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センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

花めぐりの季節を表現

写真家・川合麻紀先生

春は心もウキウキして、お散歩に出かけたくなる季節。私は、いつもミラーレスのEOS Mシリーズを持ち歩き、目にとまったかわいい花を気軽に撮影しています。ありったけの機材を駆使して、花の撮影旅行に出かけるのもいいですね。そこで今回は、ひと足早く楽しめる河津桜と、春の旅先で目にする花の撮り方を紹介します。毎日の撮影を楽しみましょう!

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

春らしい色彩で描く風景

アカバナミツマタ

EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F5.6・1/350秒)・+2補正・ISO1600・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

関東平野部では2月初旬ごろからつぼみが膨らみ、開花すると芳香があるアカバナミツマタ。ミツマタという和名の由来は、枝先が3つに分かれることから。写真に撮ると、小さな花が半球形に集まっている独特な形をきれいに表現するのは難しく感じます。1つの花だけをアップにしてもいいのですが、いくつかの花がポンポンと集合している感じがかわいいので、あえて画面をあまり整理しすぎないように撮影してみました。
背景は桃の花と、普通のミツマタ(黄色)のお花で、全体的に暖色系。春らしいかわいらしい色彩でまとめてみました。

こんなふうにも撮ってみよう

春の花木の撮り方バリエーション

淡い黄色の中にピンク色の前ボケを入れて華やかさを表現

EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F5.6・1/180秒)・+2補正・ISO800・ホワイトバランス:太陽光・ホワイトバランス補正(B1, M4)・ピクチャースタイル:オート

淡い黄色の中にピンク色の前ボケを入れて華やかさを表現

主役は明るい黄色が印象的なミツマタのお花です。花々がたくさん咲き誇っている印象にしたかったので、1点目の写真よりも引いた構図で撮影してみました。背景はトサミズキの黄色で埋めて、全体を優しい雰囲気でまとめました。黄色だけではインパクトが弱いので、ミツバツツジのピンク色を前ボケとして散らしています。
曇り日特有のソフトな光だったので立体感は控えめとなり、全体的に淡い印象の写真に仕上がっています。

光が弱い曇り日でもできる春らしさの表現

EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・絞り優先AE(F4・1/3000秒)・+1 1/2補正・ISO800・ホワイトバランス:太陽光・ホワイトバランス補正(0, M3)・ピクチャースタイル:ポートレート

光が弱い曇り日でもできる! 春らしさの表現

一般的に「お花の撮影には曇り日が最適」といわれますが、私は曇り日に「春らしさ」を表現するのは少々難しいと感じています。キラキラした春の陽光や、ふんわりとやわらかい日差しを生かした絵づくりが好みだからです。曇天で太陽光が弱いと、色がくすみやすく、立体感が出しにくい、つまり、画面が単調になりやすくなります。
逆に、曇り日の弱点を知って、そこを補う表現の工夫により、曇り日の写真を好きなイメージに変えることができます。
弱い光のため色のくすみが感じられるときは、プラス補正で明るめに撮ります。ホワイトバランス補正で色の濃さを少し強めにすることで緩和できます。また、立体感が出ないと主題が背景に溶け込んでしまいやすくなるので、花の背景には違う色(この写真の場合は黄色)を合わせると、主題の花が引き立ちます。

「ピント位置」の違いだけでも変わる表現

春の花を見つけて写真を撮ろうと思うとき、主役の花だけを撮って満足していませんか? 「もっとほかの視点や撮り方がないかな?」と探っていくと、思わぬ発見ができるかもしれませんよ。
次の2枚は、手前の紅梅にピントを合わせた写真(主題は紅梅)と、奥の白い梅にピントを合わせた写真(主題は白梅)です。同じ構図でピント位置だけを変えて主題と背景の関係を逆転させています。1つのシーンでも、ピント位置によって2つの表現が可能になるわけです。レンズのスイッチをマニュアルフォーカス(MF)にして、手動でピントリングを動かしてみるだけで表現の幅が広がる一例です。

手前の紅梅にピントを合わせて撮影

ピントは手前の紅梅に。背景の白梅で、主題の紅梅が引き立ちました。

背後の白い梅にピントを合わせて撮影

ピントは背後の白い梅に。手前に紅梅の前ボケを入れてソフトな雰囲気が出ました。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

小さな春の草花には広角レンズで迫ってみる

EOS M3・EF-M22mm F2 STM・絞り優先AE(F2・1/3200秒)・+1/3補正・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

小さな春の草花には広角レンズで迫ってみる

芽生えの季節には、土からちょこっと顔を出す可憐で小さな花も多く見られます。できるだけカメラを低くして望遠でねらうのも一つの方法。もし近づける花ならば、ズームレンズの広角側で空を見上げるように撮影してもすてきです。
こちらの写真は、「キバナセツブンソウが光を浴びて元気に花を咲かせた」というイメージで撮影してみました。接近して撮ることができる状況だったので、EOS M3に単焦点の広角レンズ(EF-M22mm F2 STM)の組み合わせで迫ってみました。地面の傾斜を生かし、地表の枯れ葉や緑の葉っぱを前ボケにしています。

咲いている花と地面に落ちた花を対比させ一枚の絵に

EOS M3・EF-M22mm F2 STM・絞り優先AE(F2・1/2000秒)・+2/3補正・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

咲いている花と地面に落ちた花を対比させ一枚の絵に

桃の花が咲き誇っていました。地面には、はらりと落ちた花が。花は散るからこそ美しいとも言います。そこで落ちた花を主役にしたいと思いました。地面の花をアップで撮るのではなく、咲いている木々を背景にして状況を見せながら絵にしようと考えました
このようにローアングルでの撮影は、液晶モニターの角度が変えられ、ラクな姿勢で撮影できるバリアングル液晶モニターを搭載したカメラがおすすめです。ライブビュー撮影のときタッチでピントを合わせたい位置が変えられ、そのままシャッターを切ることもできます。

ポイントまとめ

  • 後ボケと前ボケの効果で主役の花を引き立てる
  • 曇り日には「色の対比」で春らしさを表現する
  • ローアングルで地表付近の花々に迫ってみる

前回の「春を告げる花々の表現」でもお話ししましたが、木々に咲く花も多いこの季節、枝がじゃまになって撮りにくいので、枝ぶりで画面を構成することを意識したり、マクロレンズで花だけをねらうのもおすすめです。
ローアングルで小さな花に迫る場合は、広角系のレンズを使ってみると表現のバリエーションが広がります。主役の花だけではなく背景を生かすことを意識した撮影にも挑戦してみてください。

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ありがとうございました。

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