花・クローズアップ! マクロ写真の教室

花・クローズアップ! マクロ写真の教室

  • 講師:並木隆(写真家)
  • 第2回〈月1回・全3回更新〉

実践テクニック講座

「マクロレンズ」の使い分けとピント合わせの技術

「マクロレンズ」とは、一般のレンズよりも被写体に近づいて
ピントを合わせることができる性能を備えたレンズです。

実践13本のマクロレンズの特徴を知ろう

EF-S60mm F2.8 マクロ USMで撮影

撮影データ:EOS 80D・EF-S60mm F2.8 マクロ USM・1/1250・F2.8・ISO100・WB太陽光

EF-S60mm F2.8 マクロ USM

ワーキングディスタンスの短いEF-S60mm F2.8 マクロ USMは、カメラアングルの自由度が高いのが特徴です。たとえばこの写真を見てください。高さ20cm程度の花丈のガーベラよりも低いアングルから見上げるようにレンズを向けられたので、青空を背景に入れることができました。
しかし、レンズと被写体の間の距離が短いぶん、一部分を切り取りながら前ボケを入れるような表現は少々苦手です。

EOS 6D・EF180mm F3.5L マクロ USMで撮影

撮影データ:EOS 6D・EF180mm F3.5L マクロ USM・0.5秒・F8・ISO400・WBくもり

EF180mm F3.5L マクロ USM

ワーキングディスタンスの長いEF180mm F3.5L マクロ USMは、近づくと逃げてしまう虫などをクローズアップ撮影するときに便利です。レンズと被写体の間にある被写体を「前ボケ」として容易に写し込むことができます
この写真では、15cm程度の高低差がある手前のバラ越しに奥のバラの中心部を切りとりました。ワーキングディスタンスが短いレンズなら、手前の花がじゃまになったでしょう。

EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USMで撮影

撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/320・F4・ISO320・WB太陽光

EF100mm F2.8L マクロ IS USM

EF100mm F2.8L マクロ IS USMは、ほどよいワーキングディスタンスのマクロレンズなので、前ボケを取り込むことも、カメラアングルの自由度もあり、マクロ写真入門者におすすめしたい一本です。
まずはこのEF100mm F2.8L マクロ IS USMを使いこなし、アングルの自由度を求めるのであればEF-S60mm F2.8 マクロ USM、ワーキングディスタンス内にある被写体を活かして撮影したいのであればEF180mm F3.5L マクロ USMというように使い分けながら ステップアップしていくとよいでしょう。

実践2入門者に最適なマクロレンズは「100mm マクロ」

EF100mm F2.8L マクロ IS USM 前ボケを入れたクローズアップ撮影

撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/160・F8・ISO320・WB太陽光

適度なワーキングディスタンスがあるEF100mm F2.8L マクロ IS USMは、前ボケを入れたクローズアップ撮影が得意です。手前の花と奥の花をフレーミングし、奥の花にピントを合わせることで、前ボケを取り込んだ作品になります。このとき、ふたつの花が15cm程度離れていれば、画面の左側のようなキレイなボケ味になりますよ。また、水滴のようないつ落ちてしまうかわからない被写体は素早く撮りたいですが、近づきすぎてポトリと落としてしまったり、三脚をセットしている間に落ちてしまったりなんてことがあります。でも、素早く手持ちで撮影できるEF100mm F2.8L マクロ IS USMなら、ねらった瞬間を逃しません!

EF100mm F2.8L マクロ IS USMを装着したEOS 6D

EF100mm F2.8L マクロ IS USMを装着したEOS 6D
マクロ写真の入門に、おすすめできる組み合わせです。

EF100mm F2.8L マクロ IS USMで撮影

撮影データ:EOS 6D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/250・F4.5・ISO500・WBオート

EF100mm F2.8L マクロ IS USMをおすすめするもう1つの理由は、「ハイブリッドIS」を搭載していることです。
「ハイブリッドIS」とは、クローズアップ撮影時に手ブレの大きな原因となる「角度ブレ」と「シフトブレ」の両方を補正する画期的な機能です。クローズアップ撮影で起こりやすいシフトブレに対応することで、三脚を使うのが困難だった超ローアングルや、三脚が立てられない場所でも気軽にレンズを向けられるようになりました。

〈 角度ブレ 〉 〈 シフトブレ 〉
「ハイブリッドIS」角度ブレ補正 「ハイブリッドIS」シフトブレ補正

実践3マクロレンズのピント合わせ術

マクロレンズでのピント合わせの方法

等倍・絞り開放で撮影した場合、焦点距離に関係なくピントの合う範囲(被写界深度)は約1mmと非常に浅くなります。また、大きな花などをクローズアップ撮影すると、倍率が高くなるほど画面全体が同じ色になりやすい(コントラストがなくなる)ので、オートフォーカス〈AF〉ではピントが合いにくくなります。
クローズアップ撮影では、まずマニュアルフォーカス〈MF〉に切り替えて、ピントリングを最短撮影距離まで回しましょう。そこからピントが合うまで被写体に徐々に近付いて行きます。そこでピントが合えば、等倍での撮影ができることになります。
第1回で紹介したクローズアップレンズやエクステンションチューブ装着時と同じピント合わせの方法ですね。

〈クローズアップ撮影 ファインダーのイメージ〉

クローズアップ撮影 ピントが合っていない状態

マニュアルフォーカス〈MF〉に
切り替えて、ピントリングを
最短撮影距離まで回す。

クローズアップ撮影 ピントが合い始めた状態

ピントが合うまで被写体に
徐々に近付く

クローズアップ撮影 ピントが合った状態

マクロ写真の重要ポイント!
ピントを花の中心の花弁の先端部分に合わせましょう。

撮影倍率「等倍」でクローズアップしてみて、ちょっと大きいなと思った場合は、ピントリングをほんのちょっとだけ回してピント距離を長くし、また同じようにピントを合わせてみましょう。ピント距離が長くなった分、被写体が小さく写ります。しっかりピントを合わせ直して撮りましょう。

クローズアップ撮影のピント合わせ

撮影データ:EOS 80D・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・1/160・F2.8・ISO1000・WB太陽光

写真家 並木隆先生

ここがポイント!

  1. 1. 「マクロレンズ」なら被写体に思い切り近づける
  2. 2. 「撮影倍率」によって被写体の大きさが変わる
  3. 3. 焦点距離の違い=「ワーキングディスタンス」の違い
  4. 4. 入門用のベストチョイスは
     「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」

『入門に最適な一本は、使いやすく応用も利く「100mmマクロ」』

EF100mm F2.8L マクロ IS USMの100mmという焦点距離は、本格的なマクロ写真には欠かせません。適度なワーキングディスタンスは、実際のフィールドに持ち出せば真価を発揮してくれることでしょう。 >>「100mmマクロ」をチェック

第3回では、さらに実践的な
「マクロレンズの使いこなし術」に話を進めていきます。

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