ホーム > 色づく水辺を絵画的に表現

センスアップ!
写真のキメ手は表現力

講師 : 川合麻紀 (写真家・EOS学園講師)>プロフィール

色づく水辺を絵画的に表現

写真家・川合麻紀先生

今回は秋のイメージから、色づく水面とススキを取り上げてみます。景勝地での紅葉の風景は誰が見てもすてきですので、まずはそれをきっちり撮影しましょう。その後、ディテール(全体の中の細かい部分)の魅力を発見できれば、写真のバリエーションが広がります。

写真家・川合麻紀先生

川合麻紀

彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

写真で絵を描くように撮る

写真で絵を描くように撮る

EOS 5D Mark III・EF70-200mm F4L IS USM・絞り優先AE(F5.6・1/10秒)・+1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

写真にはいろんな側面があると思いますが、私は「写真で絵を描きたい」と思っています。見たままの景色を切りとるだけではなく、そこから何かを作り出していくイメージです。
葉っぱが沈んだ水面を見ていたとき「揺らぎ」を表現したいと思いました。水面と落ちた葉の撮影にはさまざまな表現方法がありますが、このときは水をトロッとした質感にしてみました。
水辺を撮るときはPLフィルターを強く利かせて、水面反射を抑えることが多いです。でもこの写真では、わざと水面に空の色が反映した状態にして、ほんの少しだけスローシャッターにしています。

こんなふうにも撮ってみよう

色づく水辺の撮り方バリエーション

着物の柄を思わせる情景を
ストレートに写しとる

着物の柄を思わせる情景をストレートに写しとる

EOS 7D・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F8・1/8秒)・-1補正・ISO800・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

このときの水面は、色づいたモミジの葉と落ちた松葉で彩られていました。まるで着物の柄を連想させる美しい一枚の絵のようでしたので、なるべくその印象そのままのストレートな表現にしました。
歪みのない自然な描写にしたいので50mm(フルサイズ換算)程度の画角を選び、全体にピントが合うように絞りはF8に設定。反映した青空の色を生かすためPLフィルターを少しだけ利かせています。

水面のゆったりした動きを
スローシャッターで表現

水面のゆったりした動きをスローシャッターで表現

EOS 5D Mark II・EF70-200mm F4L IS USM・絞り優先AE(F11・2秒)・-1/2補正・ISO100・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

池の水面を見ていると、ゆるゆると動く場所がありました。その「動き」を写真にしてみようと思いました。こうした表現は、見たままの状態と写真がかなり違うので、現場を見たとき瞬時にイメージできないかもしれません。でも、ゆっくりした水流が起きている場所さえ見つかれば、春なら桜の花びらでも応用できる表現です。
動きを表現するために三脚を使い、2秒のスローシャッターで撮影。水面の反射を抑えるためにPLフィルターを使っています。また、RAW現像時に黒を引き締めるためコントラストの「シャドー」を-3にしています。

こんな表現にもトライ!

さらなるセンスアップを目指して

曇り日のフラットな光で紅葉風景を
絵画的に描く

曇り日のフラットな光で紅葉風景を絵画的に描く

EOS 7D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM・絞り優先AE(F16・1.5秒)・+1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:日陰・ホワイトバランス補正:A9, M9・ピクチャースタイル:風景

もやもやとすっきりしない天候。曇りの日は紅葉の色が冴えないので、観光客はがっかりしているようでした。写真を撮るにしても光がないと、ドラマチックにはなりにくいですね。
でも、曇りの日は、私が撮りたいと思っている「絵画的な写真」にはちょうどいい天気です。というのも、曇りの日は陰影が強く出ないフラットな光なので、立体感が抑えられ二次元的になるからです。
湖面に反映した紅葉の風景が、もやに包まれていました。そのまま撮ると白っぽい景色になるのですが、紅葉の色をイメージしてホワイトバランスは「日陰」に、さらに、ホワイトバランス補正により色を加えています。

水の反映を利用して画面全体を
色鮮やかに表現

水の反映を利用して画面全体を色鮮やかに表現

EOS 7D・EF70-200mm F4L IS USM・絞り優先AE(F5.6・1/350秒)・-1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

秋の撮影では、紅葉の鮮やかな色を借りて絵をつくることがよくあります。この写真では、画面を真っ赤に染めたくて、紅葉が映っている部分を多めに構図をつくりました。
これで「舞台」は整いましたので、あとは「主役」になるものを探しました。水鳥がたくさんいたので、画面に入ってくるのを待って撮影しました。

この風景を見て、私が現場で考えたこと

美しい風景に出会ったとき、感じたままに撮るのは楽しいですが、現場でじっくり練り上げるプロセスも大切にしましょう。
水鳥の写真を撮ったとき、この日は青空が見えていたので、まずは池全体を押さえました(上の写真)。いわゆる「定番カット」です。その後、自分が好きな「彩りが華やかな写真」にするには、どこを切り撮ろうかと考えながら周囲を見わたし、池の向こう側の紅葉の映り込みを絵にしようと考えました。この場の状況を伝えるような周囲の景色は極力減らし、水面の面積を大きく増やすことで紅葉の赤の印象が強い写真になりました。
画面を大きく占める色は、写真を見たときの印象と直接結びきます。構図をつくるときに色を意識してみるといいでしょう。

作品例

ポイントまとめ

  • ぶらす、止める、ぼかすなど多様な表現を探る
  • 印象的な色彩に注目して、思い切った構図でねらう
  • ホワイトバランスによる「色づけ」で印象を変える

水面は魅力的な被写体のひとつです。風景や空の反射、水の中の様子、風や流れによる動きなど、いろいろな要素が相まって、同じ場所でもまったく同じになることがありません。ピントの位置や被写界深度シャッタースピードなどの組み合わせで、無限にイメージをつくり出すことができます。

この記事は気に入りましたか?

ありがとうございました。

バックナンバーはこちら