写真・プロの一手 第5回 - 新緑の渓流をなめらかシルキーに表現するプロの一手とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

工藤智道

1969年、横浜生まれ。日本写真芸術専門学校卒。卒業後、風景写真家の竹内敏信氏に師事。4年間のアシスタントを経て独立。日本の自然風景、都市風景を撮り、夜景や花火の撮影もこなす。写真専門誌で撮影、執筆も数多くパソコン誌、デジタルカメラ専門誌でも活躍。日本写真家協会会員。EOS学園東京校講師。

新緑の渓流をなめらかシルキーに表現する
プロの一手とは?

新緑の渓流をなめらかシルキーに表現するプロの一手とは?

EOS 5D Mark II・EF24-105mm F4L IS USM・絞り優先AE(F14・0.5秒)・−1補正・ISO100・ホワイトバランス:白熱電球・ピクチャースタイル:風景

こちらは春の奥入瀬渓流で撮影した一枚です。新緑を抱く春の森。目にもまばゆい新緑の風景はとても美しく、爽やかな写真を撮ることができます。紅葉がきれいな場所は新緑の時期も美しいので、ぜひ訪れてみるといいでしょう。新緑の森ときれいな水が流れる渓流との組み合わせは、なんとも言えない美しさがあります。新緑の撮影方法はさまざまですが、新緑と渓流との組み合わせなら、晴れて日差しのあるときよりも薄曇りのほうがいいでしょう。薄曇りの優しい光なら陰影がきつく出ないからです。
さて、新緑の渓流をなめらかな絹糸のように撮るときに覚えておきたい「プロの一手」とは?

プロの一手、その答えは・・・

Answer答えは「スローシャッター」。
この写真の場合、0.5秒で撮影。

スローシャッターのコツは
TvモードではなくAvモードで撮ること!
新緑と同時に写した渓流。スローシャッターで撮影することで、水の流れをシルキーに写すことができます。ブレを防ぐため、三脚は必需品です。
スローシャッターで撮影するとき、カメラの撮影モードはシャッター速度が設定しやすい「Tv(シャッター速度優先)モード」と考えがちです。でも、明るい日中にTvモードでシャッター速度を遅くしすぎると、露出オーバーの白っぽい写真になってしまう場合があります。このような失敗を防ぐため、スローシャッターで撮影するときでも「Av(絞り優先)モード」で撮影します。
Avモードでスローシャッターにするときのコツは、次のとおりです。
  1. ①ISO感度を低感度のISO100程度に設定する。
  2. ②絞りをできるだけ絞り込む。
  3. ③表示されたシャッター速度を確認。スローシャッターになっていればOK。
スローシャッターの目安は、渓流の流れの場合は1秒以上が理想です。遅くならないときは、光量を少なくする「NDフィルター」を使います。
このようにAvモードで絞り込むことで、適切な露出とスローシャッターの両方を実現できます。
ND4×Lフィルター 52mm
ND4×Lフィルター 52mm

カメラに入射する光を抑える効果のある「NDフィルター」。スローシャッターで撮りたいときに持っていると便利です。ND4は光量を1/4に、ND8なら光量を1/8に減少させることができます。

新緑らしい色を引き出す
必需品「PLフィルター」。
新緑の撮影に限らず、風景写真の撮影で使用頻度の高いアクセサリーは、反射を取り除く効果がある「PLフィルター」です。新緑を撮影すると葉の表面が白っぽく光ってしまうことがありますが、PLフィルターを使えばてかてかした葉の反射を抑え、本来の美しい緑色で撮れます。PLフィルターは、ただレンズに装着しただけでは効果がありません。フィルター枠を回して反射が取れる効果を見ながら撮影します。
新緑を撮るとき、やや黄色っぽく感じられることがあります。みずみずしい新緑の色を引き出すには、ホワイトバランス(WB)を調整します。通常、風景撮影ではホワイトバランスを「太陽光」に設定しますが、「白熱電球」にすると全体が青っぽくなり、若葉の雰囲気が出せます。撮影現場でホワイトバランスを白熱電球に変える、もしくは、RAWデータの現像時に調整するといいでしょう。
円偏光フィルターPL-C B 52mm
円偏光フィルターPL-C B 52mm

PLフィルターとはPolarized Light(偏光)フィルターの略。フィルターを回転させて水面やガラス面などの反射をカットすることができます。レンズのフィルター径に合ったものを購入しましょう。

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