秋の「彩り」を撮ろう

秋の「彩り」を撮ろう

  • 講師:山本学(写真家)
  • 第3回〈月1回・全3回更新〉
写真家・山本学先生

山本 学

兵庫県宝塚市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。卒業後、同写真学科研究室勤務を経て現在フリーランス。写真家・高田誠三氏に師事。日本の風景・自然界の「色」を求めて作品を撮影し続けている。EOS学園など写真教室でのアマチュアの指導にも定評がある。楽しいトークと、きめ細やかでわかりやすい指導は、幅広い年齢層に支持されている。

色彩表現の基本テクニック

きれいな写真を撮るためのポイントはたくさんありますが、なかでも見た目の印象を決めるのが「色彩」です。
とくに鮮やかな色に満ちた秋の風景写真においては、色彩表現が主役。
さあ、色彩表現の基本テクニックを見ていきましょう。

基本1色彩を表現するには「理想の光」をつかまえよう!

太陽は自然界の一点照明です。太陽光はその方向から、順光・逆光・サイド光と大きく3方向の光に分類できます。それをどのように取り入れるかで、写真の印象はまったく変わってきます。

順光・逆光・サイド光の図

光の変化を求めるには撮影者が「動く!」ことが重要です。また、太陽は東から西へと刻々と移動していきますから、その動きを待って作品に生かすこともできます。
薄曇りの日には、雲が太陽光を拡散してくれるので、柔らかい光がまんべんなく大地を照らして被写体に強い影が出なくなり、日本画風のやさしいトーンで撮ることができます。

順光で撮影

順光で撮影

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM(焦点距離40mm)・絞り優先AE(F11・1/125)・ISO400・WB太陽光
撮影地:栃木県 中禅寺湖湖畔

逆光で撮影

逆光で撮影

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM(焦点距離67mm)・絞り優先AE(F16・1/100)・+1補正・ISO400・WB太陽光

時間が変われば太陽の位置も当然変わります。ほぼ同じ場所で撮影していますが、
紅葉の色の再現がかなり違うのがわかるでしょう。
順光で撮った上の写真は、紅葉の赤が鮮やかに出ました。
逆光で撮った下の写真は、背景の水辺の輝きはありますが、赤い色はくすんでいます。

サイド光〈あり〉

サイド光〈あり〉

撮影データ: EOS 7D・EF24-70mm F2.8L USM(焦点距離112mm ※フルサイズ換算)・絞り優先AE(F16・1/13秒)・-2/3補正・ISO200・WB太陽光
撮影地:滋賀県東近江市 永源寺ダム

サイド光〈なし〉

サイド光〈なし〉

撮影データ:EOS 7D・EF24-70mm F2.8L USM(焦点距離112mm ※フルサイズ換算)・絞り優先AE(F16・1/5秒)・-2/3補正・ISO200・WB太陽光

強めのサイド光で撮影した上の写真は、
背景とメインの被写体の明暗差がはっきりして立体感が出ました。
同時に、紅葉の鮮やかな黄や赤の色が印象的な写真になりました。

逆光で撮影

逆光で撮影

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離70mm)・絞り優先AE( F16・1/80秒)・+2/3補正・ISO100・WB太陽光
撮影地:神戸市立森林植物園

順光で撮影

順光で撮影

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離102mm)・絞り優先AE( F11・1/50秒)・-1補正・ISO100・WB太陽光

上の写真は、逆光による透過光で葉っぱの存在感が現れて美しく、
背景の水草が反射して輝いて印象的になりました。
下の写真は、同じ池を順光で撮影したもの。葉っぱは赤さを増していますが、
水面の水草は水の色と同化して立体感がありません。
イメージする色彩が出せるように、光の方向を見極めて撮りましょう。

基本2光と色をあやつる「PLフィルター」マジック!

PLフィルター

よくカメラ雑誌で目にする「PLフィルター(円偏光フィルター)」。PLフィルターは反射を取り除くために用います。風景写真では、葉っぱの表面や水面の反射や、空気中のチリなどの反射を取り除くときに使います。空をくっきりクリアに写したいとき、紅葉を色鮮やかに写したいときの必須アイテムです。

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フィルター比較

撮影データ:
(左)EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L USM(焦点距離125mm)・絞り優先AE(F5.6・1/50秒)・-1/3補正・ISO400・WB日陰
(右)EOS-1Ds Mark III・EF70-200mm F2.8L USM(焦点距離125mm)・絞り優先AE( F8・1/15秒)・-1/3補正・ISO400・WB日陰
撮影地:滋賀県 金剛輪寺 

雲が太陽光を拡散してくれているので、柔らかい光が満遍なく光が当たっています。
紅葉と屋根瓦、それぞれの表面に光が反射して白っぽくなっていたので、
PLフィルターで反射を取り除き、色の締まりを表現しました。異なる露出設定にもご注目を。

フィルター比較

撮影データ:
(左)EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離200mm)・絞り優先AE(F16・1/40秒)・-1/3補正・ISO400・WBくもり
(右)EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離200mm)・絞り優先AE(F16・1/160秒)・-1/3補正・ISO400・WBくもり
撮影地:長野県小谷村 鎌池

大粒の雨。正直なところ、「撮影するのも面倒くさいな」と思ってしまうほど!
こんな場面でも、色を出すことができます。
レンズの表面に雨が付かないように注意をしながらPLフィルターを回し、効果を確認。
見事に水面の反射を取り除き、色彩が現れました。

身近な秋を見つけて撮ってみて!

秋の風景写真というと、紅葉の名所でなければ撮れないと思ってしまいがち。いいえ、あなたのお住まいの地域にも、すてきな秋の風景はいくらでも見つけることができますよ。たとえば近所の公園、イチョウの並木道など。広大な自然風景は確かに素晴らしいですが、街中の紅葉とビル群との組み合わせなどの被写体に、「現代の秋」を見出すのも刺激的ですよ。

街中のイチョウ

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