「星空写真」の撮り方入門

「星空写真」の撮り方入門

  • 講師:中西昭雄(天体写真家)
  • 第2回〈月2回・全3回更新〉
写真家・中西昭雄先生

中西昭雄先生プロフィール。

1964年、東京都生まれ。小学生時代から星に興味を持つ。大学時代にコマーシャルフォトグラファーのアシスタントを勤め、10年間の一般企業勤務を経て天体写真家として独立。天文写真家のみならず微弱光撮影装置のエンジニアとしても活躍中。キヤノンのホームページのコンテンツ「中西昭雄の星空撮影講座」のほか、「デジタルカメラ星景写真撮影術」(アストロアーツ)、「夏の星空案内(よむプラネタリウム)」(共著、アリス館)など著書多数。

星空写真の撮り方テクニック(基本編)

手順1星空撮影に必要な機材─PowerShotでも撮れる!

月の撮影で学んだ知識・経験をベースにステップアップすれば、きれいな星空写真が撮れますよ。まずは必要な機材から見ていきましょう。

《 カメラ 》

カメラ

カメラは高ISO感度での撮影に強く、ノイズが少ない機種がおすすめです。
フルサイズのモデルが最適ですが、EOS 80DなどAPS-Cサイズのモデルや
PowerShot Gシリーズでも充分に楽しむことができますよ。

《 レンズ 》

EF24mm F1.4L II USM、EF35mm F1.4L II USM、EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM

星空撮影に欠かせない広角系レンズ。
右から EF24mm F1.4L II USMEF35mm F1.4L II USMEF8-15mm F4L フィッシュアイ USM

星空の撮影に向いているレンズは、ずばり「明るい広角レンズ」です。
なかでも広角の単焦点レンズ「EF24mm F1.4L II USM」は、
私にとってこれが「標準レンズ」と言っていいほどのお気に入りです。

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《 三脚 と 雲台 》

三脚と雲台

三脚は、第1回の「月」の撮影同様、できるだけ頑丈なものを使いましょう。
少し風が吹いたくらいでブレてしまっては困ります。
雲台は、上下・水平・傾き方向の微妙な調整がしやすい「3WAY」タイプがおすすめです。

《 カイロまたは電気ヒーター 》

ビクセン製「レンズヒーター360」

冬でもないのにカイロや電気ヒーター? と思うかもしれませんが、夜間、とくに高原や標高の高い山などで
撮影していると、レンズに夜露が付いて、撮影できなくなってしまうことがあるからです
写真の電気ヒーター(ビクセン製「レンズヒーター360」)は、
ポータブル電源(5VのUSBポート)から給電可能なタイプ。量販店などで入手できます。

※使いきりタイプの化学式カイロは、体から離すとすぐに冷たくなってしまうので、撮影用には不向きです。

《 あると便利な周辺機器&小道具 》

タイマーリモートコントローラー

周辺機器としてはリモートスイッチが必要です。
できれば長秒露光の設定が可能なタイマーリモートコントローラー「TC-80N3」がおすすめ
あとはカメラの予備バッテリー、機材の設置や設定の確認のためにLEDライトがあるといいでしょう。

どのアクセサリーがどのカメラに対応しているか分かる! お役立ちページ

手順2星がきれいな場所探しのポイント

星空を撮るなら、場所選びが最重要です。ポイントは3つです。

1.大都市からは大きく離れ、地方の町からも少しは離れていること
2.撮影ポイントの近くに外灯や自販機など光害(ひかりがい)がないこと
3.できれば標高が高く、空気が澄んでいる場所であること

人工の光によって夜空が明るく照らされてしまい、日本では美しい星空を見られる場所が少なくなりました。それでも大きな街を離れて、高原や離島など周辺に明かりのない暗い場所を探せば、まだ天の川がよく見える場所に出会えますよ。

撮影データ:EOS 6D・EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM・20秒・F4・ISO8000(ソフトフィルター使用)

撮影地:長野県諏訪郡

星空写真の大敵は、人工の光です。大都市はもちろん、地方の町でも街明かりなどがあり、
星がよく見えません。ご覧のように天の川がはっきり見えるような場所が理想です。

手順3星クッキリの条件は「ピント合わせ」

星空写真は、数秒〜数十秒〜数時間もの長時間露光が必要な「とても弱い光」をとらえて写真にします。昼間の撮影のようにピントや露出をカメラ任せにはできないため、マニュアル操作が中心となります。
なかでも「ピント合わせ」はちょっとした難関です。コツをつかめるように練習しましょう。

《 ピント合わせの手順 》

  1. IS付きレンズはISを〈OFF〉、
    AFモードは〈MF〉にセット
  2. ピントをほぼ無限遠にセット
  3. ピント合わせはライブビューで!
ピント合わせの手順

《 ピント合わせのコツ 》

    ピント合わせの手順です。
  1. 三脚でカメラを固定しているので、手ブレ補正機構(STABILIZER)のスイッチはオフにします。星の撮影ではオートフォーカス〈AF〉がうまく作動しない場合があるので、AFモードはマニュアル〈MF〉にします。
  2. ピントはほぼ無限遠にします。ピントが大きく外れていると、星がまったく写りません。
  3. ファインダーでピントを合わせるのは至難の業なので、「ライブビュー機能」を使います。液晶モニターに画面を映し出し、一部分を10倍ぐらいに拡大表示すればピントが合わせやすいですよ。
ピント合わせの手順

EOS 5Dsでのピント合わせです。「×16」(16倍)に拡大してピントを確認。ピンボケで星が大きくにじんでいるように見えます。

ピント合わせの手順

レンズのフォーカスモードを〈MF〉に設定し、ピントリングを回してピントを合わせていきます。星がもっとも小さくなったところでピント合わせ完了です。

手順4星空写真の「適正露出」とは?

適正露出とは、写真が明るすぎず、暗すぎず、ほどよい明るさの露出量のことです。背景が明るすぎたり暗すぎたりすると、星空らしくなくなってしまいます。適正と思われる露光時間の前後でも撮影しておくと、失敗がありません。

《 露光時間8秒 (露出アンダー) 》

露光時間8秒

撮影データ:EOS 6D・EF24mm F1.4L II USM・8秒・F2.8・ISO6400(ソフトフィルター使用)

《 露光時間15秒 (適正露出) 》

露光時間15秒

撮影データ:EOS 6D・EF24mm F1.4L II USM・15秒・F2.8・ISO6400(ソフトフィルター使用)

《 露光時間60秒 (露出オーバー) 》

露光時間60秒

撮影データ:EOS 6D・EF24mm F1.4L II USM・60秒・F2.8・ISO6400(ソフトフィルター使用)

晴れた日の日中、屋外での撮影では、適正な露出がだいたい決まっていますね。同様に、天の川が見えるような絶好の条件では、撮影時のISO感度、絞り値、シャッター速度(露光時間)にはおおよその目安があります。それを示したのが下の露出表です。横軸に絞り値、縦軸にISO感度をとり、その組み合わせの交わる場所の数値が、適正なシャッター速度です、
あくまで目安なので、このシャッター速度の前後でも撮影しておきましょう。

ISO感度とF値から露光時間をもとめるための露出表

「ソフトフィルター」星空撮影に意外な効用!

ソフトフィルターを使うと、柔らかい画面効果が得られます。では、なぜ星空写真に「ソフトフィルター」がよく使われるのでしょうか?ソフトフィルターを使うことで光がきれいににじみ、明るい星が強調され、色も分かりやすくなることが多いからです。試しに使ってみてください。

ソフトフィルター

一般的なソフトフィルターの例。レンズの口径に合ったものを選んで、
レンズの先端にねじ込んで使用します。

《 ソフトフィルターあり 》

ソフトフィルターありで撮影した星空

明るい星ほど大きくにじんで写り、色もよく分かります。

《 ソフトフィルターなし 》

ソフトフィルターなしで撮影した星空

ソフトフィルターなしだと、明るい星もシャープに写ります。

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