写真・プロの一手 第8回 - アジサイの花「全体」を優しくぼかす!プロがこだわった使用レンズは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

アジサイの花「全体」を優しくぼかす!
プロがこだわった使用レンズは?

アジサイの花「全体」を優しくぼかす!プロがこだわった使用レンズは?

EOS 7D Mark II・絞り優先AE(F2.8・1/60秒)・+2補正・ISO200・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

春の花から夏の花に変わるこの季節、梅雨時の花といえばアジサイです。 「雨だと撮影に行くのがおっくう」という気持ちもわかりますが、しっとりと雨に濡れたアジサイは、晴れた日に撮る花とは違った表情があり魅了されます。 撮り方はイメージ次第。群生するアジサイを風景的に捉えるのもよし、一つのアジサイをクローズアップでとらえるのもよし。色彩は紫色、ピンク、ブルー、白など多様。品種も豊富で、西洋アジサイ、ガクアジサイ、一重もあれば八重もあります。 身近な花でありながら、撮影していて飽きることがないアジサイ。どうせ撮るなら自分らしく撮りたいですよね。 私がこの作品でチョイスしたレンズは、一般的には花の撮影であまり使われない一本です。でも、私はこのレンズで花を撮るのが大好き。さて、そんな意外なレンズとは?(ヒント:EF70-200mm F2.8L IS II USMではありません!)

  • ●EF100mm F2.8Lマクロ IS USM
  • ●EF300mm F2.8L IS II USM
  • ●EF-S60mm F2.8 マクロ USM

プロの一手、その答えは・・・

Answer通称「サンニッパ」で知られる
EF300mm F2.8L IS II USM

望遠単焦点レンズの最短撮影距離で
花を撮れば美しいボケが期待できる!
答えは、通称サンニッパこと「EF300mm F2.8L IS II USM」。望遠の単焦点レンズで花を撮る人はレア。だからこそ、オリジナリティのある写真になるのです。
キヤノン歴代の望遠300mm F2.8Lレンズは、最短撮影距離3m→2.5m→2mと、新型が登場するごとに0.5mずつ短縮されてきました。私はその0.5mのためにこのレンズを購入し続けています。その理由は、ボケを生かした最短撮影距離での撮影ができるからです。ウメなど小さな花の場合、マクロレンズでの撮影が多くなりますが、ある程度大きなアジサイは、300mmの最短撮影距離付近でとらえれば、優しいボケ味を生かした作品にしやすいのです。
このレンズでの撮り方のコツは、「遠くに咲いている花を大きく撮る」のではなく、「ボケ味を重視しながら最短撮影距離付近に咲いている花を撮る」こと。夏に向けて旬を迎える、ハス、ヒマワリなど大きい花ではこのレンズが大活躍しますよ!
EF300mm F2.8L IS II USM

斎藤裕史先生もご愛用の大口径・望遠単焦点レンズ「サンニッパ」こと「EF300mm F2.8L IS II USM」。プロフェッショナルをうならせる高画質・描写性で、このレンズでなければ写せないイメージを創造します。

大きくふんわりソフトな
「前ボケ」を作るコツとは?
「前ボケ」を生かした画面構成のコツを伝授しましょう。まずはレンズの最短撮影距離付近に咲いているメインの花を探します。そのすぐ手前や後ろにほかの花があると画面がごちゃごちゃしやすいので、できるだけ「ぽつんと一つだけ」咲いている花を探します。その花から離れているレンズのすぐそばにある花やグリーンを前ボケに利用すると、大きくやわらかいボケが作れます。絞りはもちろん開放です。
今回の写真では、背景の色と前ボケの色を同系色(ここではグリーン)にしました。色をそろえることで画面に統一感が生まれ、すっきりと主役のアジサイを引き立てることができるのです。
EOSストラップ PROFESSIONAL VERSION

通称「プロスト」と親しまれているEOS用ストラップ。しなやかな素材を用い、肩当て部の長さを短くしたことで、手に巻きつけて使用するなどプロの現場で求められる操作性を高めたストラップです。

コラム
フルサイズの機種がいいと思っていても、まだ移行に踏み切れない方も多いですよね。私が指導しているEOS学園でもそうです。
「フルサイズはいいなぁー、私のカメラはAPS-Cだから……」とおっしゃる生徒さんがいます。まるでAPS-Cがフルサイズより劣っているような!? いえいえ、私は花を撮るとき、メイン機のフルサイズEOS 5D Mark IVよりも、むしろサブ機であるAPS-CサイズEOS 7D Mark IIをよく使います。それは今回のEF300mm F2.8L IS II USMにしてもマクロレンズにしても、APS-Cサイズのほうがフルサイズよりも被写体を大きくとらえることが可能だからです。APS-Cサイズのカメラでも、どうぞ自信を持って撮影してください。