写真・プロの一手 第26回 - ふんわり「前ボケ」を作り出すテク!「レンズの○○○○距離付近で撮る」とは?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

ふんわり「前ボケ」を作り出すテク!
「レンズの○○○○距離付近で撮る」とは?

ふんわり「前ボケ」を作り出すテク!「レンズの○○○○距離付近で撮る」とは? ©HIROSHI SAITO

EOS 5D Mark III・EF300mm F2.8L IS II USM・絞り優先AE(F2.8・1/125秒)・+1 1/2補正・ISO200・ホワイトバランス:太陽光・ピクチャースタイル:スタンダード

この季節に楽しめるフジの花。藤棚を雰囲気よく撮影したいなら、メインの被写体にするフジの手前にある花房を「前ボケ」にします。手前と奥の距離感とともに、やわらかい描写にすることができます。ボケを生かした撮影では、望遠レンズを使用し、絞りは開放で撮影します。
さて、さらに大きな「前ボケ」を作り出すテクニックがあります。それは「レンズの○○○○距離付近で撮る」こと。○○○○とは?

プロの一手、その答えは・・・

Answerレンズの「最短撮影」距離付近で撮ること

ボケ効果を最大化する条件の一つ、
レンズの「最短撮影距離付近」で撮る!
写真のボケ味の効果を大きくする条件は3つあります。「望遠レンズ」「絞り開放」「被写体に接近すること」です。
望遠レンズを使うことや、絞りを開放にすることはご存じでも、案外知られていないのが3つめの「被写体に接近すること」。つまり、レンズの「最短撮影距離付近」で撮影することにより、ボケ味を最大限に生かすことができるのです。
具体的な撮影手順は、それほど難しくありません。被写体を探すときにズームレンズのズームリングを最も望遠側にセットし、レンズの「最短撮影距離付近」にあるものを探します。EF70-300mm F4-5.6L IS USMやEF70-200mm F2.8L IS III USMであれば、1.2m付近です。
被写体が大きすぎる場合はズームリングを広角側に回すのではなく、最望遠側をキープしたままカメラの位置を下げて(後ずさりして)画角を調整します。「これ以上後ろに下がれない」ところで、必要であれば初めてズームリングを回します。
三脚

カメラをしっかり固定させることができる三脚があると、じっくりと被写体に向き合って撮れるので、手持ち撮影とはひと味違う写真撮影が楽しめます。スローシャッターや夜景の撮影等にも大活躍。初めての三脚、こちらできっと見つかりますよ。

エクステンダーで焦点距離を伸ばしても
「最短撮影距離」は変わりません!
今回のフジの写真でチョイスしたレンズはEF300mm F2.8L IS II USM。明るい単焦点レンズならではのボケ味の一枚ではありますが、ポピュラーな望遠レンズズームでも大きなボケを作ることは可能です。例えば皆さんよくお使いのEF70-200mm F2.8L IS III USM。これにエクステンダー(EXTENDER EF1.4×III)を装着すれば、焦点距離は最大280mmに。レンズの最短撮影距離は、エクステンダーを使っても変わりません(ここ重要!)。280mmの望遠で、最短撮影距離1.2m付近まで接近して撮れるのです。メインの被写体に近づける分、大きなボケ味を楽しむことができます。
前ボケ、後ボケに入れる色ですが、メインの花の色と同じ色の花を入れてぼかすようにします。ボケを同系色でまとめることで、写真に統一感が生まれます。
写真の撮り方アーカイブ

野山に咲く花の季節。いま咲いている旬の花、どんなふうに撮ればいいの? そんな疑問にお答えする記事がこちら、「写真の撮り方アーカイブ」。さまざまな花の撮影テクニックをご紹介します。

コラム
藤棚の撮影でおすすめの天候は、曇天です。晴れた日だとフジの花に影ができてしまい美しくないからです。「曇天だと暗く写ってしまいませんか?」と質問されることがあります。でも、露出補正で明るさをコントロールするので問題ありません。曇天のフラットな光の下で撮影すれば、花の優しい質感を表現することができます。
ただし、曇天の日は晴れた日よりも光量が少ないため、シャッタースピードは遅くなります。三脚が使用できる場所であれば三脚を使うか(他のお客さんの迷惑にならないように!)、ISO感度を上げることで対応するとよいでしょう。