1964年、東京都生まれ。小学生時代から星に興味を持つ。大学時代にコマーシャルフォトグラファーのアシスタントを勤め、10年間の一般企業勤務を経て天体写真家として独立。天文写真家のみならず微弱光撮影装置のエンジニアとしても活躍中。キヤノンのホームページのコンテンツ「中西昭雄の星空撮影講座」のほか、「デジタルカメラ星景写真撮影術」(アストロアーツ)、「夏の星空案内(よむプラネタリウム)」(共著、アリス館)など著書多数。
星空写真の撮り方テクニック(実践編)
必要な機材をそろえ、天気に恵まれて目的の撮影ポイントに出かけたら、いよいよ星空の撮影です。カメラをしっかり固定し、慎重に構図を合わせたら、リモートスイッチを使って、そっとシャッターを切りましょう。
星空写真における構図のポイントは「水平」をキープすることです。星空写真の場合、周囲が暗いために昼間よりも水平の感覚がにぶくなるので要注意。とくに、地上の風景と星空を一緒に撮るときは、水準器を使ってしっかり水平を出しましょう。一部のEOSにはカメラ内蔵の電子水準器がありますので、ぜひ活用しましょう。
また、星座の知識が必要とはなりますが、画面に写る主要な星座が切れてしまうと残念なので、星座はきちんと画面内に収まるように構図を作れるようになりましょう。
撮影データ:PowerShot G7 X・「星空モード」の星空軌跡(20分)・F2.8・ISO125
撮影地:山梨県南都留郡
星空の風景でとくに重要なのは「水平」です。カメラを傾けないように注意しましょう。
夜空を見上げたとき星は止まって見えますよね。実際はどうでしょうか? 星は、天の北極を中心に動いています(下図)。これを「日周運動」といいます。
目で見たままの星空を写真で表現したいなら、星は「点像」として写っているのがベストです。24mm程度の広角レンズで星空をねらっている場合でも、20秒程度の露光時間で星が動いてブレてしまう場合があります。星をきちんと写し止めるには、高ISO感度で撮影できるカメラと、明るいレンズが有利なのです。
「デジタルカメラ星景写真撮影術」(写真・解説:中西昭雄/星ナビ編集部、
アストロアーツ刊)掲載図を参考に作成
天体の位置や動きを理解するために、撮影者(カメラ)を中心とした
大きな球体に天体が貼りついていると仮定します。
この球体を「天球」と呼びます。日周運動によって、
日本では天の北極を中心に反時計回りに星が動いています。
撮影データ:EOS 70D・EF16-35mm F2.8L II USM・30秒・F2.8・ISO1600
撮影地:長野県諏訪郡
本州中部にある、標高約1800mの高原です。空が暗いので
天の川がきれいに見えました。東京から直線距離で100km以上も離れていますが、
市街地の光の影響で低空は明るく見えます。その様子も写し込んで、天の川の明るさを強調してみました。
赤緯とは、地球上の緯度に相当する座標のことです。天の赤道が赤緯0°、天の北極が90°、天の南極が−90°であり、その間の値は天の赤道からの角度で表現したものです。
見かけ上、星は天の赤道=赤緯0°付近がもっとも早く動き、天の北極および南極に近づくほどゆっくりと動きます。そのため、撮影する方角によって、星を点に写せる時間が違ってくるのです。
こんな写真、撮ってみたいと思いませんか? 夜空に星の光がきれいなラインを描いている星の軌跡です。露光時間が長ければ長いほど、軌跡は長い曲線を描き、美しい写真になります。
撮影データ:EOS-1D X・EF16-35mm F2.8L II USM・10分・F5.6・ISO200
撮影地:長野県諏訪郡
露光時間(15秒、15分、35分)と、それに対してどのくらい星が動いているのか、下の写真で確認していきましょう。どのくらいの軌跡の長さがいいのか、決まりはありません。好みの軌跡を写真で描いて、星の美しさを楽しんでみてください。
軌跡を描いた星を撮るには、長い露光時間が必要です。しかし、露光時間が長いほど、さまざまなトラブルに見舞われる可能性も高くなります。たとえば……
× 露光の途中で雲ってしまう(星が隠れてしまいます)
× レンズが結露してしまう(くもった写真になってしまいます)
× 自動車のヘッドライトや懐中電灯に照らされてしまう
× 雲台が緩んでいたり、三脚にぶつかりカメラが動いてしまう
……などなど。うっかりミスでせっかくの写真が台なしにならないように注意しましょう。
星空の撮影では、プレミアムコンパクトカメラ「PowerShot Gシリーズ」の実力が見逃せません。「星空モード」を搭載し、長時間をかけた星空の写真がフルオートで撮れる機種がおすすめ。ピント合わせや露出などかなりの部分オートとなり、シャッターを押すだけなので、初心者が星空撮影の世界に踏み込むきっかけを作ってくれることでしょう。
撮影データ:PowerShot G3 X・星空モード(露光時間60分)
撮影地:長野県諏訪郡
PowerShot G3 Xの「星空モード」を使って、北の空の日周運動を撮影しました。
露光時間を60分に設定してシャッターを押すだけで、
ご覧のような星の軌跡の写真が撮れてしまうのです。
「星空写真の撮り方入門」第2回目いかがでしたか? 設定を変えたり、構図を変えたりしながら、星空写真のバリエーションを楽しんでみてください。まずは星をしっかり止めて「点像」として撮ること。それから露光時間を少しずつ延ばして「星の軌跡」にチャレンジするといいでしょう。
さて、次回(第3回)では応用編として、作品づくりとしての「星空写真」など、さらに一歩踏み込んだ撮り方や表現方法を解説します。どうかお楽しみに。
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