秋の「彩り」を撮ろう

秋の「彩り」を撮ろう

  • 講師:山本学(写真家)
  • 第2回〈月1回・全3回更新〉
写真家・山本学先生

山本 学

兵庫県宝塚市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。卒業後、同写真学科研究室勤務を経て現在フリーランス。写真家・高田誠三氏に師事。日本の風景・自然界の「色」を求めて作品を撮影し続けている。EOS学園など写真教室でのアマチュアの指導にも定評がある。楽しいトークと、きめ細やかでわかりやすい指導は、幅広い年齢層に支持されている。

基本ルール

基本ルール3「絞り値」の味付けで秋の風景に深みを与えよう

撮影後には絶対に変えられない3大要素、最後に取り上げるのは「絞り値」です。
皆さんご存じのように、絞りを絞れば被写界深度(ピントが合う範囲)が広がります。絞りの数値を小さくすれば被写界深度が狭まり、ピントを合わせた位置から離れている背景や手前はボケやすくなります。
撮るときに「この絞り値で!」と決定できればベストですが、なかなか難しいもの。絞り値を変えて撮っておき、あとでチョイスできるようにします。絞り値によって、写真がどのように変わるのか見ていきましょう。

絞り値〈F2.8〉で撮影

絞り値〈F2.8〉で撮影

絞り値〈F11〉で撮影

絞り値〈F11〉で撮影

水面に浮かんだ紅葉の風景を切りとりました。絞り値の変化による背景のボケ具合を確認してみましょう。
絞り値〈F2.8〉では、画面手前はシャープに、画面奥はボケて奥行き感が出せました。
絞り値〈F11〉に絞り込むと、画面全体にピントが合っているように見え、
シャープな描写の写真になりました。
どちらが良い悪いということではありません。自分がどんなふうに表現したいのか。
絞り値をコントロールすることでイメージが決まるのです。

絞り値〈F4〉で撮影

絞り値〈F4〉で撮影

絞り値〈F8〉で撮影

絞り値〈F8〉で撮影

絞り値〈F16〉で撮影

絞り値〈F16〉で撮影

今度は、同じ場所で絞り値を〈F4〉〈F8〉〈F16〉と変えて撮影した写真です。
その違いは一目瞭然! 背景の黄色い木立の変化がわかりますね。
もちろん好みもありますが、私は主役の赤い枝に一目惚れして、この部分を印象的に見せたいと思いました。
赤い枝を際立たせる絞り値〈F4〉のカットを選びます。

絞り値〈F2.8〉で撮影

絞り値〈F2.8〉で撮影

絞り値〈F8〉で撮影

絞り値〈F8〉で撮影

よく晴れた日、日差しに輝く水辺の風景をバックに、紅葉を撮りたくなりました。
絞り値を変えると、背景のボケ具合の変化により、キラキラ感の描写も変わってきます。
絞り値を小さめにすれば、光は大きな「玉ボケ」となって写ります。絞り値を大きくすれば、
光のボケは小さく粒がそろった状態で写ります。

異なる絞り値で撮影しておくことで、好みの仕上がりの一枚を選ぶことができます。

太陽の「光芒」を入れて秋の風景のアクセントに!

雲ひとつない秋晴れの空の下で、何か画面にアクセントを加えたいとき、太陽を取り入れてみるとよいですね。望遠レンズで太陽をフレーミングすると、露出が極端に太陽の影響を受けてしまいます。フルサイズなら50mmより広角、APS-Cサイズのカメラならは36mmより広角側で撮影すると露出の影響を抑えつつ、風景の中の太陽をアクセントとして写しやすくなります。

※ファインダーで直接太陽を見ると目を傷つけるおそれがあります。注意しましょう。

光芒

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF16-35mm F4L IS USM(焦点距離16mm)・F16・1/250・+1補正・ISO400・WB太陽光
撮影地:徳島県 剣山周辺

太陽と風景を一緒に撮影したときに、放射状の光の帯が現れることがあります。
これは「光芒」といって強い光がレンズを通ったときに、
レンズの「絞り羽根」が重なっている部分から光が漏れて写り込む現象です。
こんなふうに光芒を写したいなら、絞り値はF11やF16ぐらいまで絞るといいでしょう。

秋の風景撮影は、森の熊さんにご用心!

もう何年前のことでしょうか。紅葉真っ盛りの時期、東北地方のとある山へ3日間の撮影旅行に出掛けました。2日目の夕方はえらく冷えこみ、地元の方は「明日の朝は雪だね」と話していました。

「ん? 紅葉に雪!? それは絶好のチャンス!」

私はその夜、ワクワクして眠れませんでした。翌朝、窓を開けると一面の雪景色! 真っ赤な紅葉の上に白い雪がかぶさり、格好の被写体に。夢中になって撮りまくりました。
スポットを探しながらクルマで移動していると、100mほど先の路上に黒いカタマリが近づいてくるではありませんか。

「ク……クマ!」

のしのしと向かってきたクマは30mほど接近した場所で立ち止まり、そのあと山に入っていきました。そりゃあクマも急に雪が降られたら困りますよね。
写真を撮るために山にでかけて、クマに襲われるようなことがあってはいけません。ザックに「熊除けの鈴」を付ける、危険なエリアには絶対に入らないなど、くれぐれも用心してください。

写真家 山本学先生

ここが
ポイント!

  1. 1. 「ピント」位置は、手前3分の1が基本原則
  2. 2. 遅い、速い「シャッター速度」で撮っておこう
  3. 3. 表現の自由度が広がるISO感度「オート」を活用しよう
  4. 4. 開く、絞り込むなどいくつかの「絞り値」で撮っておこう

『紅葉は、異なるパターンの露出で撮っておくべし!』

その場で思いつくイメージもあるとは思いますが、後からカメラの設定を変えることは不可能です!ですから撮影時にシャッター速度や絞り値、ピント位置を変えて撮影しておき、あとでベストショットを決める選択肢を増やすため、また、「ああしておけばよかった!」などと後悔しないために、パターンを変えて撮影しておきましょう。

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