写真・プロの一手 第16回 - プロが教えるスポーツ撮影のコツ!「ピントを○○○に合わせる」とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

水谷たかひと

1968年、東京都生まれ。東京綜合写真専門学校卒業後、渡仏。モータースポーツ、ウインタースポーツ、サッカー、ラグビーなどを中心に取材活動を続け帰国。拠点を日本に移しスポーツイベントを追い続ける。2012年、キヤノン イーグルスのオフィシャルフォトグラファーに就任。EOS学園東京校講師。

プロが教えるスポーツ撮影のコツ!
「ピントを○○○に合わせる」とは?

プロが教えるスポーツ撮影のコツ!「ピントを○○○に合わせる」とは?

EOS-1D X Mark II・EF400mm F2.8L IS II USM・EXTENDER EF1.4×III(焦点距離:560mm)・F4・1/1000秒・ISO8000・ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)・ピクチャースタイル:ユーザー設定1(ピクチャースタイルエディターにて作成)

楕円形のボールを奪い合い、相手のゴールライン内にタッチ(トライ)するか、ペナルティゴールやドロップゴールなどで得点を競うラグビー。15人対15人で対戦し、ボディコンタクトが激しいスポーツです。15人の選手にはそれぞれポジションがあり、選手の個性やプレースタイルもさまざま。バリエーション豊富な写真が撮れるので、被写体として理想的。目まぐるしい試合展開から決定的な一瞬を切りとるのがラグビー撮影の楽しみです。
この作品は、スタンドオフというポジションの選手(キヤノン イーグルス・田村優選手)。日本では「指令塔」と呼ばれ、パス、ラン、キックなどの攻撃を選択していくプレーメイカーです。
撮影では激しくフィールドを走り回る選手に、正確にピントを合わせ続けることがポイント。さて、そのとき選手の「どこ」にピントを合わせるでしょうか? ※顔、目ではありません!

プロの一手、その答えは・・・

Answerピントは選手の
「上半身」あたりに合わせる!

AFフレームは中央1点を選択。
ピント合わせは選手の上半身あたりに!
縦横無尽に動き回るラグビーの選手たち。その動きは予測困難です。ですから、選手に寄ったカットの場合、顔にピントを合わせ続けることは、まず不可能です。では、どこにピントを合わせるのか。それは選手の上半身あたりです。
カメラ設定は、「AIサーボAF*」+「連続撮影」。AFエリアの選択は、基本的に真ん中1点に(測距エリア選択モードを「任意選択1点AF」にセット)。AFポイントから被写体の選手を外さないことに神経を集中します。動いている選手の胸の真ん中をねらって、シャッターボタンを半押しに、動きに合わせてホールドしたカメラを滑らかに動かし、選手の動きを追います。
面積が狭い顔や目をねらいすぎてAFポイントを外してしまうと「ピンボケ写真」が多くなりがち。面積が大きい上半身あたりをねらっていれば、AFポイントを外すことは少なくなります。「ピントを合わせ続けなくてはいけない!」という気持ちもラクになります。
動いている選手の顔や瞳にAFポイントで顔に確実にピントを合わせる「ホームラン」をねらうより、上半身あたりにピントが合っている「ヒット」を多くするのが上達のコツ。そうすれば顔へのピントが大きく外れた写真は確実に減るはずです。
どうしても「任意1点」のAFポイントで選手を追うのが難しいと感じたら、AFポイントを広げる「ゾーンAF」を活用することも一手です。
ピントが抜けないように被写体を追い続けることがスポーツ写真の基本。お子さんの運動会などでも応用できるテクニックですよ。

*AIサーボAF:ピントを合わせたい被写体にピントを合わせ、シャッターを半押ししている間は、ずっと被写体を追いかけてピントを合わせ続けてくれる機能。

ミラーレスカメラ「EOS R」

キヤノン初の35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ「EOS R」。有効画素数約3030万画素、最新の映像エンジン「DIGIC 8」の組み合わせで高画質かつ表現力豊かな撮影が可能に。そのインプレッションを水谷たかひと先生が語るページがこちら。「AFの食いつきがむちゃくちゃ速い」「超望遠レンズと組み合わせても軽い」「AFエリアが広いので画づくりで重宝する」など興味深いコメントが!

被写体ブレ、手ブレを抑えて!
シャッタースピードを上げて撮る。
スポーツ写真の鉄則その1は、きちんと被写体にピントを合わせること。鉄則その2は、手ブレ(カメラブレ)、被写体ブレしないように撮ること
「手ブレ」を抑えるには、手ブレ補正機構(IS)が効果的。「被写体ブレ」には、速いシャッタースピードで対応します。できるだけ速いシャッタースピードで、カチッとシャープに切りとりましょう。
スポーツシーンを写し止めるには、1/1000秒以上のシャッタースピードを確保します。フィルムの時代やデジタルカメラの初期は1/500秒以上といわれていましたが、カメラが高画素化した現在は、ほんのわずかなブレまで写ってしまうのです。
急なカメラ操作も控えましょう! 急にカメラを構える、急にレンズを大きく振るなどです。ピントが合わない、ブレにつながる行為ですので、つねにシャッターを切れる状態を保つよう準備しましょう。
速いシャッタースピードを得るために、ISO感度設定は日中や明るい場所では低感度100〜800ぐらいを常用し、ナイターや屋内などの暗い場所では高感度3200~6400ぐらいを常用します。今回のような暗いナイトゲームでは、8000以上をチョイスすることも。最近のEOSなら画質のクオリティ的に問題はありません。しかし、ISO感度を上げすぎるとノイズが発生しやすく画像劣化につながりますのでご注意を。
絞りはつねに開放。これもシャッタースピードをかせぐためです。
せっかく選手のいい表情や瞬間に出合えたとしても、設定のミスチョイスによるピンボケ、手ブレ、被写体ブレを起こしていたら台なしです。低速シャッターによるブラした写真表現は、しっかり止める技術を身に付けてからチャレンジしましょう。
「エクストリーム プロ」シリーズ

「連写(連続撮影)が基本となるスポーツ撮影では、画像を記録するメモリーカードは速くて容量が大きいものを使ってほしいです。私が愛用しているのは、サンディスクの『エクストリーム プロ』シリーズです」(水谷たかひと先生)。

コラム
スポーツ写真というと、超望遠レンズがないと始められないと思われがち。でも、200mmぐらいの望遠レンズでも楽しめます。本格的に始めるのであれば、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMはおすすめの一本。手持ち撮影でも負担の少ない小型・軽量なモデルなので、ラグビーの試合はもちろん、お子さんの運動会撮影などにも最適です。
私の場合、超望遠レンズを使うときもカメラは手持ちが基本。一脚で固定すると、上下左右への動きに制限が出てしまうためです。試合中はずっとファインダーをのぞき、被写体をAFポイントでしっかり追いかけ続けながら、シャッターチャンスを待ちます。カメラをしっかりホールドし、腰を支点にして上半身全体をスーッと滑らかに左右に振って被写体を追います。
エキサイティングなスポーツシーンですが、カメラマンは冷静でなければなりません。意識を集中して被写体を追い、いい瞬間にソフトタッチでシャッターボタンを押す。これも最高のスポーツシーンをとらえるコツです。