写真・プロの一手 第20回 - 舞い上がる雪煙の迫力を「最大化」するテクニックとは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

水谷たかひと

1968年、東京都生まれ。東京綜合写真専門学校卒業後、渡仏。モータースポーツ、ウインタースポーツ、サッカー、ラグビーなどを中心に取材活動を続け帰国。拠点を日本に移しスポーツイベントを追い続ける。2012年、キヤノン イーグルスのオフィシャルフォトグラファーに就任。EOS学園東京校講師。

舞い上がる雪煙の迫力を「最大化」するテクニックとは?

舞い上がる雪煙の迫力を「最大化」するテクニックとは? ©TAKAHITO MIZUTANI

EOS-1D X Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM(焦点距離:214mm)・F5.6・1/2000秒・ISO160・ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)・ピクチャースタイル:ユーザー設定(ピクチャースタイルエディターにて作成)

スノーボードやスキーなどのウインタースポーツは、自然を相手にする競技。サッカーやラグビーのように選手のプレー中心に切りとるのではなく、自然風景に被写体である選手を溶け込ませる絵づくりを心掛けます。風景写真へのアプローチに近い撮り方で、いつもとは違う視点のスポーツ写真にチャレンジできます。
この作品では、スノーボーダーの滑りだけではなく、巻き上げたパウダースノーが描き出すディテールまで表現したいと考えました。では、巻き上げた雪煙の迫力を最大化して描写するために、私が選択したカメラ設定とは?

  • ● 微妙に露出オーバー
  • ● 極端な露出アンダー
  • ● 日中シンクロ

プロの一手、その答えは・・・

Answer極端な露出アンダー

意図的に「逆光」を選んだ場合は、
極端な露出アンダーを試す!
快晴の朝、極上のパウダースノーを滑走するスノーボーダー。舞い上がる雪の迫力、ディテールを描写するには順光ではなく「逆光」を選びます。順光の雪は真っ白にしか写りませんが、逆光によって雪煙のトーンや立体感が現れます。このとき重要なのは、「逆光での露出の決め方」。巻き上げる雪の迫力を表現するために私がチョイスしたのは、極端な露出アンダーです。
露出はマニュアルで設定していますが、「補正値」に置き換えればマイナス2〜3の思い切った補正となります。
逆光時に「適正露出」数値で撮ると、コントラストがないぼんやりした画像になります。被写体(スノーボーダー)をあえて黒くつぶしても構わないくらいアンダーに露出を設定するのです。舞い上がった雪に明暗差が出て、まるで渦を巻いているような描写になりました。
オーロラジャケット

ウインタースポーツや風景写真の撮影には、高品質なダウンジャケットを! Foxfire「オーロラジャケット」は、アウターシェルにゴアテックスを使用し、風雪、寒気をシャットアウト。単体での着用も可能なライナーのダウンジャケットはフーデッドタイプで、しっかりとフィットし、身体を暖かく包み込みます。

冬のスポーツシーンで重要な
「シャッタースピード」の選択。
雪を写すときのもう1つのポイントは「シャッタースピード」です。速いシャッタースピードで撮ると、雪のディテールがはっきり描写できます。目安となるシャッタースピードは1/1000〜1/2000秒程度。今回の作品では1/2000秒に設定しています。朝一番のパウダースノーのゲレンデ滑走はワンチャンス。確実に被写体のスノーボーダーを止めて写し、雪煙もしっかり見せたかったのがその理由です。
遅めのシャッタースピード(1/250〜320秒程度)では、雪がぶれて尾を引いたような表現になるでしょう。さらに遅く(1/15〜30秒程度)すると、写っているのが雪なのか水なのかも判然としない、画面全体がぶれたような描写に。この効果を生かして幻想的なシーンを作り上げることもあります。表現意図に合ったシャッター速度を選択して、撮りたいイメージを追求しましょう。
円偏光フィルターPL-C B 58mm

白銀のゲレンデの背景に映えるのは、スカッと晴れ上がった青空ですよね。そんな写真撮影に欠かせないのがPLフィルター。雪煙や雪原のディテールの表現にも役立ちます。ご使用のレンズのフィルター径に合った商品をお選びください。

コラム
冬のフィールドで粘り強く撮影するために、防寒対策は重要です。しっかり着込むのはよいのですが、体の動きが制限されてしまうのはNGです。とくにカメラ操作をする手や指の防寒には気を使います。ズーミングやシャッターボタンを押す、設定の変更など、繊細な動きに対応できる手袋を着用しましょう。
私が愛用しているのは、ゴルフ用の革製グローブ(雨の日用の防水性があるもの)です。ゴルフグローブは通常、左手にはめるものなので、わざわざ右手用も購入します。マイナス20度の雪山でも革グローブですよ。はっきり言って寒いです(笑)。でも、指先の感覚は写真撮影の生命線。多少寒くても撮影に意識を集中させたいのです。