愛知県生まれ。医療ソーシャルワーカーとして精神障害者のケースワークに従事。その後、自然写真家として独立。身近な自然から風景・オーロラと幅広いジャンルを手がけ、繊細で力強い独創的な作風を特徴とする。オーロラと風景を組み合わせた一連の作品は海外からも高く評価され、カメラ誌・アウトドア誌・カレンダーなど多くの媒体に作品を発表している。
日本写真家協会・日本自然科学写真協会 各会員
風景写真は「朝夕がベスト」といわれます。それは本当でしょうか? 日中は太陽が高く昇るため、ライティングの自由度も高まり光線状態の違いを楽しめます。同じ被写体でも撮影ポジションを選び、斜光や逆光を選択することで、印象的な風景になります。昼間の絶景をドラマチックに撮影してみましょう。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F16・1/125秒・ ISO100・WB太陽光
撮影地:福島県裏磐梯高原
日陰の湖畔。奥の日向の部分では、斜光線が雪面を照らしています。
このハイライト部分が画面にメリハリを持たせるためのポイント。
日中の高いコントラストが見せる気持ちのよい風景です。
撮影データ:EOS 5D Mark II・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F16・1/400秒・ ISO320・WBオート
撮影地:長野県茅野市
勢いよく落下する落水にかかる虹を高速シャッターで写し止めました。まさにドラマチック!
南向きの滝で虹と出会えるのは、日中の限られた時間帯だけです。
撮影データ:EOS 5D Mark II・EF24-70mm f/2.8L USM・F6.3・1/25秒・ISO160・ WBマニュアル(5500K)
撮影地:長野県王滝村
滝壺周辺で見つけた青い氷結です。木々に囲まれた日陰なので直射光こそ入りませんが、
上空や周辺からの拡散光によって、青い光が氷の内部を照らしています。
日の高い太陽からの拡散光だから得られる落ち着いた描写です。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF14mm F2.8L II USM・F11・1/50・ISO200・WB マニュアル(5500K)
撮影地:青森県青森市
スノーシューを履いて森に入りました。見上げると雲間から青空が見えています。
見上げるアングルは逆光が常識ですが、雪面がレフ版代わりになってくれます。
雪面をレフ板代わりに活用するのは、冬の風景撮影の新常識です。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF16-35mm F2.8L USM・F11・0.4秒・ISO100・ WB太陽光
撮影地:長野県高山村
「新常識2」のパートでは、雪は白ではなく「透明」というお話をしました。では、氷の色は? やはり透明です。光の性質(波長)の違いによって、白や青に見えるのです。空気は無色透明ですが、晴れた日の空はきれいなブルーに見えますよね。それと同じ理由で氷がブルーに見えるのです。
冬は天候不順が多く、雪の多い地方ほど荒れた天候が続きます。せっかく出かけた撮影地の天候が荒れれば撮影意欲も減退してしまいます。しかし、降雪・風雪・吹雪などの荒天時は、冬らしい風景が見られるシャッターチャンスです。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F5.6・1/200秒・+2/3 補正・ISO100・WBオート
撮影地:北海道上富良野町
降る雪の撮影は、誰もが一度はねらいたくなるイメージ表現の対象です。
AF撮影では背景にピントが合うため、イメージどおりに降雪を捉えることができません。
MFに切り替え目前の雪に合わせるのです。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF24-70mm F2.8L USM・F7.1・1/100秒・-2/3補 正・ISO200・WB5500K
撮影地:青森県十和田湖
岸辺に打ち寄せる波濤。分厚い雪雲に太陽光は遮断され、まさに悪天候。
そんな日は、打ち寄せる波で自然界の荒々しさを表現しましょう。
波がくだけて打ち寄せるタイミングは、迫力あるシャッターチャンスです。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF16-35mm F2.8L USM・F6.3・1/10 秒・ISO160・ WB オート
撮影地:福島県裏磐梯高原
強風が吹きつけ、岸辺の葦が大きく揺れていました。
草木の揺れをスローシャッターで撮影することで「動感」が得られます。
まずは0.5秒ほどの低速シャッターにセットして、
ブレ加減を確認しながら最適なシャッター速度を探りましょう。
撮影データ:EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L IS USM・F8・1/100・ISO100・ WBオート
撮影地:長野県阿智村
静かに降る雪は写真になっても、吹雪は? むしろ積極的に撮るのが新常識です。
木々をなぎ倒すかのように右から左へと大粒の雪が吹雪いてきました。
建物に身を隠して吹雪を避ければ、迫力のあるシーンを撮影できます。
(くれぐれも安全・防寒には注意して撮影を楽しみましょう!)
冬の風景写真の「新常識」はいかがだったでしょうか。「常識」という既成概念にとらわれず、気になったことは試してみることが、自己表現や独創的な表現に向かう近道です。ぜひ冬の撮影を楽しみましょう。次回は、冬にしか撮れない奇跡的なシーンの世界へ皆さんをお誘いします。またお会いしましょう。
その他にも、さまざまなコンテンツが満載