ペット撮影のフォトテクニック愛犬・愛猫をかわいく撮るにはコツがある!第3回 ペットの「きもち」を撮ろう!
中村陽子
写真家
プロフィール
大阪市生まれ。カナダ トロント市在住中に犬と暮らしをはじめペットの撮影を始める。2015年に(有)ドッグファーストとスタジオD1を設立。広告を中心としてペットや子供の撮影などを手掛ける。現在トイプードルのPASTEL、ノーフォークテリアのCOOPY、ジャックラッセルテリアのPOPとCOLORの四頭の愛犬と暮らしています。
EOS学園 講師プロフィールへこんにちは。写真家の中村陽子です。
今回は、キヤノンイメージゲートウェイ会員の皆さまに呼びかけて募集した「ペットモデル」の登場です。冬空の公園に3組のご家族と愛犬たちに集合してもらって実現したフォトセッション! ペットの「きもち」まで伝わる写真を目指しました。撮り方テクニックとともにご紹介します。
今回、撮影会にご参加いただいた
会員の皆さま & 愛犬紹介
ペットモデル撮影会に参加いただいた皆さんと愛犬たち。
左から3人目が中村陽子先生&先生の愛犬ポップ(ジャック・ラッセル・テリア)。
左:あさへ様とラスクちゃん(パピヨン)
中:ミキ様ご一家と
シルフィーちゃん(シベリアン・ハスキー)
右:dragon 様と
ユッキーちゃん(ヨークシャー・テリア)
ペットの「きもち」まで伝わる撮影術
「もしもペットがしゃべれたら」と思うことはありませんか? 私はいつも「いまこの子はどんなことを考えているのかな?」と想像しながらペットの撮影をしています。ペットの「きもち」を考えると、自然と撮りたいイメージがわいてきますよ。今回は、ペットの「きもち」を想像しながら撮影するテクニックをご紹介しましょう。
ペットモデル撮影セッション。
この日のナイスショット!
- ※ ペットの動きを生き生きと撮るため、
細いリードを使用しています。
ユッキーちゃん
(ヨークシャー・テリア)
わざと視線をそらしてニュアンスのある表情!
ラスクちゃん(パピヨン)
そよぐ風を受けて気持ちのよさそうな表情!
シルフィーちゃん
(シベリアン・ハスキー)
元気いっぱい駆ける野性的な表情!
こんなふうに「きもち」まで伝わる
ペット写真のコツを見ていきましょう。
基本テクニック講座
ペットの「きもち」を撮る
コツ(その1)
ペットの「きもち」を写したい! それなら難しく考えなくても大丈夫です。
「うちの子、いまどんなことを思っているのかな?」と想像しながら、ペットの性格を考えたり、その犬種らしいイメージを広げたりします。ただ「かわいい!」と思って撮るだけの写真も楽しいですが、さらに印象深い写真になりますよ。
- コツ1
その場の「背景」を生かして
表情いきいき!
ペットの「きもち」を撮りたいとき、犬種のイメージに合った「背景」で撮影すると、より印象的な作品に仕上がります。その場の雰囲気が、愛犬の「きもち」とシンクロするように意識してみましょう。
まずは、ワイルドなシベリアン・ハスキーのイメージを考えて、あえて色の少ない林の中を走ってもらって撮影しました。林の中は明暗差が激しいのでISO感度を高めに設定して動きに対応。黒っぽいものが多かったので、マイナスの露出補正を選択しました。
撮影データ: EOS-1D X Mark II・EF300mm F2.8L II USM・F2.8・1/2000秒・ISO400・-1/3補正・WBマニュアル
望遠レンズを選択し、絞り開放で撮影することで
背景をぼかして主役のシベリアン・ハスキーが浮き立つように撮影しました。
撮影データ: EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/800秒・ISO800・ -2/3補正・WBマニュアル
上の写真よりもややワイドに背景を取り入れ、森の中の野性の雰囲気を出してみました。
いつものお散歩とはちょっと違う表情ではありませんか?
【撮影シーンは、こんな感じ!】
地表の枯れ葉を前ボケとして入れるため、地面スレスレからの超ローアングルで撮影!
撮影データ: EOS-1D X Mark II・EF24-105mm F4L IS II USM・F4.5・1/6400秒・ISO500・WBオート
オオカミのようなルックスから野性的なイメージのあるシベリアン・ハスキーなので、
人工物が入らない空間を選び、雄大な大自然にたたずむイメージで撮影しました。
- コツ2
ミニ舞台セットで「主役」らしく撮ろう
いくらかわいいペットでも、なんにもない殺風景な空間では寂しい印象の写真になってしまいます。もしあなたのペットが「俳優」だとしたら、どんな舞台に立たせたいですか? 敷物や小物などを配置して、ペットを「主役」にした場面づくりをしてみませんか。これ、けっこう楽しいのでハマリますよ。
もっとも簡単に「舞台」をつくるには、敷物を用意してあげること。その効果は、見た目の変化だけではありません。地面が冷たいと、犬はその場にいることを嫌がり表情も曇ってしまいます。敷物があれば、安心したようないい表情をしてくれますよ。
撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F4.5・1/4000秒・ISO500・WBオート
カラフルな敷物で写真に色彩的なアクセントを加えたのがポイント。
かわいらしいヨークシャー・テリアのイメージに合わせて小物を準備しました。
陽だまりで心地よさそうにしている「きもち」まで写るように演出しましたよ。
【撮影シーンは、こんな感じ!】
飼い主のdragon様が、うまくユッキーちゃんにポーズをつけてくれました。
すぐに表情が生き生きと変化するユッキーちゃん!
- コツ3
長毛の犬は「風向き」に注意して撮ろう
映画やドラマの収録、モデルやタレントさんの撮影会では、ヘアメイクのスタッフが俳優やモデルの髪の毛の乱れをつねにチェックしています。ペットの撮影でも同じように、モデルの「ヘア」には注意してあげましょう。長毛の犬は、毛が顔にかからないように注意して向きを変えます。つねに風が吹いてくる方向を意識して撮影しましょう。
いい感じの風がそよいでくれると、写真に動きと表情を出すことができますよ。シャンプーのCMみたいなイメージで撮ってみても面白いかも!
撮影データ: EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/2000秒・+2/3補正・ISO500・WBマニュアル
ラスクちゃん、そよぐ風が心地よさそうですね。
長毛のパピヨンは、顔に毛がかからないようにすればステキな表情で撮れますよ。
暗めの背景を選び、逆光を利用して毛をキラキラと輝かせて見せたのがポイント。
逆光で顔が暗くならないようにレフ板を使って光を調整しました。
【撮影シーンは、こんな感じ!】
飼い主のあさへ様が、造花の枝をしゃんしゃんと振って
ラスクちゃんの注意をカメラのほうに引いてくれています。
ローアングルで心地よさそうな表情を引き出して撮りました。

〈 逆光で撮影 〉
第1回で解説した「逆光」で撮影してみました。体のまわりが輝く「エッジライト」が美しくキラキラ! 手前には落ち葉の反射、背景には光が透過した葉の緑色が入り色が少ない冬の景色に彩りが加わりました。

〈 順光で撮影 〉
逆光とは違って「透過光」がないので、マットな仕上がりに。キラキラした華やかさに欠けてしまいますね。背景や光の差し方をよく見て、撮影者がベストなカメラ位置を吟味することが大切です。
「フキダシ」をイメージして
表情を引きだそう
おすましポートレートもいいけれど、かわいらしい表情もねらってみたいですよね。愛犬が撮影に飽きてきたら、カメラを置いてコミュニケーションをとってみましょう。名前を呼ぶなど声をかけたり、おもちゃで表情を引き出してみましょう。おやつを与えるのは最終手段です。
ワイルドなイメージのシベリアン・ハスキー、シルキーちゃんですが、
「フキダシ」をイメージして撮れば、愛嬌のある表情まで写せますね。
このギャップがたまらなくかわいい~。楽しいキャラを演出してみて!
基本テクニック講座
ペットの「きもち」を撮る
コツ(その2)
- コツ4
「前ボケ」を入れて夢心地の表情を撮ろう
屋外の公園などで撮るときは、周囲をよく見渡して撮影に生かせるものを探します。私は「前ボケ」になるものを見つけたら、積極的に活用します。
前ボケが入ると、ふんわり優しい雰囲気に愛犬が包まれたようなドリーミーな写真になりますよ。
撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F3.5・1/2500秒・+2/3補正・ISO800・WBオート
少し体に前ボケがかかるように撮影すると、より柔らかい印象の写真になります。
ヨークシャー・テリアのユッキーちゃんの表情まで輝いているようですね~!
- コツ5
「視線そらし」で表情をつくろう
人間のモデル撮影でも、わざとカメラ目線ではなく、視線をそらして撮ることがあります。視線の先にあるものを想像させることで、微妙なニュアンスの表情を写すことができます。いままで見たことがないようなワンちゃんの写真が撮れるかもしれませんよ!
撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F5.6・1/500秒・+1 1/3補正・ISO 500・WBオート・ストロボ使用
奇跡的に1本だけ花が咲いている梅の木がありました。
ひと足早い春の雰囲気をつくるために、みんなで力を合わせて撮影した一枚です。
手前の生け垣にストロボ光を当てて、明るい雰囲気の「前ボケ」をつくりました。
【撮影シーンは、こんな感じ!】
ポイントは次のとおり!
- ① 愛犬を持ち上げ支える手が見えないように
抱きかかえた! - ② 視線をそらすためスタッフが造花の枝を
シャンシャン振った! - ③ 愛犬が飽きてしまったら休憩するなどして
粘り強く撮った!
家族やお友達の役割分担を決めて、「こうやったらいいんじゃない?」など、
みんなで相談しながら撮影してみると楽しいですよ。
- コツ6
ハイテンションな「声かけ」で
生き生きと撮ろう
声のかけ方でペットの表情が変わります。元気がなくテンションが低めの子は、ハイテンションで声をかけます。「楽しい時間が始まるよ!」「いっしょに楽しもうね!」というこちらの気持ちを伝えるのがコツ。
逆に、興奮気味で落ち着かない子は、しばらく自由に遊ばせてから撮影するとよいでしょう。
撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F5.6・1/1600秒・ISO 500・WBオート
ジャンプの瞬間を撮るコツは、同じコースを何度か走ってもらうこと。
少し起伏がある場所などで、犬が飛び上がる場所が読めてきます。
この写真では、落ちている枝をピョンと飛び越えることがわかったので、
そのタイミングに合わせてシャッターを押しました。
- ※ ペットの動きを生き生きと撮るため、細いリードを使用しています。
撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F5.6・1/2000・ISO500・WBオート
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、最短撮影距離が0.98mと短いので
ペットが目の前まで近づいてきても撮影可能です。
近づいて撮ることで背景が大きくぼけて、主役の犬が浮き上がってきます。
【撮影シーンは、こんな感じ!】
飼い主のミキ様ご一家が見守るなか、シルフィーちゃんには何度も往復してもらって撮影。
カメラのほうに向かって走ってきてもらうには、おもちゃを見せながら呼び寄せます。
おもちゃめがけて駆けてくるところを連続撮影!
ポイントまとめ
ペットの「きもち」を
撮るポイント:
『イメージを膨らませて
ペットの「きもち」を
撮るべし!』
- 背景の雰囲気を生かして撮るなど
作品の幅を広げる - ボケをつくる、視線を外すなどして
雰囲気を演出する - 敷物や小物などのアイテムで
カラフルな場面をつくる - ペットの元気の素=飼い主さんの愛情とかけ声を活用!
今回は、キヤノンイメージゲートウェイ会員の皆さまの「ペットモデル」にご協力いただいて撮影しました。写真が大好きな方ばかりで、撮影していて私のテンションも上がりました!
レフ板やストロボを使用した少々ハイレベルな撮影もしていますが、難しく考えず、家族やお友だちと「こうすればもっとよくなるんじゃない?」などと相談しながら役割分担を考えて撮ってみると、ペットの撮影がますます楽しくなりますよ!