写真・プロの一手 第1回 - 鉄道写真のキモ! 菜の花にピントを合わせる場合、選ぶべき絞り値(F値)とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

村上悠太

1987年、鉄道発祥の地、東京・新橋生まれ。高校時代に北海道上川郡東川町で毎夏開催されている「写真甲子園」に出場。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、鉄道写真家を志し有限会社レイルマンフォトオフィスに入社。'17年よりフリーランスとなり鉄道誌、旅行誌、カメラ誌を中心に活躍。「人と鉄道、そして生活」をテーマに写真だけなくEOS MOVIEで動画作品も発表。EOS学園東京校講師。

鉄道写真のキモ! 菜の花にピントを合わせる場合、
選ぶべき絞り値(F値)とは?

©Yuta Murakami

EOS 80D・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・マニュアル(F5.6・1/200秒)・ISO200・ホワイトバランス:マニュアル

この作品のテーマは「菜の花に包まれる列車」。千葉県を走るいすみ鉄道は、春になると線路のすぐそばに菜の花が咲き、とてもすてきな光景が広がります。その菜の花にピントを合わせ、背景に列車をたたずませました。ここで重要になるのが列車のボケ具合。ぼかし過ぎれば車両が背景に埋もれ、かといってピントが合いすぎては菜の花が引き立ちません。

鉄道写真の主役といえばやっぱり車両です。といっても、必ずしも車両自体にピントを合わせる必要はありません。重要なことは「列車感」や「鉄道感」を画面から感じるかどうか。よーく見ないと列車だとわからない、鉄道をモチーフにしていることがわからないようでは、見る人にテーマが伝わりづらい作品になってしまうからです。では、「列車感」を伝えながら、なおかつ車両の存在感が強すぎない絞り値(F値)の設定とは!?

プロの一手、その答えは・・・

Answer絞り値F5.6で列車の過度なボケを
防ぎつつ菜の花を引き立てる!

絞り開放からやや絞った絞り値で
理想的な「列車感」の写真にする
菜の花にピントを合わせたい。同時に「列車感」も出したい。そこで、菜の花にピントを合わせ、列車はぼかす構成を考えました。さて、具体的にどうするか。
背景をぼかす=絞り開放というイメージがあるかもしれませんが、そうすると列車がぼけすぎて列車の存在感=「列車感」がなくなってしまいます。とくに望遠レンズを使用した場合、ある程度まで絞り込まないと「列車感」がないボケ味になってしまいます。
「列車感」こそが鉄道写真の重要ポイント。列車感とは、列車の音や存在がその写真から感じられることです。そこで私が選択した「プロの一手」は、絞り値F5.6。こうすることで菜の花に包まれた理想的な列車感の写真になりました。
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは広いズームレンジを持ちながら、全域で高画質、機動力、操作性を兼ね備えた望遠ズーム。APS-Cサイズセンサー搭載機種では160-640mm相当の領域をカバーします。

絞り込みボタン+ライブビュー撮影で
「列車感」のあるボケ量を探る!
背景の列車をぼかしつつ列車感を出すのであれば、ぼかしたい気持ちをやや抑えてやや絞り気味にするぐらいがちょうどいいでしょう。一眼レフカメラの「絞り込みボタン」を活用して「ボケ量」を確認するのも有効です。
おすすめしたいのは、絞り込みボタンとカメラの液晶モニターを見ながら撮影する「ライブビュー撮影」の併用です。ライブビュー撮影なら実際のボケ量を液晶モニターで確認でき、絞り込みボタンを押しながらF値を変えるとリアルタイムでボケの変化を見ることができます。これが理想的な「列車感」を探るための「プロの一手」です。
EOS 5D Mark IVのライブビュー表示
EOS 5D Mark IVのライブビュー表示

液晶モニターで被写体を確認しながら撮影できるライブビュー。動画撮影機能が搭載されている機種もあります。

コラム
菜の花は咲いている期間が長く、その色合いから春らしい作品をねらいやすいモチーフです。今回紹介したいすみ鉄道は、首都圏からもアクセスがよく多くの撮影者が訪れる人気路線。いい作品を残したいのは皆いっしょなので、ぜひ譲り合いの心と、過度な行動になっていないか客観的な視点を大切に、うららかな春を感じながら撮影しましょう!