紅葉に感動して撮影しても、真っ赤に燃えるような赤色がうまく再現できない……。それは太陽を背にして「順光」で撮っているからかもしれません。順光では葉っぱに光が反射して色がくすみ、メリハリのある写真にならないのです。紅葉を撮るコツは、葉っぱの向こうに太陽がある逆光気味に“透過光”で撮ることです。こうすると色鮮やかな赤色の写真を撮ることができます。
単一色が画面の多くを占める場合、べったりと平面的な仕上がりになりがちなので、色の再現には気を使います。この赤色の再現が、画像調整の重要ポイントです。
画像調整をする前に、まずは画像を何も調整しないままプリントをします。これを「ストレートプリント」と言います。このストレートプリントを基準に、写真の各部をどのように仕上げていきたいのか、「調整プラン」を練ります。これが画像調整の方向を示す“設計図”になります。
設計図のない画像調整は、地図のないドライブと同じです。なかなかゴールに行き着けません。撮ったときのイメージを大切にしながらプランを練り、仕上げていきましょう。
EOS 70D・EF70-200 F4L IS USM・1/200・F5.6・-2/3補正
・ISO200・ホワイトバランス「オート」・ピクチャースタイル「忠実設定」
紅葉の撮影で気をつけたいのが“露出”です。露出オーバーにしすぎると紅葉の赤が浅いオレンジ色に、逆にアンダーだと色ににごりが生じます。RAWモードでも段階露光をおすすめします。撮影時に適正な露出で撮れているなら、全体の色調のイメージをつかむために「ホワイトバランス」を切り替えてみます(画像・右)。撮影時のホワイトバランスは「オート」でしたが、「くもり」にすると実際の色調に近づきました(画像・左)。
撮影時のピクチャースタイル「忠実設定」ではクセのない素直な画像が得られますが、全体に平板で“ぬるい”印象です。そこで背景の黒を引き締めて紅葉を鮮やかに浮き上がらせるために、「コントラスト」を強めます。黒を黒らしくクッキリと見せることで、葉を赤く染める透過光がきれいに見えてきます(画像・右)。コントラストをつけすぎると(画像・左)黒の部分が紅葉のエッジまで浸食してしまうのでご注意ください。
画像調整によって透過光に浮かび上がる紅葉の鮮やかな赤色が再現できました。最初の画像と比較すると、違いは一目瞭然。赤色をより赤く調整するよりも、背後の黒色を引き締めることで赤色がクッキリしてくることがお分かりいただけたでしょうか。RAWモードで撮っていたからこそ、このように微妙な画像調整が可能になるのです。