花火写真ギャラリー&撮影テクニック「夢幻花火」
工藤 智道
写真家・EOS学園講師
工藤 智道
1969年、横浜生まれ。 日本写真芸術専門学校卒。卒業後、風景写真家の竹内敏信氏に師事。4年間のアシスタントを経て独立。日本の自然風景、都市風景を撮り、夜景や花火の撮影もこなす。写真専門誌で撮影、執筆も数多くパソコン誌、デジタルカメラ専門誌でも活躍。日本写真家協会会員。
EOS学園 講師紹介へ全国各地で開催されている花火大会。美しく大迫力で撮影してみたいですよね。難しそうな花火の写真ですが、ポイントを押さえれば意外とカンタンに楽しめますよ。今回は、ぜひマスターしたい花火撮影の「フォトテク」を紹介しましょう。
作品ギャラリー 「夢幻花火」
EOS 5D Mark III・EF24-70mm F4L IS USM・B(バルブ)・F22・8.1秒・ISO100
バランスよく打ち上がる花火を露光していくのが難しい花火の撮影。撮影してみないと結果はわからないものです。この写真では、高く打ち上がる花火と低い位置で開く花火が、バランスよく写るようにねらいました。
EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM・B(バルブ)・F22・3.2秒・ISO100
高く打ち上がる花火は、縦位置のほうが構図的にしっくりときます。カラフルな花火がタイミングよく打ち上がったこの場面では、縦位置にしたことで華やかに色とりどりの花火を写し込むことができました。
EOS 60D・EF24-105mm F4L IS USM・Mモード・F16・4秒・ISO100
通常はピントが合っている状態から、ピントリングを回してぼかして撮る「ピントずらし」のテクニックですが、この写真は逆に、ぼかした状態から無限遠方向へピントリングを回して撮影しました。ぼけた状態から露光していくのは、フレーミングやタイミングが難しいのですが、成功するとこのような作品に。
EOS 5D Mark III・EF70-200mm F2.8L IS II USM・B(バルブ)・F22・2.1秒・ISO100
花火大会の多くは、終盤に大きな尺玉やスターマインを打ち上げます。この写真もクライマックスの花火。明るい花火が多いため、絞りを絞り込んで明るくなり過ぎないように撮影した一枚。写真なら見た目の迫力だけではなく、幻想的なイメージを表現することも可能です。
How to shoot? 花火撮影の機材・設定
さあ、ここからは、花火撮影の実践テクニックを紹介しましょう。
花火大会には多くの見物客が訪れ、日没後は身動きがとれないほど混雑する場合も。ベストポジションから撮影するためにも早い時間から会場入りし、撮影可能なエリアに場所を確保して機材をセットしましょう。次のような機材があると便利ですよ。
- カメラボディ
- レンズ(標準ズームレンズ、望遠ズームレンズ)
- 三脚(がっちりと安定感があるものをチョイス)
- リモートスイッチ(バルブ撮影の必需品)
- ペンライト(必ず持参しましょう)
- うちわ(花火撮影のマストアイテムです!)
敷物(明るい色のレジャーシートがおすすめ)、飲み物(夏場は水分補給をお忘れなく)もぜひご用意を!
花火撮影のマストアイテム
「黒いうちわ」を作ろう!
花火撮影でもっとも重要なアイテムが「うちわ」です。うちわに黒い紙を両面テープで貼り付けると簡単に作ることができます。うちわの使い方は、このページの「花火の撮り方テクニック」をチェック!
カメラ設定は事前にチェック!
基本のカメラ設定は、次の5つです。B:長時間露光(バルブ)モードでレリーズシャッターを使い、約10秒~数十秒の露光を行います。
- 〈モードダイヤル〉はB:長時間露光(バルブ)モード
- 〈絞り〉はF11~F22(絞りで写真の明るさを調整)
- 〈ISO感度〉は低感度のISO100
- 〈ホワイトバランス〉はオートホワイトバランス(AWB)
- 〈ピクチャースタイル〉は「スタンダード」もしくは「風景」
モードダイヤルは「 B(バルブ)」に合わせます。バルブとは、シャッターボタンやリモートスイッチを押している間 はシャッターが開きっぱなしになる機能です。長時間の露光が必要なとき設定します。
モードダイヤル に「B」がない機種では、「M(マニュアル露出)」に設定し、メインダイヤル をシャッター速度が遅くなる方向に回していくと「buLb(バルブ)」と表示 されます。
ピント合わせは
「MF」「置きピン」 が基本!
カメラに三脚を固定して長時間露光を行う花火撮影には、リモートスイッチ(レリーズ)は必需品です。リモートスイッチは、風景・夜景撮影、マクロ撮影などにも利用できるので、ぜひ持っていたいアイテムです。
写真(右)は、リモートスイッチ RS-80N3。コード長80cmのリモートスイッチです。価格などの詳細はこちらをチェック!
花火のピント合わせは、AF(オートフォーカス)で行います。一度上がった花火に対してピントを合わせておきます。最初に合わせたピント位置が変わらないようにするために、レンズのフォーカスモードスイッチを「MF」に切り替え、いわゆる「置きピン」で撮ります。花火撮影では、長時間露光で何発もの花火を重ねて撮ります。露光中に誤ってAFが再び作動し、ピント位置が動くのは避けたいからです。
〈応用テクニック〉
ピント位置をずらさないカスタマイズ設定
シャッターボタンやリモートスイッチを半押ししても、一度合わせたピントが動かないようにするには、ピント合わせをEOSの任意のボタン(「AF-ON」ボタンなど)で行うように操作ボタンをカスタマイズします。シャッターボタンやリモートスイッチではAFが作動しなくなるので、快適な撮影ができます。
How to shoot? 花火の撮り方テクニック
うちわを使ってタイミングよく撮ろう
花火は不規則に打ち上がるため、露光するタイミングが難しい被写体です。このため、決まったシャッター速度ではタイミングよく撮影できません。そこで活躍するのが「黒いうちわ」です。手順は次のとおりです。
① うちわをかざす② うちわをはずす(露光する)
- ① B(バルブ)でシャッターを開ける前にレンズの前にうちわをかざし、シャッターを開けます。
- ② 花火が打ち上がり、開く直前でうちわをレンズの前からはずし、花火が開ききるまで露光します。
① ②の動作を繰り返し、いくつかの花火を写し込んだらうちわをかざすか、シャッターを閉じます。慣れるとタイミングよく撮影できるようになりますよ。
撮影ポジションは「風上」が鉄則
撮影する場所は、花火が見える場所であればどこでもいいように思えますが、ひとつだけ注意すべきことがあります。花火は打ち上がると煙が出るため、場所や風向きによっては、花火が煙で見えなくなってしまうのです。できるだけ風上側に撮影場所を確保しましょう。
- NG カット
煙が風に乗って手前側に流れてくると、せっかくの花火が煙幕の向こうに隠れてしまう

- OK カット
クリアに晴れた夜空に花火が映える。風上なら花火が煙で隠れることがない

夜空に花火を重ねて描くように撮ろう
花火の写真は、1コマにいくつかの花火を重ねて写すと、美しい作品に仕上がります。ただし、あまり欲張りすぎて花火が重なりすぎてしまうと、その部分が露出オーバーで真っ白になってしまいます。花火の開く場所をよく観察し、バランスよく配置するのがコツです。
- NG カット
同じ位置に花火を重ねすぎため、露出オーバーとなってしまった

- OK カット
画面の中で花火をバランスよく配置することに成功

基本テクニックやポイントを覚えたら、花火大会に出かけて、単打ち花火、スターマイン、ナイアガラなど、さまざまな花火の撮影にチャレンジしてみましょう。最初は難しいかもしれませんが、テクニックを覚え、コツをつかむほど面白くなっていくのは、風景写真の撮影と同じです。腕を磨いて、すてきな作品を目指してくださいね。
- ※ 混雑する花火会場では撮影マナーを守って撮影しましょう。また、足元が暗い場所での撮影では、安全には十分に留意しましょう。