センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
センスアップ!
写真のキメ手は表現力
講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール
今回は、夏におすすめの被写体「ハスの花」と「花火」をセンスよく表現するヒントをお届けします。ハスは早朝に撮る花です。花火は夜のイベントですので、日中の暑さはしのげるはずです。ハスも花火も表現次第でかなり深く楽しめるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS-1D Mark II・EF24-105mm F4L IS USM・F11・32秒(バルブ撮影)・ISO100・WB:太陽光・ピクチャースタイル:風景
風景としての花火写真は、カメラに三脚を取り付けて撮影します。
花火が上がったらリモートスイッチでシャッターを切り、レリーズボタンをロックしてシャッターを開けっ放しにします。花火が何発か画面に入ったなと思ったら、ロックを解除します。これでシャッターが閉じます。この写真では32秒開けた状態にしていました。
このように長い時間かけることで花火が光のラインになって描写されます。暗闇のキャンバスに、花火の光跡で絵を描き込んでいく感覚です。予想もしない花火写真が撮れることがあるので、きっと夢中になってしまいますよ。
打ち上げ花火のバリエーション
EOS-1D Mark II・EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM・F5.6・1.3秒(バルブ撮影)・ISO100・WB:太陽光・ピクチャースタイル:風景
EOS-1D Mark II・EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM・F5.6・1.5秒(バルブ撮影)・ISO100・WB:太陽光・ピクチャースタイル:風景
「ドン!」という大音響とともに丸く大きく開く打ち上げ花火。花の形になぞらえて流れ星のように尾を引くタイプを「菊」、尾を引かないタイプを「牡丹」と呼ぶそうです。それなら「心の中に咲く花」のようなイメージで、打ち上げ花火を撮ってみたら面白いですよね。花火が上がっている間にピントをずらすことによって、花火の光跡を「花びら」のように描写できます。
2枚の写真の1枚目はマニュアルフォーカスにし、ピンボケからピントを合わせた状態まで1.3秒の間にフォーカスリングを動かしています。2枚目もほぼデータは同じで1.5秒の間にフォーカスリングを動かしています。花火の種類やタイミングによって全然違う写真になりました。
仕上がりはファインダーでは見ることはできませんので「カン」と「センス」に頼ります。遊びながらさまざまな表現を試してみてください。
さらなるセンスアップを目指して
EOS 5D Mark IV・EF50mm F1.8 STM・F2.8・1/45秒・-3補正(現像時+0.83補正)・ISO12800・WB:オート・ピクチャースタイル:白熱電球
打ち上げ花火もいいけど、家族とお庭や公園で楽しむ線香花火も、センスよく撮りたい被写体ですよね。ストロボを光らせると人物はくっきり写りますが、肝心の花火が消えてしまいます。暗くなってからストロボなしで撮ろうとすると、ピントが合わせにくく難しいものです。
でも花火は、それ自体が「光源」なので、ストロボなしの表現に挑戦してみましょう。花火を楽しむ人物の表情が夕闇に浮かび上がり、「この夏の思い出感」たっぷりの表現ができます。
とくに線香花火のように光の弱いタイプの花火は、花火の光だけでは光量が足りないので、薄暮の時間から撮影したり、あるいは家の明かりや街灯を利用するなど周囲の明かりを活用するほうがきれいに撮れます。
この写真は、日没から40分後ぐらい。かなり暗くなっていました。このままでは相当暗いので、1人ではなく2人の花火の光に頼ってみました。
もし暗すぎてピントが合わない場合は、他の人に手伝ってもらい、一瞬だけ懐中電灯で顔などを照らしてもらうとピントが合いやすくなりますよ。
EOS 5D Mark IV・EF50mm F1.8 STM・F16・8秒・-3補正・ISO100・WB:オート・ピクチャースタイル:オート・ストロボ発光(スピードライト600EX-RT)
線香花火を情緒豊かに撮ったあとは、手持ち花火を使って大胆に弾けた表現を楽しんでみましょう。手持ち花火の光跡を絵筆にして「ハート」を描いてみました。夜ならではの「光遊び」です。
カメラは三脚に固定、絞り・シャッター速度はマニュアルで設定、ストロボを使用します。まず、花火に火をつけてから、「はい、笑顔で!」と声をかけてシャッターを切ります。その時点でストロボを発光。ストロボで人物の姿が、きちんと写ります。ストロボが発光したらシャッターを開けたままの状態で、ハートを描いてもらいました。
ハートの光跡を描ききるまでシャッターを開けている必要があるので、ハートを描くのに何秒ぐらいかかるのかリハーサルしました。4秒ぐらいでハートが描けそうでしたので、余裕をもってシャッター速度は8秒に設定しました。
絞りやISO感度は、その場の明るさや花火の明るさにもよります。一度撮影してみて決めてもいいかもしれません。あるいは、花火でなくて懐中電灯で試してみてもいいでしょう。
※花火で絵を描く撮影では、必ず前後に人がいないことを確認しましょう。強風時は火の粉が飛び散るので危険です。
ストロボなし、光源は街灯(水銀灯)と花火だけだとこんな感じです。いたって普通に撮影できました。
光跡にトライしたカットです。ストロボを使わずに撮影すると、花火の光跡は写りますが、人物はブレてはっきり写りません。遊びながらいろんな表現を試してみましょう。
花火は夜の撮影になるのでちょっと難しく感じるかもしれませんが、目で見るのとは違った映像になるので、とても楽しい被写体の一つです。
花火自体の光を生かしたいですが、暗い場所ではピントが合いにくかったり、ブレやすくなったりします。どんな花火写真を撮るのかをあらかじめイメージして、それに適したカメラ設定にすることが上手に撮るコツです。
わざとスローシャッターになるようにISO感度を低くして、三脚を併用しながら光跡を生かすのか、それともISO感度を高くして、速いシャッター速度で手持ち撮影をするのかなど、いろいろな表現を試して自分らしい花火写真を撮ってみてください。
花火は、夏の夜の代表的なイメージ。誰もが一度は挑戦したい被写体のひとつではないでしょうか。でも、センスよく撮るには……? 打ち上げ花火を見上げるような打ち上げ会場に近い場所から撮るのも楽しいですが、花火会場や花火を楽しむ街の人々の気配も写してみたいと思い、花火を俯瞰気味に見おろせる場所から撮ってみました。川面に反映する花火の色、街の灯りまで写し込んで表現しています。