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センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

春を告げる花々の表現

写真家・川合麻紀先生

今回は、真冬の時期を想定して「太陽」と「早春の花」を取り上げてみました。冬は撮るものがないと感じている方は、太陽や空を被写体にしてみてはいかがでしょう。冬は空気が澄んで空がきれいなので、空、太陽、星などの撮影に適しています。
1月、2月と寒い日が続きますが、間違いなく春が近づいてきています。この時期にだけ楽しめる早春の花も撮り逃さないように、お出かけしましょう。

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

早春の花々をカラフルに

早春の花々をカラフルに

EOS 7D Mark II・EF70-200mm F4L IS USM・絞り優先AE(F4・1/125秒)・+1 2/3補正・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:オート

水仙、チューリップ、桜草……。温室にさまざまな花が植えられていました。色とりどりで春らしい、パステルトーンの色彩。私はカラフルな画面づくりが好きなので、花畑や寄せ植えなど、色が違うものが混在する場所をよく探します。
手前にチューリップを少しだけ入れて、その奥の水仙を主役にしてピントを合わせました。奥にはチューリップ、さらに奥には玉ボケも入りました。温室の中の寄せ植えで、それぞれの距離が近かったため、前ボケもかなり花の形が目立ちます。避けて撮る方法もありますが、今回は彩りを優先し、あえてチューリップをそのまま前ボケとして使っています。かなりラフな構図で雑然としてはいますが、かわいらしい雰囲気が出せました。

こんなふうにも撮ってみよう

早春の花々の撮り方バリエーション

明るい春らしさを出すなら大胆なプラス補正

明るい春らしさを出すなら大胆なプラス補正

EOS 7D Mark II・EF70-200mm F4L IS USM・絞り優先AE(F4・1/125秒)・+2 2/3補正・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:オート

1枚目と同じ場所で撮影。これは水仙を目立たせようと考えながら花選びしました。逆光になるようなカメラポジションで、水仙がリズミカルに見える高さの違う3本を探しました。カメラの位置はかなり低いところから、少し見上げるようにして水仙を目立たせています。画面のかなりの部分が水仙色になり、春っぽいイメージになりました。逆光で明るい黄色の面積が多い画面なので、かなり大胆な露出補正(+2 2/3)が必要でした。

チューリップの「密集感」を表現できるカメラアングルを探る

チューリップの「密集感」を表現するならカメラアングルを探ろう

EOS 7D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・絞り優先AE(F5.6・1/250秒)・+1補正・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

チューリップは関東地方で4月ごろが見ごろのお花ですが、ウインターチューリップは真冬の1〜2月でも楽しめます。 チューリップの撮影方法はいろいろ考えられます。たくさん咲いているイメージと、リズム感、彩り豊かな表現を考えました。花を撮るときには「花の高さ」から撮ることが多いと思いますが、ちょっとした高さやアングルで印象が変わりますので、高さをいろいろ変化させながら構図をつくってみましょう。
この写真では、画面をチューリップで埋めるために、低いところで咲いているチューリップを主役に選び、手前にある背の高いチューリップの花の下からのぞき込むようなアングルで撮影しました。そうすることで、主役の上部にも花が並び密集感が表現できます。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

画面いっぱいに「梅」の花を写し出して早春らしさを表現

画面いっぱいに「梅」の花を写し出して早春らしさを表現

EOS 7D Mark II・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・絞り優先AE(F5.6・1/125秒)・+2補正・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

早春を代表する花の一つといえば梅です。梅の花は可憐できれいですが、撮影するには少々工夫が必要です。小さいお花ですので、マクロレンズでの撮影が基本です。最近はマクロレンズではなくても、最短撮影距離が短く設計されているレンズが増えて、被写体に寄った写真が撮りやすくなりました。しかし、「等倍」で撮れるマクロレンズは別格です。
まずは寄れるだけ寄ってみると、普段目に見えない世界を楽しむことができます。今回は、一度寄ってから少しずつ引いて、梅の花のネックレスのようなカーブを生かして構図をつくってみました。枝を枝先から見ることで、同じ枝の花の中で距離感が出て、手前にも奥にもボケをつくることができます。

軽量・コンパクト、LEDライト付き!
おすすめのマクロレンズ2本

軽快に花のマクロ撮影を楽しみたいなら、小さめのマクロレンズがおすすめです。APS-C センサーサイズの一眼レフ(EOS KissシリーズやEOS 80Dなど)をお持ちならEF-S35mm F2.8 マクロ IS STMはいかがでしょう。
このレンズは、等倍撮影のとき30mmまで被写体に迫れます(EF-S 35mm F2.8 マクロ IS STMは、最短焦点距離130mm、レンズ先端から30mmまで被写体に近づいて撮影できます)。
また、レンズの先端にLEDライトが内蔵されているので、影を出さずに花の細部を撮影可能です。
さらにコンパクトなカメラでマクロ撮影を楽しみたいなら、ミラーレスカメラEOS MシリーズにEF-M28mm F3.5 マクロ IS STMという組み合わせもいいでしょう。ミラーレスカメラにマクロレンズのセットで、本格的なマクロ撮影ができます。

EF-M28mm F3.5 マクロ IS STMで撮影したビオラ

EF-M28mm F3.5 マクロ IS STMで撮影したビオラ。 ほぼ等倍での撮影です(使用カメラはEOS M5)。

樹形の美しい木を選び、花のある風景写真として表現

樹形の美しい木を選び、花のある風景写真として

EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F16・1/60秒)・ISO400・ホワイトバランス:オート・ホワイトバランス補正(B5, M4)・ピクチャースタイル:ポートレート

草花ではなく木に咲く花は、樹形を生かしながら撮るとよいでしょう。その際、選ぶのは花というよりは樹形が美しい木です。「花のある風景」としてきれいに写すには、昼過ぎの順光の光を選びます。PLフィルターの併用も効果的です。すっきり抜けたような空や色彩で、早春らしい空気感を演出できます。
背景には富士山を配置してみました。下には人々が歩いていたので、スナップとして撮るならそのまま人を配しながら、人を入れるのが嫌なら下をカットして上部分だけで構図をつくりましょう。

ポイントまとめ

  • 花色や花の種類が混在したところをねらうと華やかに!
  • 花よりも低い位置から撮影すれば画面が花でいっぱいに
  • 木に咲く花はマクロレンズで寄るか全体の樹形を生かす

12月くらいから場所によって水仙が咲き始めます。年末からの数カ月間はもっとも寒い時期なので、早春の花を撮る気分になりにくいかもしれません。でも、可憐で清楚な花が多いので、ぜひ撮りに出かけてみてください。
この時期、木々に咲く花も多いのですが、枝が邪魔になって撮りにくく感じると思います。うまくいかないと感じる方は、マクロレンズで花だけをねらうか、あるいは樹形そのものを生かすと簡単に撮影できます。試してみてください。

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ありがとうございました。

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