れて全体の画面の印象が強くなるようにしています。
また、この場面ではヒガンバナらしい「妖艶な印象」も加えたいと感じました。少し暗めになるよう露出補正しています。
EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F4・1/90秒)・+2.3補正・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:オート
ヒガンバナはお彼岸のときに咲くことや毒があることから、妖艶でちょっと怖い印象を持つ方もいるかもしれません。被写体として考えると、すっと伸びた茎や放射状の花など、とてもフォトジェニックではないでしょうか。
球体の花なので、ピントを合わせる位置が難しいと感じるかもしれませんが、マクロ撮影ではなく今回お見せした寄り方であれば、それほどピント位置にこだわらなくてもいいでしょう。迷った場合は、ピント位置や絞り値を変えて何枚も撮っておくといいですよ。
また、ヒガンバナの群生地には一般の観光客がたくさんいます。花の背景にわざと人をぼかして入れてみてもすてきです。田んぼの脇に咲いているお花を、風景としてねらうのも一興。雨の日についた雫に映り込む世界をのぞいてみても楽しいです。
ヒガンバナの群生地では、その敷き詰めたような赤に魅せられます。咲きほこる赤、情熱的な赤、燃えるような印象にしたかったので、あえて直射光があたっている部分をねらい、見た目よりも艶やかにしてみました。被写体の色や形をしっかりと出したいときには直射光が有効です。
このとき一輪だけ少し高く飛び出た花を選び、背景は少しだけ光が弱い場所にしたことで、メインの一輪を目立たせました。メインの花の前後をぼかしたい場合は、花の高さまでカメラを下げて望遠レンズで撮影するといいですよ。
ヒガンバナは表面がツヤツヤしているので、写真にすると白っぽくなりやすい花です。PLフィルターを使って反射を少し抑えると、赤い色がきれいに出ます。
花の色はピクチャースタイルによってかなり変わりますので、好みを探してみてください。露出によっても赤の印象は変わります。あまり明るくしすぎると色があせますので気をつけましょう。