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センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

秋を感じるコスモスの写真表現

写真家・川合麻紀先生

気候はすっかり秋の気配。お住まいの地域の気候によっては、まだ秋をイメージしにくいかもしれませんが、秋の気配を早めに察知しないと、繊細な季節の変化を撮り逃してしまうこともあります。今回は、秋を代表するコスモスの花と、小さな秋の実りを取り上げてみます。気分を秋モードに切り替えて、写真を楽しみましょう。

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

グラデーションで花色を豊かに

グラデーションで花色を豊かに

EOS 5D Mark III・EF300mm F4L USM・EXTENDER EF1.4×III・絞り優先AE(F5.6・1/500秒)・+1補正・ISO400・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

一面ピンクのコスモスの花畑。「たくさんの花が咲いているお花畑」というイメージにしたかったので、少し遠くにある花々を「主役」に選んで、前後にも花が密集しているイメージにしました。
柔らかいイメージで撮りたい場合は、光が拡散している曇りの日のほうがいいでしょう。でも、この日は晴れの日で、なおかつ夕方に近い時間に出かけたので、太陽の位置が低く、光の濃淡が出やすい状況でした。実際の花色の変化に光の陰影が加わって、ピンクのグラデーションが複雑に表現できました。
このコスモスのように同じ種類の花がたくさん植えられている花畑では、花の高さが均一になり絵作りが難しいので、傾斜がある場所を探すとよいでしょう。丘の起伏を利用し、背景に奥の低い場所を選ぶことで、手前の花が背景から浮き上がりました。

こんなふうにも撮ってみよう

コスモスの花の撮り方バリエーション

キラキラした丸ボケで
「光が遊んでいる」イメージをねらう

キラキラした丸ボケで「光が遊んでいる」イメージをねらう

EOS M・EF300mm F4L USM・絞り優先AE(F4・1/320秒)・+1 1/3補正・ISO400・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

これはどちらかといえば背景ありきの作品です。「キラキラした光が遊んでいるような感じで撮りたい」という気持ちが先にあり、そんなふうに見える場所を探しています。
難しいのは、背景(光)と主役(コスモス)を同時に探せるかどうかです。キラキラと「丸ボケ」になるのは、木漏れ日や、葉っぱが光を反射しているようなところです。まずは見回して肉眼で探すのですが、同時に主役になりそうな花も探します。背景をぼかすことが前提なので、レンズは300mmの望遠レンズをチョイス、絞りは開放F4で撮りました。
丸ボケは写真の中で主張が強いモチーフなので、ときには主役の花より目立つこともあります。そこで、花には重ならないように配慮して構図をつくっています。

画面全体をコスモスのピンク色で
埋め尽くしてみたい

画面全体をコスモスのピンク色で埋め尽くしてみたい

EOS 5D Mark III・EF300mm F4L USM・EXTENDER EF1.4×III・絞り優先AE(F5.6・1/1000秒)・+1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

この写真は1枚目と同じように、ピンクのイメージを全面に出したいと思いながら撮ったものです。1枚目と違うのは、近距離の花を主役に選ぶことで比較的大きめにし、前後は大きくぼかしたこと。主役がわかりやすい写真になりました。
また、雲が太陽を隠したタイミングで撮影し、全体的に同じ光、色にしました。この場合、主役の花が背景に埋もれてしまわないように、花の背景には少しだけですがグリーンの部分に重なるように意識しています。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

コスモスで表現する早まる
秋の夕暮れの感傷

コスモスで表現する早まる秋の夕暮れの感傷

EOS 5D・EF16-35mm F2.8L USM・絞り優先AE(F8・1/250秒)・+2補正・ISO100・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

午後3時過ぎ。この季節ですとやや日が傾き、夕方のイメージになります。「そろそろおうちに帰ろうか」という時間や光の雰囲気を出したいと思い、かなりの逆光でねらってみました。どんな被写体でも、ドラマチックに撮ろうとしたら、逆光やスポット光など、極端な光を使うといいですよ。その場合は、露出補正をお忘れなく。この写真の場合は、プラス2の露出補正です。
画面に太陽を入れていますが、花びらの隙間から太陽がチラッとのぞく位置で撮れるよう、手持ちで何枚も撮影した中から選びました。この写真は、背景の広がりが欲しかったのでズームレンズの広角側でお花に寄って撮影しました。

どうするの? 
逆光時の「露出補正」のポイント

写真のイメージを変化させる要素として、「露出補正」はとても重要です。今回は撮影時にプラス2補正していますが、たとえば1段違いでどう見えるか、マイナス1、±0(補正なし)、プラス1、プラス2、プラス3の写真をRAW現像で作ってみました。
この5枚の写真、どれがお好きでしょうか? きっと好みは人それぞれだと思います。どの写真も、作品として大丈夫な明るさだと思います。明るい写真は、かわいらしい印象、暗い写真はかっこいい印象に。写真は「見たままの明るさ」である必要はないので、どんな印象を見る人に与えたいのか考えながら露出補正をしてみるといいでしょう。

+3補正

+3補正

+2補正

+2補正

+1補正

+1補正

±0(補正なし)

±0(補正なし)

-1補正

-1補正

「花の形や色」だけから一歩進んだ
コスモスの表現

「花の形や色」だけから一歩進んだコスモスの表現

EOS M・EF300mm F4L USM・EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM・絞り優先AE(F16・1/1250秒)・-2/3補正・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

コスモスというと花の部分にだけ注目しがちですが、独特の茎や葉の形状も絵になります。枝や茎は邪魔だと思って撮影時に構図を整理しようとすると、花の部分だけを撮るようになり写真が単調になってしまいます。
「あえて茎や枝の形状をそのまま撮ってみよう」というわけで、空に抜けるような場所を選び、広めの構図で撮っています。逆光なので、そのまま撮影してもアンダーになりますが、露出補正で少しマイナス補正し、花や茎の姿がシルエットになるようにしました。

ポイントまとめ

  • 遠くに咲いている花を主役に「花畑の密集感」を出す
  • 背景の「丸ボケ」がきれいな場所を見つけてから主役の花を探す
  • 「逆光」を味方につけて写真の表現を広げる

コスモスは、いろいろなイメージで撮れるお花だと思います。背景にすてきな風景があれば「風景としてのコスモス」もいいですし、花畑なら全体や、主役を限定することで絵柄のバリエーションが出せます。
コスモスは漢字で「秋桜」と書くとおり秋のお花。日が傾くのが早い秋らしく、少し傾いた太陽の光で撮るのが私は好きです。
いろいろな時間や天気、明るさで撮って、自分なりの「コスモスフォト」をつくりあげてみましょう。

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ありがとうございました。

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