写真・プロの一手 第6回 - バラのマクロ撮影。プロがもっとも重視したポイントは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

バラのマクロ撮影。プロがもっとも重視したポイントは?

バラのマクロ撮影。プロがもっとも重視したポイントは?

EOS 7D Mark II・EF180mm F3.5L マクロ USM・絞り優先AE(F3.5・1/125秒)・+1/2補正・ISO200・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:風景

この季節、撮っておきたい旬の花の一つが「バラ」です。私が好きなのは花びらの表情。二つと同じものはない美しい繊細なラインは見ていて飽きません。
優しい光に包まれたピンク色のバラをマクロレンズEF180mm F3.5L マクロ USMでねらいました。このレンズは、1つの花を画面いっぱいに入れて撮るときには欠かせない、花撮影の定番レンズです。
マクロ撮影特有のふわっとした雰囲気を出すには、赤いバラよりピンクや淡い黄色のバラがおすすめです。淡い色調のシンプルな品種を被写体に選びましょう。
さて、初めてバラのマクロ撮影にチャレンジする方が戸惑うのが、「どこにピントを合わせればいいの?」という疑問です。「ここですよ」とお教えすると、すごく納得してもらえるのですが、ピントはどこに合わせるのがプロの一手でしょうか?

プロの一手、その答えは・・・

Answerピント位置を花びらの
「ライン」に合わせる。

ピント合わせは、バラの中心部の
外側にある花びらのラインで!
なぜか一般的に、花のピント合わせは中心部の「しべ」といわれています。しかし私はしべに合わせることはほとんどありません。花の写真の基本は、魅力的な部分だけを切りとること。美しくない部分は画面に入れません。では、バラの「魅力的な部分」はどこなのか。私は花びらの「ライン」だと思っています。
バラの花びらは中心に近づくにつれて花びらの「巻き」が小さくなり、中心部は固く閉じていて華やかさに欠けます。花びら同士が近づくので、多くのラインが重なり、結果としてごちゃごちゃした写真になってしまいます。
そこで「巻き」の中心部から1~2本外側の花びらのラインにピントを合わせると、画面がスッキリまとまります。
一番外側の輪郭部分は、傷んでいることがよくあります。真ん中でも外側でもないきれいな花びらのラインをしっかり見極めて「美しい部分」を撮りましょう。
EOS学園

キヤノンEOS学園では写真レベルや目的ごとに様々な講座をご用意!撮影の上達法やテクニックをプロの写真家が教えます。工藤先生、斎藤先生、村上先生も講師として活躍中。

マクロ撮影ではレンズの絞りは
基本的に「開放」に!
被写界深度が浅いマクロレンズでの絞り値ですが、絞ればシャッタースピードが遅くなるためマクロ撮影には不利です。手ブレ、被写体ブレしないシャッタースピードで撮りたいので、絞りは開放で撮影します。また、マクロレンズではどんなに絞り込んでもパンフォーカスにはなりませんので、絞り開放で思い切ってボケの表現を楽しむといいでしょう。
背景の葉などのテカリを抑えるためのPLフィルターはシャッタースピードを落とすことになるので使いません。背景などの葉のテカリさえもぼけてしまえば美しい脇役になってくれます。
極端に被写界深度が浅くなるので、どこにピントを合わせるかが重要です。前述したとおり、もっとも美しいと感じる部分にピントを合わせましょう。
EF180mm F3.5L マクロ USM
EF180mm F3.5L マクロ USM

今回斎藤先生がチョイスしたレンズEF180mm F3.5L マクロ USMは、ピント部分をシャープに、ボケは美しく、そして全体を階調豊かに描写します。望遠なので離れた場所の被写体もねらえます。

コラム
マクロ撮影でリモートスイッチ(レリーズ)を使う方は多いと思います。でも、レリーズを使用すると、ついついファインダーをのぞかないで撮影してしまいませんか? マクロ撮影でファインダーをのぞかないで撮影すると、まずピントは合いません。
また、ほんの少しの風でもファインダーの中の花は予想外に動いています。わずかでもピントの位置がずれれば、ピンボケ写真になってしまいます。ファインダーをしっかりとのぞき、ピタリと動きが止まった瞬間にシャッターを切ります。マクロ撮影での被写体ブレを防ぐなら、1/125秒より速いシャッタースピードがよいでしょう。