写真・プロの一手 第21回 - 水の「メタリック感」を表現するコツとは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

GOTO AKI

1972年、神奈川県生まれ。上智大学経済学部経営学科、東京綜合写真専門学校第二芸術科卒業。1993年の世界一周の旅から56カ国を巡る。2015年版キヤノンカレンダーの撮影を担当し、第66回全国カレンダー展商工会議所会頭賞を受賞。2019年1/19~3/4まで、キヤノンギャラリーSにて、個展「terra」を開催中。新作写真集「terra」も同時発売。EOS学園東京校講師。

水の「メタリック感」を表現するコツとは?

水の「メタリック感」を表現するコツとは? ©GOTO AKI

EOS 6D・EF24-70mm F4L IS USM(焦点距離:70mm)・ISO1600

良い作品とは、見たままの風景を説明するのではなく、写真に撮るからこそ面白いと思える作品のことだと常々思っています。目に見えている状態と写真は別の世界。そう思うと、風景の観察にも熱が入るというもの。この写真は、渓谷の急流に光が差し込み、水面が輝き始めた状況を見つけて撮影しました。被写体を観察しながら、メタリックな物質感で撮りたいと思い、カメラの設定を変えてみました。
さて、この一枚はどのようなカメラ設定で撮ったでしょうか?

プロの一手、その答えは・・・

Answerシャッタースピード「1/2000秒」に設定

水の流れを静止させるなら
Tvモードで1/500秒以上が目安。
答えはシャッタースピードの設定です。撮影モードをシャッタースピード優先(Tv)モードで、1/2000秒という超高速に設定。水流をあたかも動いていない物質のようにピタッと静止して描写しました。
高速シャッターと呼べるシャッタースピードの目安は、1/500秒以上と覚えておきましょう。滝や川の流れを止めたいときだけでなく、強風のときに花を撮影したいとき、揺れる木々を静止して描写したいとき、新幹線の窓から富士山をピタッと止めて撮影したいときなど、覚えておくと便利な数値です。
川の流れといっても急流もあれば緩やかな流れもあるので、1/500秒でブレて写るときは、1/1000秒、1/2000秒と速いシャッタースピードを試しましょう。
モニター

モニターで映し出す写真を「正しい色」で見ていますか? 正しい色で写真を見るには、「カラーマッチング」に対応したモニターが必要です。以前に比べると導入はカンタン。「正しい色でプリントしたい!」という方にもぜひ読んでいただきたい記事です。

水の質感描写は「光」で決まる。
ローポジションで水に迫るのもコツ。
このような写真が撮りやすいのは、よく晴れている日です。太陽光が水面をきらめかせるので、水の質感を描写しやすいのです。
ここでポイントになるのがPLフィルターを使わないこと。風景写真愛好家の皆さんのなかには、水面の反射を除去するなどの目的で、PLフィルターを付けっぱなしにしている方がいます。でも、常時PLフィルターを付けていると、水の反射が抑えられ、水面の描写がフラットになります。光で水の質感を描きたいときは、PLフィルターを外して撮影しましょう。
さらに、カメラ位置を思い切って低く、ローポジションにしてねらうのもコツ。被写体である水面に近づくことで、水のダイナミックな動きと造形を強調した作品が撮りやすくなります。お使いのレンズの「最短撮影距離」を把握しておけば、グッと被写体に近寄った迫力のある作品が撮れるでしょう。
結露

厳しい寒さは、カメラやレンズにとっても過酷です! なかでもうっかりやってしまうのが「結露」。レンズが曇るだけではなく、結露による電子回路のショートや金属部品の腐食といったトラブルにつながる恐れが……。カメラ故障の原因にもなる結露の予防策をお届けする記事がこちらです。

コラム
肉眼では見えない世界を撮ることができる高速シャッター。モータースポーツを撮るような感覚で、高速連写で水面を写せば、目には見えなかった連続する水の表情がとらえられるはず。多くのカットの中から、水の造形が面白い作品や、美しいと感じるものを選びましょう。風景写真というとスローシャッターがよく使われますが、高速連写で一瞬を切りとることで生まれる写真もあるのです。水面の描写で、ぜひ試してみてください。