カメラの機能で表現の幅を広げるEOS学園講師が教える写真上達レッスン

平松佑介

平松佑介

EOS学園講師

close

平松佑介プロフィール

1978年三重県出身。大阪芸術大学写真学科卒業。現在作家活動を行いながら各所で写真教育に従事。大阪芸術大学写真学科非常勤講師。神戸芸術工科大学映像表現学科非常勤講師。

EOS学園 講師プロフィールへ
キヤノンフォトサークル2019年2月号より

EOS学園の講師を迎え、写真が上達するためのテクニックを解説する「写真上達レッスン」。前号に引き続き、今月も平松佑介先生に「写真表現」について教えていただきます。今回は「多重露出」や「HDR」について学びましょう。



基本1 カメラの機能を活用しよう

多重露出とHDRで魅力ある作品づくりを!

特定のEOSシリーズの撮影メニューやDigital Photo Professional (DPP)のツールメニューに、複数の写真を重ね合わせる多重露出撮影と、段階露光した写真を重ね合わせて広い明暗差を1枚で写すHDR撮影があります。どちらも通常撮影ではあまり触ることのない機能ですから、使う機会がなかったり、操作が難しいと感じたりしている方がいるかもしれません。今回はこの2つの機能の使い方と、魅力的な作品をつくるためのコツを紹介します。

【多重露出】

多重露出

子どもの手のひらに月が浮かぶイメージを多重露出[比較(明)]で合成しました。このように多重露出では現実ではありえないイメージをつくりだすことが可能です。

(手)EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F2.8・1/125秒・ISO800
(月)EOS 60D・EF70-200mm F2.8L USM・エクステンダーEF2×・F5.6・1/320秒・ISO200

【HDR】

HDR

明暗差の大きくなる夜景はHDRの効果が最も発揮されるシーンです。手前の街路樹、奥の高層ビル、空のブルー、すべての色彩を美しく描写することができました。

EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM F8・5秒・ISO100・Dレンジ調整±2でHDR撮影(ナチュラル)

基本2 多重露出とは?

デジタルカメラで簡単合成

多重露出とは、1枚の写真に複数回の露光を重ね合せる技法で、アイデア次第で通常撮影では得られないユニークな作品制作を行えます。また撮影メニューの多重露出制御から「加算」「加算平均」「比較(明)」「比較(暗)」の四つの合成方法を選ぶことで、写真同士の重なりに変化をつけることが可能です。

【加算平均】

加算平均

加算平均は自動的にマイナス補正を行いながらイメージを重ね合わせてくれるので、特別な露出補正を行う必要がありません。通常多重露出を行う際は、加算平均に設定しておくとよいでしょう。

(街の風景)EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM・F11・1/800秒・ISO400
(動物の骨)EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM・F4・1/200秒・ISO800

【比較(暗)】

比較(暗)

比較(暗)は写真を重ね合わせたとき、ベースの写真より濃度が濃い部分だけが現れます。連続撮影した飛び立つ鳥のシルエットが1枚のカットに写り込みました。

EOS R・EF70-300mm F4.5-5.6L IS USM F5.6・1/800秒・ISO1600・比較(暗)5回連続撮影

基本3 HDRとは?

肉眼に近づく、肉眼を超える

人間が肉眼で見る光景とカメラで撮影した像では見え方に違いがあり、特に晴れた屋外のように日向と日陰の明暗差が大きいと、白とびや黒つぶれが起こってしまいます。これはカメラが人の目ほど大きな明暗差を一度にとらえることができないことが理由です。HDR(HighDynamic Range)は、段階露光した複数枚の写真をデジタル合成し、明暗差のあるシーンを肉眼で見た光景や、肉眼を超えるイメージに仕上げる手法です。EOSシリーズのHDR機能では、露出の振り幅を「±1/±2/±3」から選択し、仕上がり効果も「ナチュラル」「絵画調標準」「グラフィック調」「油彩調」「ビンテージ調」から選べます。

【HDRなし】

HDRなし

(HDRなし)EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM・F11・1/100秒・ISO100

【HDRあり】

HDRあり
(HDRあり)EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM・F11・1/100秒・ISO100・Dレンジ調整±1でHDR撮影(油彩調)

晴れ渡った青空の下、大きな明暗差によりパラソルは暗く落ち込んでしまいます。HDR撮影で青空と赤いパラソル両方の色彩を鮮やかに描写できました。

応用1 多重露出を使った表現

仕上がりのイメージを大切に

通常の写真撮影では広い世界の一部分を切り撮る引き算でイメージを組み立てることが多いですが、多重露出では白いキャンバスに絵筆を走らせるように、頭の中にあるイメージに沿って、画像を組み立てていく足し算の画づくりを行う必要があります。そのため、仕上がりのイメージを頭の中にしっかり持って撮影を行いましょう。また、多重露出という先入観で撮影を行うと定型的な使い方しかできませんが、少し考え方を工夫すると表現の幅が拡がります

【加算平均でソフトフォーカス】

加算平均でソフトフォーカス

ピントを合わせたカットと、ピントをぼかしたカットを加算平均で重ねると、ソフトフォーカスフィルターをかけたような効果を得ることが可能です。

EOS R・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F2.8・1/320秒・ISO100・加算平均2回

【加算平均で幻想的な夜景撮影】

加算平均で幻想的な夜景撮影

ガラスに映った街の夜景と、カメラを逆さまに構えて撮影したカットを加算平均で重ねました。シンメトリーの風景が重なることで幾何学的な面白さが引き立ちました。

EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM・F4・1/125秒・ISO800・加算平均2回

【加算平均で長時間露光】

加算平均で長時間露光

1.6 秒の露光を加算平均で5 回重ねることで、8 秒の長時間露光と同じような効果を得ることができました。

EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM F22・1.6秒・ISO100・加算平均5回

【比較(暗)で超深度フォーカス】

比較(暗)で超深度フォーカス

300mmの望遠レンズで撮影したカット。比較(暗)で松葉を重ねることで通常ではありえないほどの深い被写界深度で撮影したような効果を得られました。

EOS R・EF70-300mm F4.5-5.6L IS USM F5.6・1/60秒・ISO400・比較(暗)2回




応用2 HDR機能を使った表現

先入観にとらわれず意外なイメージを

HDRを利用するには特定のEOSシリーズの撮影メニューから設定するか、段階露光したデータをDPPのツールメニュー内にあるHDR合成で読み込んで作成します。このとき写真の位置がずれると仕上がりがぶれてしまうので、基本的に三脚などでカメラを固定して撮影を行います。明暗差の強く現れる夜景や、逆光時などに効果的な映像が得られますが、あえて基本を外した使い方をすると意外なイメージが得られる場合もあります。多重露出と同じように先入観にとらわれない撮影を試してみましょう。

【肉眼の印象に近づける】

肉眼の印象に近づける

濃い影に覆われた突堤、通常なら黒くつぶれてしまう影のディテールをHDR撮影することで、肉眼で見た印象に近づくように仕上げました。

EOS 5D Mark III・EF24-70mm F4L IS USM F22・ISO100・シャッター速度2秒と6秒の2枚をDPPでHDR合成(ナチュラル)

【絵画調とズレを活かして光をとらえる】

絵画調とズレを活かして光をとらえる

逆光で見上げた紅葉の一コマ。あえて手持ちで撮影したことで重なりにズレが生じ、透過する光の印象が複雑な表情をつくり出してくれました。

EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM F4・1/320秒・ISO100・2枚をDPPでHDR合成(絵画調標準)

【夕暮れの淡い色彩を描写】

夕暮れの淡い色彩を描写

日没間際の海岸の風景です。明暗差の大きくなるシチュエーションですが、HDR撮影をすることで柔らかな色彩で風景を描くことができました。

EOS R・RF24-105mm F4 L IS USM F11・1/160秒・ISO400・Dレンジ調整±2でHDR撮影(ナチュラル)




今月のおさらい

  • カメラとDPPの機能で魅力的な作品を
  • 多重露出は仕上がりをイメージすることが大切
  • 多重露出制御で重なりに変化をつける
  • HDRは明暗差のあるシーンを狙う
  • 基本を外した使い方で意外性のある作品に

キヤノンフォトサークルでは、この他にもプロ写真家の作品や、会員の皆さまから寄せられた優秀作品を掲載しています。開発担当者による製品技術やスペックの解説、カメラ、レンズなど新製品を試したプロ写真家による作品紹介やレビューなども掲載。キヤノンならではの情報をお届けしています。ご興味ある方は下記リンクからチェックして下さい。