愛犬・愛猫をかわいく撮るにはコツがある!|ペット撮影のフォトテクニック

ペット撮影のフォトテクニック愛犬・愛猫をかわいく撮るにはコツがある! 第1回
ひと味違うペット写真にチャレンジ!

写真家 中村陽子氏

中村陽子

写真家

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プロフィール

大阪市生まれ。カナダ トロント市在住中に犬と暮らしをはじめペットの撮影を始める。2015年に(有)ドッグファーストとスタジオD1を設立。広告を中心としてペットや子供の撮影などを手掛ける。現在トイプードルのPASTEL、ノーフォークテリアのCOOPY、ジャックラッセルテリアのPOPとCOLORの四頭の愛犬と暮らしています。

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2017.1.13

こんにちは。写真家の中村陽子です。
見ているだけでもかわいいペットたち。表情や仕草をよりかわいくより美しく撮りたいものです。この講座では、私がペット撮影でこだわって撮影しているポイントや撮影のコツなどをご紹介します。
カメラがあれば、ペットといっしょに過ごす時間がもっと楽しくなりますよ。

「ペット写真」この一枚

「ペット写真」この一枚

撮影データ:EOS-1D X Mark II・EF300mm F2.8L II USM・F2.8・1/400秒・ISO250・WBマニュアル

美しく優しい色のお花と一緒に撮影しました。工夫したかったのは、目線の方向です。カメラではなく遠くを見ている姿から、この子自身が風の音、花の香りを楽しんでいるように感じました。
この日はお日様がほとんど登場しない薄く曇った日でした。ペットとお花を一緒に撮影するなら、薄曇りのほうが優しい色合いで撮れるので、私は好んで曇りの日に撮影します。

では、ペット写真を撮るための
手順を見ていきましょう。

基本テクニック講座 まずは撮ってみよう!
基本のコツ

ペットの撮影では「ペットの動き」に対して柔軟に対応することが必要です。まずは撮る人のほうが心に余裕を持つこと。ペットと一緒に遊ぶような気持ちで撮影しましょう!

  • コツ1

ペットを上手く撮るためのカメラ設定

まずはペット撮影に適したカメラ設定をみていきましょう。設定の順番に決まりはありませんが、いつもこの3つの設定をチェックする習慣をつけるとよいですね。

1. 撮影モードは
〈Av(絞り優先)モード〉に!

1. 撮影モードは〈Av(絞り優先)モード〉に!

ペットはよく動くのでシャッター速度優先? と思うかもしれませんが、私はAv(絞り優先)モードをオススメします。Avモードにすれば、背景のぼけ具合などイメージどおりに撮れるからです。

2. ISO感度設定は高めに!

2. ISO感度設定は高めに!

ペットはよく動きます。被写体であるペットがぶれてしまう場合は、ISO感度を上げていきます。ISO感度設定が上がると、速いシャッター速度で撮影できます。

3.ドライブモードは
〈高速連続撮影〉に!

3.ドライブモードは〈高速連続撮影〉に!

設定できる機種なら、ぜひ〈高速連続撮影〉を選んでください。連続撮影でたくさん撮ったカットから、表情や動きがよいカットを選びます。

  • コツ2

ピント合わせの位置は
目玉と眉毛のフチ!

ペットをアップで撮影するとき、目玉の真ん中をねらってピントを合わせてしまいがちです。じつは、そこではないのですよ。目玉は球体で真ん中が盛り上がっています。そこに合わせてしまうとピントの位置がずれて、全体がぼんやり見えてしまうことがあります。
また、目の下側でピント合わせすると、出っ張っている犬の鼻のほうにピントが合ってしまう場合があります。これを避けるためにも、ピントは目のフチの上側で合わせると失敗がありません。

ピント合わせの位置は目玉と眉毛のフチ!

ペットの顔を大きめに写す場合は、目のフチの上側でピントを合わせます。
目の下側では鼻のほうにピントが合ってしまう場合があるので注意しましょう。

  • コツ3

表情の決め手=耳に注目しよう!

「ペットの良い表情」というと、皆さんはどんなポイントで感じますか? 目の表情はもちろんですが、意外と重要なのが「耳の表情」です。

表情の決め手=耳に注目しよう!

撮影データ:EOS 5D Mark III・EF50mm F1.2L USM・F3.5・1/160秒・ISO640・WBオート

立ち耳でも垂れ耳でも、耳を後ろに引いてしまっているときは何かに怖かったりしていることが多いです。皆さんが構えているカメラを見て怖がっている場合も!
カメラを向けるとペットの表情が曇ってしまう場合は、少し離れた位置から望遠で撮影することで緊張感がほぐれることがあります。

NG
(耳を引いている)

NG(耳を引いている)

OK
(耳が正しい位置にある)

OK(耳が正しい位置にある)
  • コツ4

ペットの「カメラ目線」を誘って撮ろう

「ペットにカメラを向けるとき、なかなかカメラのほうを見てくれない!」といった話を聞きます。でも、すべての写真がカメラ目線である必要はありません。
私が作品として発表している写真は、カメラ目線ではないもののほうが多いかもしれません。とはいうものの、カメラを見てくれている写真がまったくないのは寂しいもの。カメラ目線が欲しいときのポイントは下記の3つです。

〈カメラ目線が欲しいときのポイント〉

  1. 大好きなオモチャなどを使って目線をカメラに誘導する。
  2. カメラの設定や構図を決めてから、撮影直前にオモチャを出す。
  3. ペットの集中力は長くても10分程度。撮影時間は短めに!

しばらく何も声をかけずに静かに待っていると、自然に視線がカメラに向く場合もあります。落ち着いた気持ちで撮影することが大切です。

背景に人がいたので、傘を置いて隠してみました。

撮影データ:EOS-1D X・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/1250秒・ISO2000・WBマニュアル

背景に人がいたので、傘を置いて隠してみました。
他人の存在を弱めることができカメラに目線が向きやすくなります。

  • コツ5

ペットの「目線」になって撮ってみよう

つい忘れがちなことなのですが、ペットたちは人間よりずっと背が低いのです。
低い位置からの撮影というと、片膝をついたぐらいの姿勢(写真1)で撮影する方が多いのですが、ペットの表情をしっかり捉えるには、もっと低い位置から見上げるように撮影します(写真2)。
小型犬の「鼻の下の分かれ目」が見えるくらい低い位置からカメラを構えられるとベストです。

写真1

写真1

写真2

写真2

スーパー・ローアングルで撮影

撮影データ:EOS-1D X・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/640秒・ISO500・WB日陰

「スーパー・ローアングル」で撮影しました。カメラを地面に置くような感覚です。
下から見上げるようにすると、かわいらしいペットの顔をしっかりと写すことができます。

陽子先生に質問!「ペットの犬や猫って、笑うのですか?」

ペットの犬や猫って、笑うのですか?

「犬って笑いますか?」と質問されることがあります。暑くて口が開いている状態が「笑顔」に見えることがありますが、犬や猫は自分が大好きなことをしているときに「笑顔」や「真剣な表情」になったりします。
撮影する前に、ペットたちが大好きな遊びをさせてから撮影し、撮影が終わったらまた大好きなことを一緒にしてみると、いい表情が撮りやすくなります。
「写真を撮られる前後には楽しいことがある!」と覚えてくれるようになるとベストです。

基本テクニック講座 光を選んで撮るコツ

なんてことない場所でもいい光を選べば、アッと驚く仕上がりになります。その場その時の光の状態を読んで撮りたいイメージを固め、状況に応じて撮影してみましょう。

  • コツ1

最適なライティングで撮る計画を練ろう!

絵は絵の具で描きますが、写真は絵の具ではなく光で描きます。ですから、「どんな絵の具を使おうかな?」というイメージで、撮影を始める前にまわりを観察しましょう。いくつかの光の見方のコツを覚えると、撮りたい写真のイメージに合った光の場所を見つけられるようになります。いつも光を意識することが重要です。

太陽が出てくる位置や時間を事前に調べて、撮影プランを練るのも楽しいものです。私は太陽の位置や光の向きを調べられる「サン・サーベイヤー」というスマホアプリを活用して、ロケ前にチェックしています。

最適なライティングで撮る計画を練ろう!

撮影データ:EOS 7D Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/800秒・ISO250・+1 2/3補正・WBマニュアル

柔らかい光と色を出すために、
犬に直射日光が当たらないように傘を差して撮影しました。
日陰にすることで背景との明るさのバランスが整って、
優しい色で表現することができました。

  • コツ2

「順光」と「逆光」を使い分けよう!

光の種類を大きく分けると光の方向によって「順光」と「逆光」があります。

ペットの顔に向かって光が当たる「順光」

色鮮やかに
クッキリとした仕上がりになります。

光が全体に当たっているので
オートでも適正な露出で撮れます。

風景を入れて撮るとき
青空の色がしっかり出ます。

顔に強い光が当たるので、まぶしくて
目を細めてしまうことがあります。

ペットの背後から光が当たる「逆光」

後ろから差す光でペットの毛のエッジが
輝いて写ります。

背景の木漏れ日を「丸ボケ」として
入れることができます。

まぶしくて目を細めてしまう子は、
表情も背景の印象も柔らかくなります。

露出を明るめに調整しないと顔が
暗くなってしまう場合があります。

〈順光で撮影〉

〈順光で撮影〉

〈逆光で撮影〉

〈逆光で撮影〉

順光のメリットを生かして、クッキリ撮る!

順光で撮影すると本来の色がしっかり出て、クッキリとした写真になります。また、順光ではキャッチライト(瞳に映り込ませる光のこと)が入りやすいので、表情が生き生きして見えます。ただ、順光の難点は、顔に強い影が出やすいことです。影が強い場合はペットの顔の向きや立ち位置を考えて撮影する必要があります。

順光のメリットを生かして、クッキリ撮る!

撮影データ:EOS M5・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F4.5・1/1600秒・ISO100・WB太陽光

青空とひまわりを夏らしく写したかったので、順光で撮影しました。
順光では、顔の向き犬の立つ向きなどに注意して撮影することが大切です。

バーニーズマウンテンドッグ

撮影データ:EOS 5D Mark IV・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F9・1/400秒・ISO400

バーニーズマウンテンドッグは顔の毛が黒く、その中に黒い目があるため
逆光で撮影するとキャッチライトが入りづらくなります。
とくに黒い犬の場合は、目にキャッチライトが入りやすい「順光」を選ぶとよいでしょう。

逆光のメリットを生かして、ふんわり撮る!

ペットは人間の大人のように、「かわいく撮ってほしいから頑張って目を開けよう!」なんてことはできません。まぶしくて目を細めてしまう場合は「逆光」で撮影すると、光が背後から入るため表情が柔らかく写ります。
また、何も設定をせずそのままシャッターを切ってしまうと、露出が明るい背景の影響を受けて、ペットの顔が暗く写ってしまう場合があります。きれいに撮るには、ペットの顔が明るく写るところまでを目安にプラス側に露出補正を行います。

露出補正なし

露出補正なし

露出補正あり(+1補正)

露出補正あり
(+1補正)

逆光のメリットを生かして、ふんわり撮る!

撮影データ:EOS 7D・EF85mm F1.2L USM・F2・1/400秒・ISO500・WBマニュアル

室内で撮影する際も光の状態を意識しましょう。
明るい窓のある方向を背景にして撮影すると、
猫の目が細くならずかわいらしい黒目に写ります。

  • コツ3

レフ板や外部ストロボで光を操ろう!

プロの写真家が「レフ板」を使って人物などの撮影しているシーンを見たことがある方も多いと思います。
ペットの顔に明るさを合わせて露出補正を使うと背景が白く飛んでしまう場合があります。背景とペットの両方に明るさのバランスを合わせたいときはレフ板を使います。

〈 レフ板なし 〉

〈 レフ板なし 〉

〈 レフ板あり 〉

〈 レフ板あり 〉

レフ板は一人で扱うのが難しく、風にあおられてレフ板が動くとペットがレフ板を怖がってしまうことがあります。そんなときにはストロボを発光することで、背景の色を生かしながらペットの顔を明るく写すことができます。このテクニックを「日中シンクロ」と言います。
内蔵ストロボだと調整できる範囲が狭いので、できれば外付けのストロボを使いたいですね。

レフ板や外部ストロボで光を操ろう!

撮影データ:EOS Kiss X7・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F2.8・1/800・+1 2/3補正・WBオート

ストロボを発光したことでペットの顔が明るくなり、
背景の八重桜のピンク色もしっかりと写すことができました。

ポイントまとめ

写真家 中村陽子氏

ここがポイント:
『人もペットも
一緒に楽しみながら
撮るべし!』

  1. 撮る人が心に余裕をもちましょう
  2. ペットの「表情」を
    しっかり見極めましょう
  3. 撮りたいイメージに合わせて光を選ぼう
  4. 日常生活でもできるだけ撮りましょう

次回は、縦や横に動きまわるペットの動きの引き出し方や、ペットの動きを生かした表現方法をレクチャーしたいと思います。ちょっとしたコツを覚えるだけで、見違えるように生き生きした動きを撮ることができますよ。

動きのあるペットの撮り方は次回に!