川合麻紀(写真家・EOS学園講師) プロフィール
みなさんこんにちは! 写真家・川合麻紀です。「センスアップ! 写真のキメ手は表現力」は、いまが旬のモチーフを題材に、表現力アップを目指していくレッスンページです。第3回は雨の季節の被写体、「アジサイ」と「雨風景」へのアプローチです。天気が悪いとなんとなく出かけたくなくなりますよね。でも、雨ならではのシーンや、結果的にむしろ雨だからすてきと思えるものなど魅力的な被写体がたくさんあります。人が撮らないときに撮るほうがオリジナリティーのある写真もできあがりやすいですので、ちょっと頑張ってみませんか?カメラは精密機器なので、しっかり雨対策をして出かけましょう。
では、始めましょう!
彩り写真家。さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる。女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto主宰。EOS学園、クラブツーリズム、TVなどでの講師実績、展示会での発表多数。書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。
EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM(焦点距離:100mm)・絞り優先AE(F4・1/350秒)・+2 1/2補正・ISO400・WB:オート(WB補正:B4, G2)・ピクチャースタイル:風景
アジサイの撮り方バリエーション
EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM(焦点距離:100mm)・絞り優先AE(F4・1/350秒)・+2補正・ISO400・WB:オート(WB補正:B2, G2)・ピクチャースタイル:風景
お花の撮影では、同じ種類の花ばかりだと同じような印象の写真になりがちです。そこで、お花をいろいろなアングルで観察し、少しでも心が動いたら撮影してみましょう。アジサイは比較的背が低いので、普段はあまり見上げることはありません。そこでカメラを低い位置から(ローアングルで)構えると、新鮮な印象の写真になります。このときはアジサイの花の形がまるで空に飛び立つように見えたので、「空に抜くような構図」にしてみました。「空に抜く」というのは、空を背景に花などの被写体を型抜きしたように見せる撮り方です。
もっと広角のレンズを使って空の広がりを表現しつつ、たくさんの花々を仰ぎ見て撮影してみても面白いと思います。空に抜く構図の場合、思い切ったプラス側の露出補正(明るくする)が必要になることが多いです。
EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM(焦点距離:100mm)・絞り優先AE(F4・1/90秒)・+1 1/2補正・ISO400・WB:オート(WB補正:B2, G2)・ピクチャースタイル:風景
アジサイの一部分だけで構図をつくるメリットは、「花色」だけで画面構成できることです。アジサイの花は、花びらのように見えるところが「ガク(装飾花)」と呼ばれる部分です。このガクに囲まれた小さな中心部分をクローズアップするイメージで寄ってみます。
この写真では、カメラと花がほぼ平行になるように構え、装飾花が密集している感じが出るように画面全体が面になるイメージで撮影してみました。
さらなるセンスアップを目指して
EOS Kiss X7・EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM(焦点距離:16mm ※フルサイズ換算)・絞り優先AE(F16・1/15秒)・-1補正・ISO400・WB:オート(WB補正:B2, G2)・ピクチャースタイル:ポートレート
お花を撮るとき、記録性を考えて必ずどこで撮影したかわかる風景的なカットを撮るように心がけています。
この写真は、超広角ズームレンズの広角側で、手前から奥まで画面全体にピントが合うように、「絞り」をF16まで絞って撮影しました。風景の「奥行き感」を出すには、ある程度近いところと遠いところと距離感が違うものを画面に混在させるといいですよ。手前のアジサイは大きく、奥は見た目よりも小さくなるので、より風景写真らしい奥行き感の表現になります。
EOS 50D・EF70-200mm F4L IS USM(焦点距離:176mm ※フルサイズ換算)・絞り優先AE(F4・1/100秒)・+2/3補正・ISO640・WB:オート・ピクチャースタイル:風景
一輪の花を目立たせるときには、実際のお花も1つが独立しているものを選びます。また、前にも後ろにもほかの花がない(あったとしても距離が離れている)ものを選びます。
この日は、雨が降っていて、お花や葉が濡れてしっとりしていました。雨の日は強い光のコントラストがないので、優しい印象で撮れます。ただ、くもり空は白いので葉っぱにその白が反射して白っぽくなりやすいので、「PLフィルター」を使って余分な反射を抑え、色を出すようにしています。
お花よりも少し明るく光が当たっている背景を選んでいるのは、爽やかな背景色にする工夫です。太陽が出ていなくても、上に木があったりなかったりなどで変わる「明るさの差」を見極めることが大事です。
アジサイは花の形状や色、植わっている場所などからも、バリエーション的には撮りにくい花と言えます。今回ご覧いただいた最初の3枚は、同じレンズを使ったバリエーションでした。表現方法を変えてアプローチすることで、それぞれ印象の違う撮り方ができたと思います。いかがでしたか?
私は個人的に、天気の日に花を撮るのが好きなのですが、この時期の花だけは「雨やくもりのほうが似合うなぁ」と思います。直射日光が花に当たっていると、カサカサした印象になりやすいので、天気の日だとしても直射日光は避けたほうがいい気がします。できれば雨の日に、それがたいへんなら雨上がりに撮影に出かけると、しっとりとすてきに仕上がるのではないでしょうか。
ブルーやパープルなど寒色系の色が多いアジサイには、その色から「涼やか」「神秘的」、色が変化することから「移ろいやすい心」といったイメージがあります。そんな印象を感じさせられるよう、全体をしっかりではなく、花の一部分をちらっと見せる感じで画面構成してみました。全部が見えないほうが、意味ありげに見えますし、「ちらっと感」で色香を感じさせられるかも?
アジサイは比較的密集して植えられていることが多いので、奥に咲いている花を主役にして、マクロレンズを使って花々のすき間をのぞき込むように「前ボケ」で囲んでみました。
前回の記事でもホワイトバランスの調整により青色を強調しましたが、ここでもややブルーやグリーンが強調されるようにホワイトバランスを調整しています。