- 講師:並木隆(写真家)
- 第3回〈月1回・全3回更新〉
マクロ写真の表現テクニック〈応用編〉
マクロレンズを使ったマクロ写真を極めるコツをお教えしましょう。それは、どのアングルから、どの方向でレンズを向けると、どのような見え方になり、どんなふうに背景や前ボケが入るのか、あなた自身の「目」で確かめることです。
カメラのファインダーや液晶モニターを見ながら決めるのではありません。クローズアップすればするほど被写界深度が浅くなり、ピントの合っている部分以外は大きくボケてしまいます。ファインダーや液晶モニターを見ながら、絵づくりするのは困難です。あなたの目で写真の仕上がりをイメージすることが大切です。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/640・F5.6・+1/3補正・ISO100・WB太陽光
花数が少なかったので、手前の花を「前ボケ」として入れて、画面の中に白い色の割合をプラスしています。また、前ボケが上にくるようにするため、手前の花の下から低いアングルで見上げるようにレンズを向けました。空に向かって手を広げるような雰囲気に仕上げています。
マクロレンズで撮ると美しいのは、花だけではありません。たとえばシダの葉などは、逆光で浮かび上がる葉脈が美しいと感じますね。でも、葉の真裏から全体にピントが合うようにフレーミングするのはありきたりです。そこで、長い葉に沿うようにレンズを向け、わざと一部分だけにピントが合うようにし、マクロレンズらしい前後のボケ味を活かしてみます。一見すると、葉には見えない作品に仕上がりますよ。
撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/160・F2.8・ISO800・WB太陽光
長く伸びる葉に沿うようにして撮りました。見る角度によって同じ葉とは思えない、
しかもマクロ写真らしいボケがきれいな写真になりました。
こんなふうに葉に沿うような場所からねらっているのです。
撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/160・F2.8・ISO640・WB太陽光
シダの葉をクローズアップで撮影。葉脈がはっきり写るように真裏から撮りました。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/320・F3.2・ISO2500・WB太陽光
茎がねじれていたので、その曲線を活かしつつ、ひとつの花だけが浮かび上がるようレンズの向きを調整しています。ほんの数センチでも撮影位置やアングルが変わるだけで、描写が大きく変わるのがマクロレンズです。ひとつの被写体をいろいろな位置や角度、方向からレンズを向けてみましょう。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F4・+1 1/3補正・ISO800・WB太陽光
ユキヤナギの枝に沿うようにレンズを向けて、ひとつの花だけを浮かび上がらせています。枝に沿って撮る方法はユキヤナギだけでなく、梅や桜など枝に咲く花にも有効です。先端だけでなく、数センチ他の花との間隔があれば、枝の途中の花にピントを合わせて、前後のボケを活かすことも可能ですよ。
マクロレンズを使い始めて間もない方は、花を撮るとき、花の全体像をフレーミングしなければならないと考えてしまいがちです。マクロ写真のいいところは、冒頭でもお話ししたとおり、あなたが「キレイだな」と感じた部分を素直にクローズアップして撮ることです。花が切れても構いませんし、花がキレイに見える角度を探してあげることが重要ですよ。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/800・F2.8・ISO100・WB太陽光
ヒナゲシの花芯が逆光で花びらに映り込んでいました。花全体をフレーミングすると
花芯の映り込みの印象が弱くなってしまうので、花びらの上部をあえてカットし、主題を明確にしています。
また、背景が日陰で真っ暗だったので、色味を加えるために、手前の花越しにレンズを向けています。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F4・+2/3補正・ISO250・WB太陽光
下を向いて咲くレンゲショウマの花芯が見えるよう、地面スレスレのアングルから見上げています。
この花の咲く周囲は大きな木で囲われていたので、その木漏れ日がこんなにキラキラと輝く背景になりました。
アングルを低くしなければできなかった背景です。
3回にわたってお届けしてきた「マクロ写真の教室」、いかがでしたか? わざわざ遠くまで出かけなくても、 身近な草花に目を向けて楽しめるのがマクロ写真の素晴らしさです。お気に入りの写真が撮れたら、ぜひ下記コーナーからご応募ください。
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