基本テクニック講座
さくらの花に目を奪われてしまいがちですが、さくらの周囲や空、風など、その場の状況をよく見ることで、単なる植物としての写真ではなく、さくらの動きや表情までも引き出すことができます。まずは、さくらが咲いている場所の周囲の状況をよく観察してみましょう。
公園や城郭など、水辺にさくらが咲く場所があります。そういう場所では、さくらに「水」の要素をプラスしましょう。さくらの時期の終盤ともなると、散った花びらが水面に浮いて「花筏(はないかだ)」を見かけます。勢いよく流れていない場所でも、風や緩やかな水の流れに乗って花びらが移動していることがあります。
そんな場面を見つけたら、花が流れる様子を「スローシャッター」で撮ってみるとよいでしょう。遅いシャッター速度のスローシャッターで撮ることによって、花筏がゆっくりと移動しながら流れる様子を写真で表現することができます。
ISO感度を低く設定し、絞りを絞り込むことで、スローシャッターにすることができます。十分にシャッター速度が低速にならないときは、光の量だけを減らすことができる「NDフィルター」を使って撮影してみましょう。
日中にスローシャッターで撮影したい場合、その撮影でいちばん遅いシャッター速度に設定することがポイントです。ISO感度は可能な限り(50〜100など)低く設定し、撮影モードは絞り優先の「Avモード」に設定して、絞りをできるだけ絞り込みます。しかし、それでも明るくて十分なスローシャッターにならない場合があります。
そんなときには、光の量だけを減らすことができる「NDフィルター」を使います。NDフィルター(Neutral Density Filter)とは、色に影響を与えることなく光量を低下させるフィルターです。滝や渓流の水の流れを幻想的に、糸が引くようなイメージで表現したいときには欠かせません。
NDフィルターを使用し、2.5秒の露光時間をかけて、ゆっくりと流れる花びらの動きを写し出しました。
EOS 5D Mark II・EF24-105mm F4L IS USM・2.5秒・F22・ISO50・WB太陽光
時折吹く風に花びらが流されていました。花びらの動きを見て、風で流れるタイミングで撮影しました。 NDフィルターを使用し、露光時間を1.6秒としています。
EOS 5D Mark II・EF70-200mm F2.8L IS USM・1.6秒・F32・+2/3補正・ISO50・WB太陽光
さくらの時期は、意外と天候が悪い日も多いものです。晴れていて青空なら難なく撮影できますが、曇りの日には空が入りすぎないように工夫します。多くの見物客が集まるようなさくらの銘木を撮影したい人も多いと思いますが、じつは天候が良くない日が、自分らしい写真を撮影するチャンスです。
春先の風の強い日には、さくらに「風」の要素を加えて撮りましょう。風が強い日には、さくらの枝が大きく揺れます。スローシャッターで撮影すると枝がブレて、「風」を写しとることができます。
揺れる枝の動きは一定ではないので、枝が揺れるタイミングに合わせてたくさん撮りましょう。また、フレーミングしたさくら全体が揺れていると、ただのカメラブレのように見えてしまいます。どこか一部分だけはしっかり止めて写すのが、風を表現するコツです。
風で大きく揺れている枝垂れ桜を表現したかったのですが、
実際は風が弱く、枝があまり揺れていませんでした。
そこでNDフィルターを使い、スローシャッター(1/4秒)で
ブレをつくることで、風を写し出しました。
EOS 5D・EF300mm F4L USM・1/4秒・F32・-1 2/3補正・ISO100・WB太陽光
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