写真・プロの一手 第13回 - プロでもコイツには負ける。コスモス撮影の「強敵」とは!?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

プロでもコイツには負ける。
コスモス撮影の「強敵」とは!?

プロでもコイツには負ける。コスモス撮影の「強敵」とは!?

EOS 5D Mark IV・EF180mm F3.5L マクロ USM・絞り優先AE(F3.5・1/180秒)・+1/2補正・ISO400・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

被写体としての花の季節もいよいよ終盤。そこで主役に躍り出るのが、秋の季語でもあるコスモスです。私は年間を通して多種多様な花を撮影しますが、常に考えているのは、「その花をもっとも魅力的に表現するにはどのような撮り方が適切か」ということです。
コスモスは広角レンズで風景的に捉えても、マクロレンズで接近しても魅力的な表現が可能な被写体です。私がベストだと思う撮り方は、マクロレンズの最短撮影距離まで接近する方法。コスモスの花びらがふんわりと優しく浮かび上がり、肉眼では感じることのできない表現ができます。
さて、マクロレンズでコスモスを撮るとき、プロフェッショナルでも逆らえない自然界の「条件」があります。その条件とは?

プロの一手、その答えは・・・

Answer

マクロ撮影では「完全無風」が
最高のシャッターチャンス。
コスモスが秋風に揺れる光景は、見ていて心が癒されます。ところが被写体となれば話は別。茎が細く長いコスモスは風の影響を受けやすく、ほんのわずかな揺れでも被写体ブレに直結します。
ピントは花びらの先端に合わせます。オートフォーカスでは花びらの先端にピントを合わせることは難しいためマニュアルフォーカスに切り替えます。
マクロで最短撮影距離ということは、極端に被写界深度が浅い状況となります。たとえ速いシャッタースピードを確保できたとしても、ピント位置がほんのわずかズレただけで、ピンボケ写真になってしまいます。
花がブレない、ピント位置がズレない状態で撮るには「完全無風」が絶対条件。つまり、風が吹いていたらこのような写真は撮れないのです。
無風だと思っていてもファインダーの中でクローズアップになった花を見ると、ほんのわずかですが揺れていることが多いものです。ファインダーをのぞき花が静止する「一瞬」を待ってシャッターを切りましょう。
EF180mm F3.5LマクロUSM

今回の作品で斎藤裕史先生がチョイスしたレンズがこちら、EF180mm F3.5L マクロ USMです。180mmの望遠なので離れた場所から昆虫や花の撮影ができます。大きく美しいボケも魅力!

ふんわりした雰囲気で撮るなら
淡い色彩のコスモスをチョイス。
マクロレンズで花をふんわりととらえるには「被写体選び」が重要です。白いコスモスは立体感が出にくく、濃いピンクのコスモスはふんわり感が出にくいようです。キバナコスモスと呼ばれている品種は、黄色というよりもどちらかといえば強めのオレンジ色。ふんわりした雰囲気はねらいにくいと感じています。
私が好んでねらうのは淡いピンク色のコスモスです。あるいはレモン色の「イエローキャンパス」や「レモンブライト」と呼ばれる淡い色調の花であれば、ふんわり感が出しやすいでしょう。
園芸品種であるコスモスの種類は膨大。花びらをよく観察すると、その形状はさまざまです。ふんわりした撮り方にこだわらないのであれば、マクロレンズでとらえたときにカタチやラインが魅力的に浮かび上がる品種を選ぶとよいでしょう。
一般的なコスモスは花びらが平面的ですが、今回被写体に選んだコスモスは花びらの先端がカールしているのが特徴。品種の個性を生かした作品づくりを楽しみたいですね。
アルミトランク CAT-M II

上質なカメラバッグをお探しならキヤノン製の「アルミトランク CAT-M II」はいかがでしょう。とにかく頑丈。タフに機材を守ります。ハンドルが出っ張らないので積み重ねることも可能です。

コラム
前述しましたとおりマクロ撮影では「完全無風」が望ましい条件ですが、強風で揺れているコスモスが止まるのを待ってもストレスを感じるだけです。風がある日のマクロ撮影は困難と割り切って、その場その時の条件に合った撮り方を考えましょう。
逆転の発想で、 風に揺れるコスモスをスローシャッターでとらえれば「風」を表現できます。できるだけワイドに画面全体をコスモス畑でいっぱいにする構図がおすすめ。広範囲を写すことで風の強弱、風の道を表現してみてはいかがでしょう。