田中達也が選んだ「みんなの冬風景写真」

 
写真家・田中達也先生

田中達也先生

愛知県生まれ。医療ソーシャルワーカーとして精神障害者のケースワークに従事。その後、自然写真家として独立。身近な自然から風景・オーロラと幅広いジャンルを手がけ、繊細で力強い独創的な作風を特徴とする。オーロラと風景を組み合わせた一連の作品は海外からも高く評価され、カメラ誌・アウトドア誌・カレンダーなど多くの媒体に作品を発表している。
日本写真家協会・日本自然科学写真協会 各会員

それでは、今回選んだ応募作品を見ていきましょう!

  • 舞夢さん「寒い朝」
  • みっつさん「氷の気泡」
  • キッシーさん「力強く」
  • 佐藤光彦さん「波打ち際の宝石」
  • おんち・はじめさん「雪肌を染め、影を深めて」
  • アイさん「おもてなし」
  • telchanさん「外は白い雪」
  • あおさん「会津川口駅」

※作品をクリックすると講評を閲覧できます。

応募作品も日に日に増加傾向で、皆さんの作品を楽しく拝見させていただきました。冬景色への関心が増すなかに、皆さんの幅広い視点が見て取れました。素晴らしい作品が多く驚かされましたが、露出がアンダー傾向の作品が多く、そのことが気になりました。また、どこかで見たような類似作品も目立ちました。テーマが「冬=雪や氷」というイメージが強いためか、凍てつくような厳しさを主張した作品が多く感じられました。そこで今回は身近な景色や被写体も選んでいます。冬を感じさせる風景であればよいので気楽にご応募ください。

凍てつく朝の情景。身近な被写体で表現しましたね。

舞夢さん「寒い朝」

舞夢さん「寒い朝」

PowerShot G15・F2.8・ 1/80秒・ISO80・WBマニュアル

霜化粧を施された美しい葉牡丹です。早朝とのことですが撮影した時間帯がよく、型くずれのない刺のような霜の結晶もシャープに捉えています。この霜が描き出すアートを作品化できたのは作者の無駄のない構図のうまさです。また絞り数値の選択もマッチしており、葉牡丹の中心付近から外側の葉にかけて柔らかくぼけていく諧調が立体感を醸し出しています。少し早起きすれば誰でも撮影できそうな身近な被写体の魅力を感じさせてくれる作品です。

田中達也

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冬の被写体は「足元」に隠れている!

自然界の神秘的な現象をモノトーンで表現。

みっつさん「氷の気泡」

みっつさん「氷の気泡」

EOS 7D Mark II・EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS・F5・ 1/160秒・+1 1/3補正・ISO160・WBオート

凍った湖に現れた珍しい現象です。丸く白くなった部分をよく見ると水中へと伸びています。これは湖底から発生したメタンガスが空気中に放出する前に、湖面の氷に阻まれ閉じ込められたことによりできたものです。氷の透明感もよく筒状に伸びる様子も見て取れます。まさに自然の神秘です。色の再現がグレーでモノトーンですが色温度を低くして青味を再現できたら、いっそう冷たさが伝わり印象度も高まったでしょう。

田中達也

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この被写体を発見した作者のセンスが素晴らしい。

キッシーさん「力強く」

キッシーさん「力強く」

EOS 10D・F8・ 1/350秒・ISO100・WBマニュアル

急な斜面に見つけた雪をまとったブナ。白さがまぶしいほど印象的な美しい光景です。この場面を見つけた作者の着眼点が素晴らしい。画面構成では斜面とブナの位置関係がバランスよく組み合わさり緊張感ある状況ということがよくわかります。完成度の高い作品だけに雪面の露出オーバーが悔やまれます。もう0.5EVほどアンダーであればハイライトが飛ばす日陰の青さも際立ったでしょう。

田中達也

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雄大な雪山の「白さ」を表現するには? RAW現像入門

美しい冬の海岸風景。氷群と海に絞っても面白かった。

佐藤光彦さん「波打ち際の宝石」

佐藤光彦さん「波打ち際の宝石」

EOS-1D X・EF24-70mm F2.8L II USM・ F16・1/40秒・ISO200・WBマニュアル

海岸に打ち寄せられた氷の固まりが群れています。河川から海へと流れ出た氷が岸に打ち上げられる北海道ならではの珍しい光景です。氷が太陽光を反射してギラギラと輝く様子はまさに宝石のようです。氷群から太陽まで雄大な風景として構成していますが、太陽の存在は海に伸びる光の道でも見て取れます。ここでは太陽をあえてカットし、海面と氷群だけで構成したほうが、より美しく印象的な風景になったのはないでしょうか。

田中達也

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日没間際の雪原風景を美しい色で再現できましたね。

おんち・はじめさん「雪肌を染め、影を深めて」

おんち・はじめさん「雪肌を染め、影を深めて」

EOS 6D・EF24-70mm F4L IS USM・F10・ 1/200秒・-2/3補正・ISO100・WBマニュアル

日没間際の光を浴びて雪原が美しく染まっています。露出の選択もベストで金色から紫色にかけて印象的な雪色を再現しています。人のいない場所を探して手持ち撮影されたそうですが、機動性を活かしたその意図が実を結びました。構図的には太陽が稜線にかかる間際のため、空の空間の割合がやや多く気になります。太陽上空を半分切り詰め、その分画面下を入れたほうが、遠近も誇張されスケール感が出たでしょう。

田中達也

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冬の情景を無駄のない構図で収めています。

アイさん「おもてなし」

アイさん「おもてなし」

EOS 7D・EF24-105mm F4L IS USM・F4・ 1/160秒・ISO100・WBオート

店の軒先に掲げられた歓迎の立て看板と赤い漬け物樽。静かに降る雪の奥には赤い橋のたもとで雪かきをする人の姿が目に入ります。冬の観光地のひとコマをさりげなく撮影した懐かしさ漂う作品です。ひとつひとつの素材あるいは要素がぶつかることなく「絵」としてまとまっています。暗い軒先によって降雪が浮かび上がり昭和の日本映画のワンシーンのようです。

田中達也

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何気ない冬の情景にカメラを向けたセンスが素晴らしい。

telchanさん「外は白い雪」

telchanさん「外は白い雪」

EOS M2・EF-M22mm F2 STM・F2・ 1/160秒・ISO100・WBマニュアル

ホテルの窓から撮影されたワンシーンとのこと。ストロボで降雪を強調し印象的な作品に仕上げています。この作品の素晴らしさは駐車中の車の色と、それらの配置を生かした画面構成です。地味な白と黒の車を中央よりに捉え、目立つ赤い車は左端に画面構成しています。さらに背景は暗く落ち、見え隠れする路地風景に降雪を重ねています。一瞬のチャンスをものにした作者のセンスの良さが光ります。

田中達也

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降りしきる雪を止めて、幻想的に撮る! おすすめのストロボは?

見飽きることがない幻想的な冬風景。

あおさん「会津川口駅」

あおさん「会津川口駅」

EOS 60D・EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II・F5・ 20秒・ISO100・WBオート

静けさに包まれたなかに物語性を感じさせます。雪景色をバックに夜の駅舎を引き気味に捉えた画面構成はなんとも幻想的です。よく見なければ駅の存在も停車中の列車もわからないほどです。ダークな空や水面など無機質な空間を活かした描写のうまさが際立ちます。ライトアップされた混ざり合う色彩効果の町並みの様子も美しく、見飽きることのない作品に仕上がっています。

田中達也

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