写真・プロの一手 第11回 - 雄大な夏雲の中を行く列車を理想的に撮る「シャッタースピード」とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

村上悠太

1987年、鉄道発祥の地、東京・新橋生まれ。高校時代に北海道上川郡東川町で毎夏開催されている「写真甲子園」に出場。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、鉄道写真家を志し有限会社レイルマンフォトオフィスに入社。'17年よりフリーランスとなり鉄道誌、旅行誌、カメラ誌を中心に活躍。「人と鉄道、そして生活」をテーマに写真だけなくEOS MOVIEで動画作品も発表。EOS学園東京校講師。

雄大な夏雲の中を行く列車を理想的に撮る
「シャッタースピード」とは?

雄大な夏雲の中を行く列車を理想的に撮る「シャッタースピード」とは?

EOS 6D Mark II・EF16-35mm F4L IS USM・F8・1/2000秒・ISO500・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

「夏らしい鉄道写真」というと、どのような絵を思い浮かべますか。「夏」を象徴するモチーフとして作品にインパクトを与えてくれるのが「夏雲」の存在です。夏はモクモクと湧き上がる雲の表情が豊かで、作品に明確な「夏らしさ」を与えてくれます。ただ、雲はねらいどおりに出現させることはできません。しかも、刻一刻と姿を変えていきます。そのため撮影に適した雲が湧いたら速やかに撮影地選びをして、形が変わり続ける雲と列車とのバランスを考慮しながらフレーミングを調整して撮影するのがポイントです。
さて、この夏雲の中の列車を撮るとき、私がもっとも重要視した「シャッタースピード」とは?

プロの一手、その答えは・・・

Answerシャッタースピード「1/2000秒」

鉄道写真の基本のカメラ設定は
Tv(シャッタースピード優先)モード。
さて、雲と空を入れ込む構図の場合、安全な範囲で列車に寄り、広角レンズを使用するのが手軽かつ有効です。単に広角で撮影すると列車が小さくなり目立たないことが多いからです。
ここで注意したいのがシャッタースピード。鉄道写真の場合、まず列車を写し止められるシャッタースピードを選択して絞り値を決めていくのが露出決定の基本です。撮影モードはシャッタースピードをコントロールできる「Tv(シャッタースピード優先)モード」がおすすめです。
今回の作品のように、広角を使用し、構図内での列車の移動速度が速い条件では余裕を見て1/2000秒は確保したいところ。高画素化が進んだ最近のカメラは、等倍に拡大するとブレが特に目立ちます。シャッタースピードはギリギリで列車が写し止まる速度を探るのではなく、常に「速め」を意識しましょう。
撮影した画像が鮮明に写らない原因として、カメラやレンズの性能を気にする方が多いのですが、「実はブレだった!」ということも少なくありません。
リモートスイッチ RS-80N3

鉄道写真の必需品「リモートスイッチ RS-80N3」。カメラに触れずにシャッターを切ることができるので、ブレを抑えた撮影が可能。長時間露光や連続撮影時にはレリーズボタンをロックすることができるので、指で押し続けなくても撮影できます。

フレキシブルなISO感度設定により
理想の高速シャッターと絞り値で撮る。
一方で、単純に速いシャッタースピードを優先するなら「Av(絞り優先)モード」で絞り開放にして撮影すれば、常にその条件下で最速のシャッタースピードが設定されます。この方法でもブレは防げますが、逆にシャッタースピードが必要以上に高速に設定される可能性もあります。レンズの描写性能や絞りのもつ画面効果を考えると、必ずしもベストな手段とは言えません。
今回の作品は、手前に田んぼを配置しています。可能なら絞りを絞って手前の田んぼのディテールも表現したいところ。そこで高速シャッターを確保しつつ、絞りもある程度絞り込むためにISO感度を上げて撮影しました。高感度でもノイズが目立たない現在の機種では、単に暗い条件で撮影するときだけではなく、ブレを防ぎつつピントの合う範囲を深くしたいシチュエーションでも、高ISO感度を積極的に使用するとよいでしょう。
保護クロス

くるりとカメラを包んで、しっかり保護!一眼レフカメラに標準ズームレンズを装着したまま、風呂敷のように包める保護クロス。カメラを汚れや傷、水滴から守りながら、バッグにコンパクトに収納できます。スポンジ入りの生地でクッション性も良好。

コラム
広角レンズは画面内にあらゆるものが写り込むので撮影地選びが重要です。ただ、カメラ位置が目の高さだと背景の障害物が目立つとか、構図が整理できない場所は、バリアングルモニター搭載のカメラだと簡単に視点を変え、ハイアングル、ローアングルが試せます。
今回の作品でも、田んぼと線路の間に太い農道がある場所でしたが、バリアングルモニターを使ってローアングルからねらうことで、手前の田んぼで農道を隠しています。ロケハンするときはすぐに「こうだ!」と決めつけずに、さまざまなアングルで新たな視点を探ってみましょう。それが写真上達の秘訣です。