写真・プロの一手 第4回 - 幻想絶景!「朝もや」の質感を際立たせるには?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

幻想絶景!「朝もや」の質感を際立たせるには?

幻想絶景!「朝もや」の質感を際立たせるには?

EOS 5D・EF70-200mm F2.8L IS USM・絞り優先AE(F11・1/350秒)・-1補正・ISO100・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:スタンダード

春の風景写真としてたいへん人気のある棚田。田植えのために水が張られた田んぼに朝陽が射し込む光景には、誰もが憧れますよね。こんな棚田の風景に限らず、どんな被写体でも「光」は重要。魅力的な光線状態で撮影できる場所を選ぶ必要があります。
ゆっくりと流れるイメージがある朝もやの表情ですが、実際には刻々とその表情を変えていきます。そんな表情をとらえるため撮影現場では撮影に集中します。この日は、逆光気味の光を受けてやわらかな質感で漂っている朝もやをしっとりと切りとることに集中しました。
さて、この写真のような「質感」を出すために私が実践している撮り方は、次のうちどれでしょうか?

  • ●PLフィルターの使用
  • ●シャッター優先AEと連続撮影
  • ●プラス補正とAEB撮影
  • ●マイナス補正とAEB撮影

プロの一手、その答えは・・・

Answerマイナスの露出補正と
AEB撮影の活用がプロの一手!

白い「朝もや」の質感を出すには
マイナス補正&AEB撮影が正解!
白い朝もやが画面の多くを占める場面での露出補正、どう考えますか? もやの白さを表現するため「プラス補正」と考えがちですが、この写真の場合は、画面の中に大きな「明暗差」が存在します。カメラの内蔵露出計は画面全体が平均的に写るように露出を判断するため、「露出補正なし」では全体的にメリハリのない印象の写真になる傾向があります。
ここで見せたいのは朝もやの質感。やわらかく地上を覆う朝もやをしっかり表現するには、マイナス側の露出補正が正解です。
さらにこの写真では、マイナス1を基準に3枚、AEB撮影しました。「AEB」とはAuto Exposure Bracketing(オートエクスポージャーブラケティング)の略で、自動的に露出を変えて撮影する機能です。
写真には「適正露出」というものが存在します。「RAWで撮るので、露出はあとで調整すればいい」という考えには賛成できません。撮影現場でできることは、すべてしっかりやっておく。それが最初にお話した「目の前の風景に集中した撮影」だと思います。
「現場でやっておくこと」=「適正露出で撮影すること」=「AEB撮影」。これが私の流儀です。
AEB撮影とは? 露出を自動的に変えて撮る/AEB撮影の設定方法(EOS 6D Mark II)
レンズフード ET-63
EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM用の「レンズフード ET-63」

写真に邪魔なゴースト。その発生を防ぐために「レンズフード」は必需品です。レンズフードが附属していないキットレンズをお使いなら、ぜひお買い求めを。レンズフードはレンズ保護のためにも重要ですよ。

絶景の感動を伝えるために
レンズによる「切りとり」が重要!

素晴らしい風景を目の前にすると、ついつい「全体」を写真に収めたくなりませんか? どうしても広角レンズ(もしくはズームレンズの広角側)を選んでしまいがちです。広角レンズは広い範囲を写すことができますが、風景の中のどこを主題として撮ったのか、写真を見てくれる人には伝わりにくい写真になることがあります。あれもこれも欲張って画面に入れてしまうと、漠然とした散漫な写真になってしまうのです。
目の前に広がる光景のどこが魅力的なのかをしっかり見極め、望遠レンズで「切りとる」ことが重要です。風景全体の中から素早く的確に見せたい風景を切りとるには、70-200mm程度のズーム域を備えたレンズがおすすめです。

EF70-200mm F4L IS USM

自然風景を「切りとる」撮影で活躍するのは70-200mmあたりの中望遠域をカバーするズームレンズです。初中級者におすすめしたいのがEF70-200mm F4L IS USM。リーズナブルで高画質な一本!

コラム
とくに初心者の方に多いのが、太陽そのものを画面に入れてしまうこと。太陽はもっとも強い存在です。画面に入れてしまうと、どうしてもそこに視線が奪われてしまいます。ですから太陽は画面に入れず、光芒や反射などによって「間接的」に太陽の存在を表現することがポイントです。
また、朝夕は太陽の位置が低いため、ゴーストやフレアといった有害光線が入りがちです。それらの有害光線をカットするために欠かせないのがレンズフードです。必ずフードを装着して撮影しましょう。