写真・プロの一手 第19回 - マジックアワーの都市夜景!プロが撮るのは「日没の○○分後」?

写真・プロの一手 渾身の一枚から学ぶ「プロの一手」! 講師

斎藤裕史

1968年、千葉県松戸市生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、関西を拠点に雑誌、広告等の撮影を行っている。現在は写真教室や撮影会の講師も務めアマチュア指導にも力を入れている。作品集に『WHITE MESSENGER SWAN』、著書に『わっ、撮れた! 夜景・イルミネーション編』ほかシリーズ3作、『明日、撮りたくなる写真』(すべて日本写真企画)がある。EOS学園大阪校講師。

マジックアワーの都市夜景!
プロが撮るのは「日没の○○分後」?

マジックアワーの都市夜景!プロが撮るのは「日没の○○分後」? ©HIROSHI SAITO

EOS 5D Mark II・EF24-105mm F4 L IS USM・絞り優先AE(F8・15秒)・-1/2補正・ISO200・ホワイトバランス:オート・ピクチャースタイル:風景

大阪・住之江区南港、大阪府咲州庁舎展望台「コスモタワー」。55階、地上252mからの夕景は、まるでSF映画のワンシーンのような光景です。
晴れ、曇り、雨。どんな天気でも夕暮れの風景は美しいもの。もっとも魅力的なのはやはり晴れた日の西の空。西の果て(地平線や水平線付近)から空の上までのグラデーションは、ため息が出るほどの美しさです。そこに雲の脇役が加われば、なおよし。
「夜景撮影」をするとき、本当の夜間に撮影してしまうと、空は真っ暗な「ものを言わない無駄な空間」になってしまいます。ねらい目は、日没後の「マジックアワー」。さて、そのベストな時間帯は、日没の何分後に訪れるでしょうか?

プロの一手、その答えは・・・

Answer約10分後

「夜景」の魅力が最高潮に!
薄暮(トワイライト)がベストタイム。
夜景がもっとも魅力的な写真になるのは、じつは「夜景」ではなく「夕景」です。とくに薄暮(トワイライト)の時間帯。最近では「マジックアワー」というとわかりやすいかもしれません。
「マジックアワー」とは、日没後、空の色が徐々にブルーから藍色になるタイミング。周囲の明るさ(空も含め)が徐々に暗くなり、街の明かりと調和した時間帯です。その目安は、日没時刻の約10分後以降の約30分間(17時が日没時刻だとすれば17時10分〜17時40分ごろ)。日没時刻から10分後くらいにまず東方向、続いて南北方向、最後に西方向が「撮り時」となります。
東西南北全方向を撮影できる展望台などでは、明るいうちに全方向の構図をあらかじめ決めておきます。タイミングを見計らって撮影すれば、1日でたくさんの薄暮の夜景が撮れます。
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1度シャッターボタンを押せば
異なる明るさで撮れる「AEB撮影」を活用。
空のグラデーションをあますことなくとらえるには、「オートブラケティング(AEB)撮影」がおすすめです。AEB撮影とは、露出補正の応用機能で、段階露光により自動的に明るさの異なる写真を撮影する機能です。「補正なし」を中心にAEB撮影をすれば、きれいな写真が撮れるでしょう。
ホワイトバランスとピクチャースタイルは、私の場合は「ホワイトバランス:太陽光」「ピクチャースタイル:風景」を選択します。マジックアワーに撮影するとき、かつてベストなホワイトバランスは「太陽光」でした。ところが最近の機種の「ホワイトバランス:オート」には、「雰囲気優先」「ホワイト優先」が搭載されました。これらが意外に「いい色」を出すことがあるのです。
現場での判断には限界があるため、RAWモードで撮影し、後処理段階でホワイトバランスを変換、比較検討して好みの色調に仕上げます。
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コラム
「マジックアワー」撮影時のカメラ設定をチェックしておきましょう。
レンズの手ブレ補正機構はOFFに。リモートスイッチを使用し、一眼レフカメラの場合は、ミラーアップすることでカメラブレを防ぎます。リモートスイッチがなければセルフタイマーを利用するといいでしょう。
ビルなどのガラス張りの展望フロアから撮る場合は、レンズを窓ガラスに密着させることで、室内の映り込みを避けることができます。
三脚は必携ですが、三脚が使用できない展望フロアも少なくありません。その場合、カメラをテーブルや窓際の柵などに置いて撮影するのも一つの手。タオルなどで仰度を調整して構図を決定します。三脚が使用できる施設でも、ほかのお客さんの邪魔にならないように、マナーには細心の注意を払い撮影しましょう。