- 講師:並木隆(写真家)
- 第2回〈月1回・全3回更新〉
基本テクニック講座
「マクロレンズ」とは、一般のレンズよりも
被写体に近づいてピントを合わせることができる性能を備えたレンズです。
マクロレンズはどのくらいクローズアップ撮影できるかというと、レンズ単体で撮影倍率「等倍」まで撮影可能です。撮影倍率「等倍」とは、被写体とカメラの撮像素子(センサー)に写る像の大きさが同じ倍率のこと。撮影倍率「1/2倍」は被写体の半分の大きさとなります。およそ1/2倍以上の倍率で撮影できるレンズのことを「マクロレンズ」と呼んでいます。
1/5 倍
1/2 倍
1/1 倍
カメラの撮像素子(以前ならフィルム)に写された像の大きさと、実際に写すもの(被写体)の大きさとの比率のことを「撮影倍率」と言います。撮影倍率が大きいほど、被写体を大きく写すことができます。数式で表すと下記のとおりです。
撮影素子上の大きさ
被写体の大きさ
たとえば直径1cmの小さな花を撮影倍率「1倍(等倍)」のレンズを使って、最短撮影距離で撮影すると、撮像素子面で花は1cmの大きさで写ります。
カメラが搭載しているセンサー(撮像素子)は、そのサイズによって「35mmフルサイズ」「APS-Cサイズ」などと呼ばれます。「フルサイズ」と「APS-Cサイズ」のカメラで同倍率のクローズアップ撮影をした場合、センサーサイズの小さなAPS-Cサイズのカメラのほうが、より大きくクローズアップしたように写ります。
ここではセンサーサイズによる画質やボケの違いより、センサーサイズによって写る大きさが変わることを実感してください。
〈APS-Cサイズ〉 | 〈フルサイズ〉 |
---|---|
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一般のレンズと同様に、マクロレンズも焦点距離が長いほど被写体は大きく写ります(撮影位置を変えない場合)。でも、クローズアップできる性能は、どのマクロレンズでも「等倍」までです。
「えっ、等倍までしかクローズアップできないなら、どうして焦点距離60mmや100mm、180mmのマクロレンズがあるの?」と、疑問に思うかもしれません。いいところに気がつきましたね!
被写体を同じ大きさで写そうとした場合、レンズの焦点距離が60mm、100mm、180mmと長くなるほど、被写体から離れても同じ大きさで撮影できます。このときのレンズの先端から被写体までの距離を「ワーキングディスタンス」と呼ぶことは、前回の記事でご紹介しましたね。
同じ倍率で撮影した場合、焦点距離が短いほど「ワーキングディスタンス」は短く、焦点距離が長くなるほど「ワーキングディスタンス」は長くなります。この「ワーキングディスタンス」の違いが、マクロレンズを使い分けるポイントです。
実際の距離感の違いを見てみましょう。
EF-S60mm F2.8 マクロ USMの最短撮影距離は0.2mです。被写体にかなり接近しての撮影となります。
EF180mm F3.5L マクロ USMの最短撮影距離は0.48mです。余裕を持ったワーキングディスタンスをとることができます
EF100mm F2.8L マクロ IS USMの最短撮影距離は0.3mです。適度なワーキングディスタンスで被写体をねらえます。
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