秋の「彩り」を撮ろう

秋の「彩り」を撮ろう

  • 講師:山本学(写真家)
  • 第1回〈月1回・全3回更新〉
写真家・山本学先生

山本 学

兵庫県宝塚市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。卒業後、同写真学科研究室勤務を経て現在フリーランス。写真家・高田誠三氏に師事。日本の風景・自然界の「色」を求めて作品を撮影し続けている。EOS学園など写真教室でのアマチュアの指導にも定評がある。楽しいトークと、きめ細やかでわかりやすい指導は、幅広い年齢層に支持されている。

基本ルール

基本ルール3滝&紅葉の「落差」と「広がり」をつくる方法!

滝はとてもフォトジェニックな被写体ですね。激しく水が落ちる「落差」を表現したいときは縦位置、滝壺など広がりを求める場合は横位置の構図で撮影してみましょう。
そこに紅葉をどのように絡ませるか。探っていきましょう。

ふくべの大滝と紅葉

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離110mm)・
絞り優先 AE(F25・1/15秒)・-1/3補正・ISO100・WB太陽光・ピクチャースタイル忠実設定

撮影地:石川県白山市 ふくべの大滝
[MAP]

落差86mのダイナミックな滝です。
この落差による迫力を表現するために、滝の上下をカットして、下に紅葉をアクセントで添えました。

ふくべの大滝と紅葉

撮影データ:EOS 6D・EF24-70mm F2.8L USM(焦点距離38mm)・
シャッタースピード優先 AE(F7.1・1/500秒)・ISO400・WB太陽光・ピクチャースタイル忠実設定

撮影地:石川県白山市 ふくべの大滝

同じ滝を今度は横位置の構図で。滝と紅葉を対比させ、広がりのある風景として表現しました。

高野大滝と紅葉

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM・
シャッタースピード優先 AE(F16・1秒)・-1補正・ISO100・WBくもり・ピクチャースタイル忠実設定

撮影地:和歌山県 高野山 高野大滝

滝を撮るとき、必ずしも滝壺を入れる必要はありません。滝壺をカットする、
もしくは少しだけ入れることによって、滝の落差やダイナミックさが加わる構図になりますよ。

水面の落ち葉

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM(焦点距離200mm) シャッタースピード優先 AE(F22・20秒)・-1補正・ISO100・WB日陰

水に流れがあり、落ち葉があったので、スローシャッターにして撮影してみました。このときは動かない岩にピントを合わせました。また天気がよかったので周囲の紅葉が、水面にたくさん映り込んでいました。

くもりや雨の日こそ、秋の風景撮影のチャンス!

写真は天気の良い時にしか撮影はできない? それは撮影する手間が増えるのが嫌なだけ! 雨の日は傘やレインコートにカメラ用レインカバーなど面倒くさい? わかります! でも私は、雨の日になると喜んで撮影に出かけます。なぜならば、雨に濡れた紅葉をしっとり、艶やかに撮影できるから。雨や曇天の撮影で気をつけたいのは、空を構図に取り入れないこと! 空をカットして紅葉の彩りに注目してみましょう。雨の中の美しい紅葉の撮影、きっとハマりますよ!

雨の日の紅葉

撮影データ:EOS 5D Mark II・EF24-70mm F2.8L USM(焦点距離43mm)・
絞り優先 AE(F16・0.6秒)・-2/3補正・ISO400・WBくもり ピクチャースタイル「忠実設定」

撮影地:新潟県妙高市 笹ヶ峰

雨は空気中のほこりなどを落としてくれ、紅葉に付着した汚れも洗い流してくれます。
そのうえ水分でツヤが出て鮮やかさが増します。

霧の中の紅葉

撮影データ:EOS 5D Mark II・EF24-70mm F2.8L USM(焦点距離51mm)・
絞り優先 AE(F16・1/13秒)・ISO400・WBくもり・ピクチャースタイル「忠実設定」

撮影地:長野県 戸隠 鏡池

靄(もや)や霧は、余計な遠景を消してくれるので幻想的な演出ができます。
出てほしいときに出てくれないことが大半ですが(笑)。
こんな情景に出会ったときは、いろんな角度から撮影してみよう!

基本ルール4紅葉の山々の「高さ」はあなたが決めてよし!

山の高さを決めるのは、撮影者です!」と言うと驚くかもしれません。もちろん写真の表現上のことですよ。写真の上辺と山の稜線との隙間が開けば開くほど、山が低く見えてしまいます。画面いっぱいに隙間なく山を入れれば、どんな山でも高い山に見えます。
秋らしい雲を作品に取り入れるなら、空を大きく取り入れ「空の写真」にします。その場合、紅葉の山が低く見えるのは気にしないこと。反対に、空に雲がない場合は空の部分を極力少なくし、山腹の紅葉を活かします。

広がる空とススキ

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF24-105mm F4L IS USM(焦点距離50mm)・
絞り優先 AE(F11・1/100秒)・+1補正・ISO400・WB太陽光・ピクチャースタイル「忠実設定」

撮影地:秋田県にかほ市 鳥海山山麓

美しい空の雲を背景に、風にそよぐススキを見せたかったので、
撮影位置を低くするため、しゃがんで撮影しました。
背景の鳥海山よりも広がる空の印象を出すために、空を多く取り入れた結果、
山が低く感じられますが、この場合はねらいどおりです。

山腹の紅葉

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM (焦点距離75mm)絞り優先 AE(F16・1/25秒)・
-2/3補正・ISO400・WB太陽光・ピクチャースタイル忠実設定

撮影地:宮城県栗原市 栗駒山山腹

山腹の彩りを引き立たせるには、空の面積を極力少なくしてフレーミングします。
いくら見事な青空でも、空を入れすぎないことです。
青い部分よりも錦絵的な秋の山が表現できます。

空間の活かし方は「日本画」に学ぶ!

私は、日本を代表する画家・東山魁夷氏の作品が大好きです! 何度見ても飽きることがありません。そんな写真を撮ってみたい! そのために必要なことのひとつが「間」の取り方だと思っています。
写真の構図における「配置」についてお話しましたが、その被写体が向いている方向、垂れている方向、流れている方向に空間をつくると、構図はまとまりやすくなります。

桜の花

撮影データ:EOS 7D・EF70-200mm F2.8L IS II USM(フルサイズ換算 232mm相当)・絞り優先 AE(F5.6・1/50秒)・ISO200・WB太陽光・ピクチャースタイル「忠実設定」

桜の花にピントを合わせ、枝が右方向に向いていたので、
右側に空間をつくり「間」を取り入れました。

写真家 山本学先生

ここがポイント!

  1. 1. 構図のポイントは2つ。「配置」と「比率」!
  2. 2. 紅葉を撮るときは「団体客より個人客」
  3. 3. 撮りたい主役を1つに絞って撮ってみよう
  4. 4. 滝・山の「高低」「広狭」は撮り方次第!

『紅葉を引き立てる「構図」は、自分の足で探すべし!』

視界に入って来た秋の被写体。まずはじっくりと観察して、どんな角度・構図で撮影すればよいのか考えてみよう。この考える行為が練習です。
ゴルフの打ちっ放しのように練習! 練習が上達の近道! 練習を繰り返していくうちにイメージや感覚がつかめるようになります。そして紅葉狩りに出かけたときが本格コースでプレーするようなものです。
秋の空気感を肌で感じ、カメラを通して紅葉や空を観察していれば、気持ちも優雅になりますよ!

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ありがとうございました。

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