川合麻紀(写真家・EOS学園講師) プロフィール
みなさんこんにちは! 写真家・川合麻紀です。「センスアップ! 写真のキメ手は表現力」は、いまが旬のモチーフを題材に、表現力アップを目指していくレッスンページです。第1回では、これからの季節楽しめるお花の撮り方を紹介しましょう。春の花々のページでは、お花撮影で多くの方が好きな、花を大きくとらえたタイプの写真、花風景のページでは、広がりのある風景的な花撮影のコツをお話しします。では、始めましょう。
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS 5D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM(焦点距離:16mm)・絞り優先AE(F16・1/90 秒)・+1.5 補正・ISO200・WB 太陽光・ピクチャースタイル:風景
ネモフィラ風景のバリエーション
EOS 5D Mark III・EF16-35mm F2.8L II USM(焦点距離:35mm)・絞り優先AE(F4・1/3000 秒)・+2 補正・ISO400・WB 太陽光・ピクチャースタイル:風景
広角ズームレンズの35mm 側で撮影しています。冒頭のネモフィラの写真とは違って遠くにピントを合わせ、絞りを開けて(F4)で手前にある花をぼかしてみました。
遠くだけで画面を作ってピントを合わせると、花は点になり葉っぱの緑も目立ち、花のボリューム感が出ないので、「前ボケ」を入れることで花がたくさんあるというイメージに仕上げています。
EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM(焦点距離:105mm)・絞り優先AE(F4・1/750 秒)・+2 補正・ISO200・WB 太陽光・ピクチャースタイル:風景
全体が青い印象もすてきですが、菜の花の黄色を画面半分に入れることで、お互いの色を目立たせる効果が出ます(青と黄色は色相環のほぼ反対側にある「補色」の関係)。奥のネモフィラとは距離が離れた前景の菜の花を、花の形がある程度わかるような感じで「前ボケ」として入れて撮りました。
この季節に撮りたい花風景
EOS 5D Mark III・EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM(焦点距離:15mm)(焦点距離:15mm)・絞り優先AE(F16・1/6 秒)・+2.5 補正・ISO800・WB オート(WB 補正B+4)・ピクチャースタイル:風景・撮影場所:あしかがフラワーパーク
柵で前に行けない、人で後ろに下がれない状態で、広い範囲の藤棚を撮りたいときに広角レンズは適しています。この写真は広角レンズのなかでも少し特殊な、魚眼レンズ(フィッシュアイ)を使って撮影しています。フィッシュアイレンズは180度の範囲が写りますが、カメラの傾きによって水平線が丸く歪みます。少し見上げて撮影することで、藤の花が空から降ってきたような印象になりました。
EOS 5D Mark III・EF17-40mm F4L USM・絞り優先AE(F4・1/1500 秒)・+1.5 補正・ISO400・WB 太陽光・ピクチャースタイル:風景
じつはチューリップの咲きがいまいちでした。「丘の一面にチューリップ!」というには花の密集感が足りないため、花よりも低いアングルで撮影。遠くの風車にピントを合わせ、開放F4 で撮影することで、手前のチューリップを大きめにぼかしています。ここにボケを入れたのは、ピントが合う位置にたくさんいた見物客を隠すため。ただ、あまりにぼかすとお花の種類がわかりにくいので、花との距離感を調整することで「チューリップのボケ」とわかるようにしています。
花自体の魅力は、アップで撮るほうがわかりやすいかもしれませんが、花を含めた環境も画面に写し込めば「花風景」としての魅力を表現できます。どこへ行ったか、どこで撮影したのかわかるタイプの花写真も撮っておきましょう。
広角系のレンズで広い景色として撮影するときには、花に近づいて撮影してみると遠近感を演出できます。また、望遠系のレンズでも、距離と構図の工夫によって広い景色を撮影することができますし、ボケを生かすことができます。
限りなく続くブルー、花も空も一体になった青。誰もが憧れるシーンだと思います。広がりやスケール感を出すには広角系のレンズがおすすめです。広角レンズは広い範囲が写せるレンズです。手前にある花にかなり寄った状態で撮影することで、手前にある花は大きく、背景は広い景色として表現できます。
ピントは手前の花に合わせ、絞りは絞って成り行きで遠景までピントがくるようにしています。
画面の中に近距離のものと遠距離のものを混在させると、広角レンズの特徴である遠近感(パースペクティブ)を出すことができますが、遠くにあるものは小さく写るので、人物がたくさんいてもほとんど気にならなくなります。むしろ人物がいることでスケール感が出せるでしょう。