写真・プロの一手 第25回 - 超望遠レンズでとらえた「湖面を渡る風」。プロがあえて「手持ち」で撮った理由とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

GOTO AKI

1972年、神奈川県生まれ。上智大学経済学部経営学科。東京綜合写真専門学校第二芸術科卒業。1993年の世界一周の旅から50カ国以上を巡る。静謐な広がりのある世界観が特徴の風景写真家。2010年以降、日本の火山地帯をモチーフにした作品集『LAND ESCAPES』シリーズを発表。2015年版キヤノンカレンダーの撮影を担当し、第66回全国カレンダー展商工会議所会頭賞を受賞。EOS学園東京校講師。

超望遠レンズでとらえた「湖面を渡る風」。
プロがあえて「手持ち」で撮った理由とは?

超望遠レンズでとらえた「湖面を渡る風」。プロがあえて「手持ち」で撮った理由とは? ©GOTO AKI

EOS 5D Mark III・EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×(焦点距離:303mm)・絞り優先AE(F8・1/320秒)・ISO400

観光地でも皆さんのご近所でも美しい風景写真を撮ることができます。この作品の撮影地は、鹿児島県の大浪池(おおなみのいけ)。標高1241mの高地にある、かつては火口だった場所です。
私が風景写真の撮影で大事にしているのは、「場所を撮ること」ではなく、「そのとき限りの表情を撮ること」です。このときは、風が吹いて緑の湖面がさざ波立つ一瞬を撮りました。
この作品では、重さ約3.6kgの超望遠レンズを使っています。普通は三脚を使うところですが、あえて「手持ち」で撮影した理由とは?

プロの一手、その答えは・・・

Answer変化し続ける風景に反応して、
最高の一瞬を切りとるため。

超望遠ズームレンズであろうと
「手持ち」で風景の表情をねらう。
この作品の第1のポイントは「風」です。湖面を観察していると、風に吹かれてさざ波立っている場所と、鏡のような凪(なぎ)の場所が不規則に変化しています。湖面の様子を観察していると、どこに風が吹くかは予測不可能でした。三脚を立てて待ち構えていても撮れないので、カメラは手持ちで撮影します。EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×(質量3.62kg)のような超望遠ズームレンズでも手持ち撮影することで、変化し続ける湖面の表情の変化に反応して切りとることができるのです。
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ブレにくいシャッタースピードは
「レンズの焦点距離分の1秒」を目安に!

第2のポイントは、シャッタースピードです。撮影中は被写体に集中するので、焦点距離を細かくは確認せず、だいたい焦点距離約300mm前後と把握して、シャッタースピードをチェックします。手ブレしないシャッタースピードの目安は、使用レンズの焦点距離から求めることができます。「1/焦点距離」秒と覚えておきましょう。
この作品の焦点距離は約300mm。ですから1/320秒は、手ブレの心配がないシャッタースピードと判断できます。とくに手ブレが目立ちやすい望遠レンズのときに思い出すといいでしょう。

第3のポイントは、光の判断と映り込みの描写です。風景写真では、水面の反射を除去したり、コントラストを上げて色彩の描写を鮮やかにしたりするPLフィルターを使う方が多いでしょう。でも、この作品では、PLフィルターは使わず、湖面の反射をそのまま利用して撮影しています。
その理由は、斜光で映り込みの木々が立体的に写ることで、風で生まれた湖面の線と映り込みの木々が重層的に描写され、作品に奥行きと空間が生まれるためです。PLフィルターは常時付けるのではなく、表現意図に応じて使うようにしましょう。

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コラム
その場で見ている風景よりも、撮影した写真のほうが美しい。それが写真で表現する大事な理由だと考えています。ですから、その場所がどのような場所であるかを説明する写真より、撮影者にその風景がどのように見えたのかを伝える写真であることのほうが大事です。有名スポットなどにこだわらず、自由な視点で風景を撮影してみましょう。