- 講師:並木隆(写真家)
- 第3回〈月1回・全3回更新〉
マクロ写真の表現テクニック〈基本編〉
マクロレンズを使ったマクロ写真撮影の基本は、被写体をじっくり観察して「美しい」と感じる部分を見つけることです。よくセオリーとして「花芯の先端部にピントを合わせる」と言いますが、花芯だけが被写体ではありません。花びらがいいなと思ったら、じっくり観察してみてください。色や形、模様だったり、突起があったり、注目するポイントがたくさんありますよ。
撮影データ:EOS 7D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/200・F2.8・ISO100・WB太陽光
真上からユリの花にレンズを向けてみました。先端の雄しべや、雌しべにピントを合わせるのがいけないことではありませんが、花の中で目立つ部分なだけに平凡に見えてしまいます。そこで、さらに寄って付け根部分にピント位置をずらしていくと、このようにまったく違った美しい部分が見えてきます。
花芯以外の美しいと感じる部分を観察しながら探し出せば、個性的なマクロ写真になるはずですよ。
セオリーどおりに雄しべや雌しべの先端部分にピントを合わせた例です。
ユリの花の造形がわかり、それなりに面白い写真にはなりますが、
作品としての表現としては少々不足を感じます。
EF100mm F2.8L マクロ IS USMは、高精度なハイブリッドIS搭載により、マクロ領域を「手待ち」で撮影できるようになった画期的なレンズです。マクロ写真の入門者から上級者まで、幅広く使えるオススメの一本です。このレンズにある3つのスイッチの使い方を解説します。
マクロレンズの代表選手「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」には、3つのスイッチがあります。
それぞれの役割を確認しておきましょう。
「手ブレ補正スイッチ」は、手持ち撮影では常にオンに設定します。三脚使用時はオフにしましょう。
「フォーカスモードスイッチ」は、オートフォーカス(AF)かマニュアルフォーカス(MF)の切り替えです。AFが標準で構いませんが、クローズアップ撮影をするときピントが合いにくいと感じたら、MFに切り替えましょう。
「撮影距離切り替えスイッチ」は、AF撮影時にピントリングの作動範囲を狭めることで、ピントが合わなかったときに合わせ直す時間を短縮する効果があります。でも、合いにくい条件では、作動範囲を狭めても合いやすくなるわけではありません。マクロ領域の撮影ではMFがメインになるので、〈FULL〉にしておきます。
カメラをどのような角度から被写体に向けるか。カメラアングルの変化だけでも花の見え方は大きく変わります。上から、横から、下からと、同じ被写体とは思えないほど、いろいろな表情を見せてくれます。また、アングルによって背景も大きく変わります。花の印象はひとつだけではありません。たくさん美しい表情を見つけ出しましょう。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/320・F2.8・ISO250・WB太陽光
ハイアングルから花を
見下ろすようにして撮影。
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/320・F2.8・ISO250・WB太陽光
花の高さまでアングルを下げて、ほぼ真横からねらいました。背景の変化がわかりますか?
撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F2.8・+1補正・ISO500・WB太陽光
空を見上げるようなローアングルから撮影。背景の変化を楽しめます。
どんな花のどの部分なのか、わざと「わからないように」フレーミングするのも大事なポイントです。わかるようにフレーミングしてしまうと引き気味のフレーミングになり、美しいと感じた部分よりも花全体の印象が強くなってしまいます。
撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F2.8・+1補正・ISO100・WB太陽光
開きかけのハナショウブです。花全体を撮っても、面白みがありませんね。
ではどうするか。じっくり花を観察します。
撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/125・F2.8・+1補正・ISO100・WB太陽光
開きかけた花びらの上からのぞき込んでみると、花びらの隙間から、奥の付け根の部分が見えました。
3方向に伸びる白いラインや、紫の淡い色合いのアクセントが美しいと感じました。
撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F2.8・+1補正・ISO100・WB太陽光
花びらがまだ開いていないので、立っている花びらを前ボケにできると思い、
真上からレンズを向けてこの部分を切りとりました。花全体の印象だけで被写体を見ていたら、
この部分を見ることさえなかったかもしれません。
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