写真・プロの一手 第14回 - 「絶景度」をアップさせるためにプロが行った露出設定とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

工藤智道

1969年、横浜生まれ。日本写真芸術専門学校卒。卒業後、風景写真家の竹内敏信氏に師事。4年間のアシスタントを経て独立。日本の自然風景、都市風景を撮り、夜景や花火の撮影もこなす。写真専門誌で撮影、執筆も数多くパソコン誌、デジタルカメラ専門誌でも活躍。日本写真家協会会員。EOS学園東京校講師。

「絶景度」をアップさせるために
プロが行った露出設定とは?

「絶景度」をアップさせるためにプロが行った露出設定とは?

EOS 5D・EF70-200mm F2.8L IS USM・絞り優先AE(F16・1/30秒)・−2補正・ISO100・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

9月下旬に訪れた北海道。山の高所ではすでに紅葉が始まっています。まだ夜が明けないうちからクルマを走らせ、展望のいい場所を目指しました。ねらいは雲海。ただ、思ったような雲海が現れる保証はないため空振りに終わることも。
この日は、空が白み始めると見事な雲海が現れてくれました。刻々と変わる光と、雲海の表情。またとない絶景に夢中でシャッターを切りました。
では、この雲海の絶景を撮るにあたり重要だった「露出設定」とは、どのようなものだったでしょうか?

プロの一手、その答えは・・・

Answerマイナス2の露出補正

漂う雲海の立体感を引き出す
露出補正の考え方とは?
「白いものはプラス補正」「逆光はプラス補正」。それが写真撮影の基本とされています。露出補正なしでは白いものが白く写らず、逆光では暗い写真になってしまうから……皆さんもご存じでしょう。しかし、すべての場面でこの法則が当てはまるかというと、そんなことはありません。
今回の雲海の作品をご覧ください。雲海は白く、光線状態は逆光。であれば「プラス補正」と考えがちです。しかし、なんと言ってもこの写真のポイントは、雲海の表情。明るすぎては、もくもくした雲の立体感が出ません。
そこで私は、雲海に露出を合わせるためにマイナス補正しています。プラス補正ではありません。風景写真の場合、フレーミングした中でもっとも明るい場所(ハイライト部分)は「白トビ」しない露出が好ましいからです。漂う雲の表情を重視して露出を考えた結果、マイナス2の露出補正となりました。
ミラーレスカメラ「EOS R」

キヤノン初の35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ「EOS R」。有効画素数約3030万画素、最新の映像エンジン「DIGIC 8」による高画質かつ表現力豊かな撮影が可能に。新開発の「RFレンズ」シリーズに加え、専用のマウントアダプター(別売り)を装着することにより、従来の「EFレンズ」や「EF-Sレンズ」も使用できます。詳細はキヤノンオンラインショップへ!

遠景の眺望を引き立て
効果的な前景を入れて撮る
この写真を撮影したエリアでは、場所を変えて、さらに標高の高い地点からの撮影も可能でした。雲海の風景というとなるべく高所から見下ろしたい気持ちはわかりますが、ただ高所から撮ればいい写真になるかというと、そんなことはありません。
今回の写真の場合、さらに標高が高い場所では確かに眺望は優れていたのですが、手前に写し込んだ木々などがありませんでした。遠景だけでは風景の広がりや奥行を感じさせることが難しいため、やや標高の低い場所に移動して撮影しています。前景の針葉樹のシルエットが画面の中でアクセントになり、広がりと奥行のある写真になると考えたのです。
レインカバー ERC-E5S

フィールドで出合う突然の雨。そんなときカメラ機材を守るレインギアがあれば安心ですね。EOSシリーズに最適なキヤノン製レインカバーは、液晶モニターや上面パネルの確認ができる透明窓付き。使用レンズに応じた3サイズ展開で、雨の撮影をサポートします。

コラム
雲海は、条件さえそろえば一年中見ることができますが、寒暖差が大きくなる秋には出現する確率がアップします。雨の降った翌日、天候が回復する日の朝。冷え込みが厳しくなる日には、雲海に出合えるかもしれません。また、風が弱い日のほうがいいでしょう。
雲海が現れやすい時間帯は早朝です。まだ夜が明けぬ暗いうちから撮影場所に向かわなければなりません。しかし、見事な雲海に出合えたときには、「早起きは三文の徳」となることでしょう。